ジブリパークはエリアごとに日時指定の完全予約制のため、「ゆっくりきて下さい」と呼びかけたことも話題に。
撮影:吉川慧
「ジブリパーク」(愛知県長久手市)で展示されている女性キャラクターの像の胸を触ったりする様子などを撮影した写真がSNS上に投稿されたとして、愛知県の大村秀章知事が3月9日の記者会見で「極めて遺憾。不愉快だ」と不快感を表明した。
大村知事は「回転寿司店での色々な迷惑行為と一緒。極めて悪質」とし、投稿者が特定されたら「もっと厳しい措置を取らざるを得ない」と述べた。ジブリパーク側に対しても、今後同様の行為が確認された場合は注意をして行為をやめさせるなど、「毅然と厳しく」対応するよう求めた。
運営元であるジブリパークはBusiness Insider Japanの取材に対し、「本件に関しまして、ジブリパーク社としてはお話をさせていただくことはございません」としたが、SNSでの写真投稿自体は把握していることは認めた。大村知事の会見も認識しているとして、「具体的なコメントは差し控える」とした上で「お客様に安心してお越しいただけるよう引き続き努力してまいります」と答えた。
問題の経緯は?
問題となっているのは、ジブリパーク内の「ジブリの大倉庫」エリア内にある「ジブリのなりきり名場面展」で撮影され、SNS上に投稿された写真だ。
「思い出のマーニー」に登場する少女マーニーの像の口を抑えたり、スカートの中を盗撮しようとする様子や、「ゲド戦記」に登場する少女テルーの像の胸をつかんだりする様子を撮影した写真が2月下旬までに投稿されていた。
県政策企画局ジブリパーク推進課はBusiness Insider Japanの取材に対し、「当該投稿はTwitterに2月22日に投稿され、現在は削除されているものと認識しております」と回答。現在は投稿を確認することはできないが、SNS上で拡散されている。
この問題をめぐっては、2月24日に「女性自身」が“不適切写真”がSNSに投稿され、物議を醸していると報道。「性犯罪を想起させるような写真撮影は、他にも報告されており不快感を示す声が相次いでいる」と伝えた。
また、「女性自身」はジブリパーク事務局からは「今回の件に関しまして、ノーコメントとさせていただきます」との回答があったと報じ、SNS上ではこうした対応に疑問や不安の声があがるなど、波紋が広がった。
大村知事、不適切行為は「絶対にやめて」
記者会見する大村知事(2023年3月9日)
YouTube/愛知県
大村知事は、今回の問題について「週刊誌で報道されているということで報告があった」とし、ジブリパーク側に対して「毅然と厳しく対応を」するように求めた。
「ジブリパークは大人から子供まで、スタジオジブリの作品の中に入っていただいて、楽しんでいただこうというもの。全体が愛・地球博記念公園、県の県営公園の一角の中。明らかに多くの方々が不快に思うような行為がされることは極めて遺憾」
「ジブリパーク社には県の方から、そうしたことを確認した場合には当然注意して、直ちにやめてもらうようにと。そういうことはしちゃいかんと徹底してくださいよと(求めていく)」
さらにジブリパークが県営公園の一角の中であることから、他の利用客の迷惑になる行為があれば、県として毅然として対応すると繰り返し強調した。
「改めて、そんなことはくれぐれもやめてほしい。そういうことをするなら、もう利用して欲しくないですね、そういう方には来ないでいただきたい」
大村知事は「部局からの報告」と前置きした上で、過去に「三鷹の森ジブリ美術館」でも同様のことがあったようだと話した。
「部局から報告ですが、東京の三鷹の森ジブリ美術館でもそういったことがあって。そういったことに対しては、もう対応しない、相手にしないと。何か注意をして、逆ギレで激高されるようなことがあったんだそうです」
「だから、もうこんなもん相手しないと。出ていってくれというふうな対応なので、相手にしないんだということのようであります」
その上で、ジブリパークが県の公園の中にある施設だと繰り返し指摘。「いかんものはいかん」「絶対にやめてもらいたい」と、不適切な行為はしないよう来場者に呼びかけた。
「やはり県の公園の中なので。このジブリのなりきり名場面は、厳密に言うと物自体は企画展示。県の施設ではなく、ジブリパーク社の企画展示ではあるが、(ジブリパークが)入っているのは県の公園の中ですから」
「私どもは、そうしたことについても毅然と対応していく。『いかんものはいかん』ということでありますし、こんなことは絶対やめてもらいたい」
「私どもは、利用者の方の性善説に立っている。そうした形でみんなに楽しんでいただきたい。適切、適正に利用・観覧していただきたい。そのことは、くれぐれもお願いしたい」
報道陣からは今回の問題について、ジブリパーク側が「ノーコメント」の姿勢をとったことが“炎上”に拍車をかけたのではないかとして、大村知事に見解を尋ねた。
大村知事は以下のように回答。運営会社にも「毅然と厳しく対応を」と求めた。
「東京の三鷹の美術館でも、そういうケースがいくつかあって、基本ノーコメントというか、相手にしないということで、そういうふうに言ったということですが。私ども県としては、これはもうけしからんと。極めて遺憾だと。こんなことあってはならんと。厳しく対応するということを申し上げてたいと思っております。そういうふうにしてもらうということです」
ジブリパーク「お客様に安心してお越しいただけるよう努力」
撮影:小林優多郎
ジブリパークの広報担当者は3月10日、Business Insider Japanの取材に対し、「本件に関しまして、ジブリパーク社としてはお話をさせていただくことはございません」と回答した。
ただ、SNSでの写真投稿や9日の大村知事の会見内容は把握しているという。担当者は「具体的なコメントは差し控える」とした上で「お客様に安心してお越しいただけるよう引き続き努力してまいります」とした。
ジブリパークは、2005年に愛知県長久手市で開かれた「愛・地球博(愛知万博)」の広大な跡地「モリコロパーク」に建設されたスタジオジブリの世界を再現した施設。愛知県が約340億円の総事業費をかけて整備した。
パークは5つのエリアに分かれ、2022年11月1日の“第1期開園”では「ジブリの大倉庫」エリア、『耳をすませば』の「地球屋」が再現された「青春の丘」エリア、『となりのトトロ』の世界観を表現した「どんどこ森」の3つがオープンした。
運営はスタジオジブリと中日新聞社が共同で出資・設立した「株式会社ジブリパーク」が担っている。
スタジオジブリの世界観に浸れることで人気を呼び、日時指定の予約制であることから「ゆっくりきて下さい」とジブリパークが呼びかけたことも話題となった。
大村知事はオープンに先立って開かれた2022年10月の内覧会に出席。「人・生き物・地球に対する愛という意味で、愛・地球博とジブリは見事にシンクロする」と述べ、意気込みを語っていた。
「県内外、世界中の皆さんから反響をいただいている。コロナもようやく少し収まってきて、昨日からインバウンド観光客もはいってきたので、世界中の方に楽しんでもらえるようジブリパークをつくり、育てていきたいと思っています」
【UPDATE】県政策企画局ジブリパーク推進課への取材と回答を追記しました。(2023/03/10 17:02)
大村知事の会見(2023年3月9日)
ジブリパークに関する発言は19分48秒ごろから。