グーグル親会社アルファベット(Alphabet)のムーンショット型研究機関「X(エックス)」の“キャプテン”アストロ・テラー。
Jack Plunkett/Associated Press
グーグルGoogle)の親会社アルファベット(Alphabet)傘下で破壊的イノベーションの創出に取り組む「X(エックス)」はここ数年、高齢者や自力歩行が困難な人向けの外骨格(体表を覆う構造物)の開発に取り組んできた。
以前は「スマーティ・パンツ(Smarty Pants)」の名で知られ、現在は「スキップ(Skip)」呼ばれるその研究開発プロジェクトは目下、アルファベットからのスピンオフに向けて準備が進められているようだ。
Xの広報担当に問い合わせたところ、独立の選択肢を模索していることは認めたものの、それ以上の詳細については情報を得られなかった。
本件に詳しい匿名の関係者によれば、アルファベットからのスピンオフが実現した場合、現在プロジェクトを率いるキャスリン・ジーランドが独立企業としてのスキップの経営トップを務めることになるという。
なお、ジーランド当人に本記事の内容についてコメントを求めたが得られなかった。
スマーティ・パンツと呼ばれていた時代のスキップは、ムーンショット型研究機関としてのXを掘り下げた米ワイアード(WIRED)の特集記事(2020年2月17日付)で大きく取り上げられている。
同プロジェクトが目指すのは、ソフトロボット(柔軟性のある素材を用い、生物のようにしなやかな動作を可能にするロボット技術)と人工知能(AI)を組み合わせた歩行支援向け外骨格アシストデバイスの開発。
多数の内蔵センサーを使って装着した人間の動きを予測することで、パワーアシストにより負担を軽減すべき箇所を特定できるのが特徴だ。
ロボティクス開発は削減方向
アルファベットは最近、Xの存在意義や目的の見直しを進めており、研究開発対象として採択する個別のプロジェクトについても、商用化・実用化の可能性を重視する方向にシフトしている。
したがって、スキップのスピンオフを収益化の目処が立った結果とみることもできる一方で、商用化・実用化を重視する方針に沿わないゆえの措置である可能性もある。
アルファベットは2021年7月にも、産業ロボット向けソフトウェア開発を手がける「イントリンジック(Intrinsic)」をXから独立させ、グループ傘下に置いている。
Xの広報担当はInsiderの取材に対し、同社が現在もなおロボティクスに深い関心を寄せていると強調したものの、ここ数週間で明らかになった事実から判断する限り、関心は薄れてきていると言わざるを得ない。
会社全体で進めるレイオフ(一時解雇)やコスト削減の一環として、アルファベットは最近、複数のロボティクス関連プロジェクトを一つのグループに集約した上で、「エブリデイ・ロボッツ(Everyday Robots)」と呼ばれる家庭・オフィス向けロボット開発プロジェクトは廃止している。
スキップの独立後にアルファベットが株式を保有してグループ傘下に置く可能性があるのか、Xの広報担当にコメントを求めたが返答はなかった。