キューバのグアナハカビベス半島の海岸に積み上げられたの海藻の上を歩く施設職員。
Alexandre Meneghini/Reuters
- 海藻が大発生し、「大西洋サルガッスムベルト」が記録的な大きさになった。
- 5000マイルもの海藻は、野生生物やインフラ、観光業を脅かす。
- 腐ったサルガッスムの臭いは、メキシコとフロリダの観光業に問題を引き起こしている。
5000マイル(約8000km)におよぶ海藻の巨大な毛布は、米フロリダ州とメキシコの海岸沿いに問題を引き起こしそうだ。
「グレート・アトランティック・サルガッスム・ベルト(大西洋の巨大なサルガッスムベルト)」は、アフリカ西部からメキシコ湾までの海岸線に広がる茶色の海藻の大群だ。海藻の発生としては世界最大級の規模であり、重さは約2000万トン、その姿は宇宙からも確認できる。
衛星写真をベースにした地図は、2023年3月7日から13日にかけて、サルガッスムがフロリダに近づいていることを示している。
Chuanmin Hu, University of South Florida College of Marine Science
今年は、3月としては記録的な大きさで、ここからさらに大きくなり、6月か7月にピークを迎えると予想されている。科学者は、この海藻がもたらす影響について、ますます懸念を深めている。
海藻は普段ならほとんど無害で、魚に住処を提供し、二酸化炭素を吸収するなど多くのメリットがある。だが、北米大陸の幅の約2倍にまで広がったサルガッスムは、海流によって陸地に向かっているため、大きな被害をもたらしかねない。
海藻が海岸に到達すると、「水質が悪化し、悪臭を放ち、虫や細菌を引き寄せ、観光客を遠ざけることになる。経済にも悪い影響を与えるだろう」と人工衛星を使ってサルガッサムを監視・追跡するチームを率いる南フロリダ大学海洋科学部海洋学教授のチュアンミン・フー(Chuanmin Hu)氏はInsiderに語っている。
バルバドスの東海岸、セント・アンドリューのレイクス・ビーチはサルガッスムで覆われている。
Kofi Jones/AP Photo
この海藻は沿岸の生態系を破壊し、サンゴを窒息させ、野生生物に害を与え、インフラを脅かし、空気の質を低下させる可能性があるという。また、漂着したサルガッスムが腐敗すると、独特の卵の腐ったような臭いがして、メキシコとフロリダ両州の観光に大きな問題を引き起こしている。
メキシコのホテルやリゾートでは、毎年何百万ドルもかけて海岸のサルガッスムを、労働者を雇って集めて、別の場所に移動させている。
地元住民に雇用された労働者が、海藻のサルガッスムを取り除いている。メキシコのキンタナ・ロー州、トゥルムの北部にあるソリマン湾で、2022年8月3日撮影。
Eduardo Verdugo/AP Photo
「サルガッスムが増えることは海洋生態系にとっては良いことだが、一部の地域住民にとってはかなり悪いことだ」 とフー教授は述べた。
大発生の理由は不明
サルガッサムの種類は数百種類に上る。大西洋に生息するものの中には他の海藻のように岩に根を張ることがないため、水面上で成長するものもある。そのため、南アフリカとメキシコ湾を渡る風に押されて、小さな塊が移動し、その後、大きな塊になりやすいのだとフー教授は言う。これが、毎年春と夏に大西洋を横断する大きな海藻ベルトを作る理由だ。
メキシコのキンタナ・ロー州トゥルムの北にあるソリマン湾で、浜辺を覆うサルガッサムを、地元住民に雇われた作業員が手作業で除去する。2022年8月3日撮影。
Eduardo Verdugo/AP Photo
「このような塊がたくさんあるが、この海域の0.1%しかこの海藻に覆われてはいない」とフー教授は述べています。
「サルガッスムは海のどこかを完全に覆っているわけではないし、サルガッスムに毒があるわけでもない」
それでも、サルガッスム・ベルトがもたらす影響は、過去10年間、科学者たちを悩ませてきた。NBCニュースのデニス・チョウ(Denise Chow)の取材によると、専門家たちは、今年は特に憂慮すべきものだと述べている。
フロリダ・アトランティック大学ハーバーブランチ海洋研究所のブライアン・ラポワント(Brian LaPointe)教授は、「信じられないことだ」とNBCニュースに語った。
「衛星画像で見ているものは、きれいなビーチにとって良い兆候ではない」
衛星画像による2023年3月8日から14日までのサルガッスムの位置。
Chuanmin Hu, University of South Florida College of Marine Science
サルガッスムについて40年以上研究しているラポワント教授は、普段なら5月に打ち上げられるのに、キーウェストのビーチはすでに海藻で覆われているとNBCニュースに話した。そして、カンクン、プラヤデルカルメン、トゥルムなどのメキシコのビーチは海藻処理の準備に余念がないという。
海藻ベルトのサイズは毎年大きくなり、2018年と2022年に記録的な成長を遂げたと、サウスフロリダのカレッジ・オブ・マリン・サイエンスのブライアン・バーンズ(Brian Barnes)助教授はNBCに話した。
2023年はこれらの記録に近づきつつあり、それを上回る可能性もあるとフー教授は述べている。
2019年のある研究では、森林伐採と肥料の使用が、塊が成長する驚くべき速度の原因である可能性が示唆されており、その影響は気候変動によって悪化している。
Seaweed GenerationのCEOであるパトリシア・エストリッジ(Patricia Estridge)は「気候変動への不安はサルガッスムの不安に取って代わられたと思う」とガーディアンに語っている。
「気候変動と人間活動の両方が役割を果たしているが、それぞれがどれだけ寄与しているかは誰にも分からない。大西洋は巨大なので、複数の要因がある」とフー教授は語った。
「複雑だ。今言えることはそれだけで、理由を解明するために研究を続けているところだ」