まずまず? それとも刑務所みたい? シンガポール、単身者用に「寮」のような公共賃貸住宅を提供へ

室内の様子

Singapore's Housing and Development Board

  • シンガポールの住宅開発庁は新たな住宅プログラム「シングルルーム・シェアード・ファシリティーズ・スキーム」を試験的に運用するという。
  • それぞれの部屋の広さは100平方フィート(約9.3平方メートル)弱で、基本的な家具は用意されている。バスルーム、キッチンは共有だ。
  • 北欧の刑務所と変わらないとの声もあれば、実験的なプログラムとしてはまずまずだとの声もある。

シンガポール —— 世界経済フォーラムによると、世界で最も物価の高い都市だ —— では、公営団地の寝室が2つある部屋の家賃は2000シンガポールドル(約19万7000円)からとなっている。

東京23区と同程度の面積しかないシンガポールでは、土地が不足している。その一方で、WorldDataによると、人口はここ60年あまりで165万人から545万人に増えている。

シンガポールの住宅開発庁が示す要件では、単身者による公共住宅の購入は35歳になるまで認められていない。Statistaによると、2021年の時点でシンガポールでは人口の80%が公共住宅で生活している。

高額な家賃を避けるため、多くの人々は結婚するまで親と一緒に暮らすか、ルームシェアをしている。街の中心部から30分離れた場所で家具付きの部屋を借りるとなると、家賃は800シンガポールドル(約7万9000円)ほどかかる。

こうした中、シンガポールの住宅開発庁は3月13日、単身者向けの新たな公共賃貸住宅のサンプルを公表した。年内に申し込みを開始するという。

「シングルルーム・シェアード・ファシリティーズ・スキーム」は平均月収1500シンガポールドル(約14万8000円)以下の単身者を主な対象にしているが、公式サイトによると、1500シンガポールドル以上の収入があっても申請できるという。

CNAによると、11階建ての建物2棟はもともと学生寮だった。部屋の数は240しかなかったが、新たなパーティションを加えて2倍に増やした。それぞれの部屋の広さは100平方フィート(約9.3平方メートル)弱で、ベッドフレームやロッカー、テーブル、椅子、ミニ冷蔵庫といった基本的な家具が付いている。

バスルームとキッチンは共用で、バスルームは1カ所あたり最大12人が同時に利用できる。キッチンは1カ所を24人で共有することになる。洗濯室やアクティビティルームもある。

それぞれの月収やその他の要素に基づいて決められる家賃は、毎月支払うことになる。ストレーツ・タイムズによると、さらに詳しい情報が今後、発表される予定だ。

部屋や施設の写真が公表されると、ソーシャルメディアではさまざまな意見が上がった。

これでは北欧の刑務所と変わらないとか、弱い立場に置かれた単身者に提供される「貧しい」生活水準に絶句したとの声もある。

「物価が一番高い都市とはいえ、囚人でない人間に住宅開発庁が提供できるものがこれ」と、ノルウェーのハルデン刑務所の写真を添えてツイートした人もいる。

一方で楽観的な人たちもいる。これは試験的なプログラムで、とりあえずうまくいくかどうかを確認し、今後の改善点を見つける役にも立つだろう、と。

「初めて写真を見た時は心配だった。でも、家賃を見て、安全に過ごせる宿泊施設を必要としている弱い立場に置かれた単身者にとっては、選択肢があることは良いことなのかもしれないと思った」とツイートした人もいる。

リー・クアンユー公共政策大学院の報告書によると、ホームレスの路上生活者の数は2021年、1050人から616人に40%以上減ったものの、一時保護施設の利用は6倍以上増えている。「公共賃貸住宅のシステムがホームレス対策に直接寄与している」と報告書は指摘している。

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