ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が近赤外線と中間赤外線でとらえた、最期を迎えている「ウォルフ・ライエ星」。
NASA, ESA, CSA, STScI, Webb ERO Production Team
- NASAのジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が、超新星爆発を迎えようとする星を驚くほど詳細に捉えた。
- 画像は、超新星爆発が起きる前段階で外層を放出する「ウォルフ・ライエ星」を映し出している。
- この星はいつか最期を迎え、爆発で散乱した塵が次世代の新しい星や惑星を生み出していく。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が素晴らしい写真を撮影した。超新星爆発へと向かい、最後を迎えつつある大質量星(太陽質量の8倍以上の質量を持つ恒星)を捉えたものだ。
NASAは2023年3月15日にこの画像を公開した。画像では、この星が外層の物質を放出していて、その周りにガスや塵でコブや層になったハローを作り出しているのがわかる。
欧州宇宙機関(ESA)は、この瀕死の星の詳細を探るためにズームインした動画を公開した。
放出されたガスが星から遠ざかると、冷却されて雲、つまり「星雲」を形成し、JWSTの赤外線カメラで輝いて見える。それが画像のピンク色の雲を作る理由だ。
これらの噴出物は、星が最期の爆発、つまり超新星爆発へと突き進んでいる証拠だ。
超新星爆発の後に残される天体、超新星残骸。写真はJWSTが撮影したものではない。
NASA/JPL-Caltech/STScI/CXC/SAO
このような超新星爆発の前段階を「ウォルフ・ライエ(Wolf-Rayet)」と呼ぶ。最期を迎える前にごく短い時間だけ「ウォルフ・ライエ」期を迎える星もあるため、今回捉えられたこの星は珍しいものだ。
NASAによると、ウォルフ・ライエ星は「最も明るく、最も質量があり、最も短時間で検出可能な恒星のひとつ」だという。
「WR124」と呼ばれるこの星は、いて座にあり、我々から1万5000光年離れている。質量は太陽の30倍。太陽10個分の物質を放出し、写真のような星雲を作り出している。
宇宙塵の謎を解明へ
その宇宙の塵は、天文学者にとって大きな関心事だ。宇宙の塵は、新しい星、新しい惑星など、宇宙のあらゆる物を構成する材料だからだ。最期を迎えようとしている星が宇宙に放出し、宇宙規模の大きなリサイクルを実現している。
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡のイメージ図。
NASA GSFC/CIL/Adriana Manrique Gutierrez
NASAによると、宇宙には天文学者が理論で説明できないほど多くの塵が存在しているという。超新星爆発や今回のようなウォルフ・ライエ星など、塵の起源を解明するさらなる手がかりを見つけることで、ジェームズ・ウェッブ望遠鏡はその謎を解明する助けとなるかもしれない。
この強力な赤外線観測機能によってJWSTは従来のものよりもはるかに優れた塵の研究ツールとなっている。
「ウェッブ以前、塵を研究するのが好きな天文学者は、WR124のような環境での塵の生成や、超新星でできた塵が宇宙全体の塵の量に貢献するほど豊富なのかどうかを研究するのに十分な情報を持っていなかった」とNASAはこの写真のリリースで述べている。
「今、これらの疑問は実際のデータで調査することができるようになった」