「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」の「9と3/4番線」ホームと「ホグワーツ特急」のセットが公開された。
撮影:小林優多郎
ワーナー ブラザース スタジオ ジャパンは3月15日、東京都練馬区・としまえん跡地に建設しているエンタメ施設「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」(以下、スタジオツアー東京)のオープン日を6月16日と発表した。
入場は完全予約制で、3月22日14時から、9月30日分までのチケットの販売を開始。入場料は大人6300円、中高生5200円、4歳から小学生までの子どもは3800円(いずれも税込)。
15日には報道関係者に、施設の一部である「9と3/4番線」ホームと「ホグワーツ特急」のセットが公開された。
世界最大規模のハリポタ映画施設が東京に登場
「9と3/4番線」ホームのセット。
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros.Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.
スタジオツアー自体は、『ハリー・ポッター』シリーズ発祥のイギリスで2012年にオープン。累計入場者数は1700万人以上、現在も1カ月以上先まで予約が埋まっている人気施設となっている。
『ハリー・ポッター』関連施設で言うと、ユニバーサル・スタジオで「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」(国内では大阪に2014年開園)が既に存在する。
「ホグワーツ特急」。
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros.Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.
両者の違いを簡単にまとめると、ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター(USJ)は作品自体の世界観に浸れるアトラクションが点在するテーマパークなのに対し、ワーナーのスタジオツアーは「映画制作の裏側を体験できるウォークスルー型の施設」になっている。
としまえん跡地にできるスタジオツアー東京は、アジアで初めて建設される施設になる。建物面積は約3万平方メートルで、ワーナーは「(スタジオツアーとして)世界最大規模の施設」としている。日本国内に限らず、今後周辺国からのインバウンド需要も見込んでいる。
「グレート・ウィザーディング・エクスプレス」の内装セット。
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros.Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.
今回報道関係者に披露されたキングス・クロス駅の「9と3/4番線」ホームのほかにも、魔法学校・ホグワーツの「大広間」や「禁じられた森」、魔法使いたちの街「ダイアゴン横丁」などセットが用意されている。
現時点では、日本限定の展示として、ハリー・ポッター関連作品である『ファンタスティック・ビースト』の3作目に登場した車両「グレート・ウィザーディング・エクスプレス」の内装セットも登場する見込みだ。
イギリスのスタジオツアーで販売されているお土産(日本での発売は未定)。
撮影:小林優多郎
そのほか、14のテーマ別のお土産店を用意。イギリスで販売されているグッズのほか、日本限定の商品も販売する予定だという。
ワーナー日本の幹部が語る「東京を第2の建設地に決めた3つの理由」
ワーナー ブラザース スタジオ ジャパン バイスプレジデントの松尾俊宏氏。
撮影:小林優多郎
15日のイベント後、ワーナー ブラザース スタジオ ジャパンのバイスプレジデントの松尾俊宏氏がBusiness Insider Japanを含む報道各社のインタビューに応じた。
ロンドンに続くスタジオツアー施設として東京が選ばれた経緯や、「としまえん」跡地を立地として決めた理由。さらに、スタジオツアーの運営方針とグッズの販売戦略やワーナー社が考える『ハリー・ポッター』というIPの日本市場における重要性などを語った。
一問一答は以下の通り。
建設の経緯やインバウンド戦略
「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 - メイキング・オブ・ハリー・ポッター」の外観。
‘Wizarding World’ and all related names, characters and indicia are trademarks of and © Warner Bros.Entertainment Inc. – Wizarding World publishing rights © J.K. Rowling.
──スタジオツアーには複数社が関わっているが。各社が担っている役割分担について。運営は直営か、フランチャイズのライセンス形式か。
今回のプロジェクトでは、ワーナー ブラザース ジャパン合同会社は、あくまでスタジオツアー東京の運営にあたる会社。完成した暁には、我々がスタジオツアーを運営するという立場です。
もちろん、こちらの施設は元々は「としまえん」の跡地。東京都様、練馬区様、西武鉄道様と「覚書」を交わし、ある一定期間にぎわいをもたらす施設として契約※をさせていただいた経緯があり、これから実際に運営が始まろうとしています。
施工会社は大成建設様、デベロッパーとして伊藤忠商事様が入られてる。あと一社加えるのであれば設計で久米設計様が入られているというのが、本プロジェクトの大きな関係者の社名となります。
──伊藤忠商事はアニメ、キャラクタービジネスに積極的な姿勢を見せている。今回を足がかりに両者でビジネスを加速させるような展望があれば伺いたい。
伊藤忠様がいろいろな事業をされてることは認識していますが、まだ残念ですがお話したことはないです。
とにかく伊藤忠様とタッグを組んで、2023年のこのタイミングでオープンすることを、(計画が)スタートしてから死に物狂いでここまでやって来ています。
この企画は、誰もコロナという状況を予測することもなくキックオフして、今日まで「2023年の夏までにオープンする」というターゲットをずらさずに来ました。そういった意味で伊藤忠様には大変お世話になって、ここまでこれだけの事業を進めることができたのかなと思っております。
──(スタジオツアーの)スタッフは、ワーナー ブラザース ジャパンが雇うことになるのか。
一部はアウトソーシングという形になるが、基本的にはワーナーブラザースジャパン雇用の社員とアルバイト、パートの方のサポートで事業が運営される形です。
──デベロッパーに伊藤忠商事を選んだ理由、としまえん跡地が候補地になった経緯など。
(ロンドンに続くスタジオツアーの)候補地として、いろいろな国・都市から東京が選ばれました。
その後、(東京でも)いろいろな候補地が挙げられた中、その中で伊藤忠様から「こちらの施設(としまえん跡地)に興味はないか」とお話をいただきました。ただ、当時はまだ100%この場所に決まっていない状態でした。
いろいろな形で「スタジオツアーの運営がどういうものか」「スタジオツアーがもたらすことができる地域貢献とはどういうものか」というような、いろいろな側面で話をした上で、こちらの土地で(スタジオツアーを)運営することが合ってるのではないかというご判断をいただいた。
我々もこの素晴らしい土地で、これから運営に関わっていきたいという判断をした結果です。
──決まった時期は。
本当に「だいぶ前」という形でしか言えなくて……。2012年にロンドンの施設がオープンし、非常に多くのお客様に来ていただいています。中でも、特に観光客が多かった。そんな中で観光客の受け入れができないほど人気が出てしまって、アジアの(新たな)拠点として東京が選ばれました。
2012年に開園してからの中、そういった(新しい施設をつくりたいという)思いがワーナー ブラザースの中にあって、その頃から「イギリス以外の海外でやろう」という話がスタートしました。具体的に何年というのは、ちょっと話しづらいところかなという気がします。
いろいろな会社様と相談をさせていただき、その中でとしまえん跡地が最もこの施設(スタジオツアー東京)に適しているだろうという判断のもと選びました。
──チケットはロンドンと同じく日時指定の事前予約制になるが、どのようなメリットが考えられるか。
予約制についてはご認識いただいているように、既にロンドンの方で導入させていただいています。
具体的な来場者の数字だけでなく、自動車も事前予約制にしています。人数だけでなく、どれぐらいの車がこちらの施設に来られるかを事前に知ることができるからです。
一般的な遊園地では朝にものすごい渋滞や行列ができてしまいますが、(人と車の)両方の数を知ることで、渋滞や行列を回避ができるという大きなメリットがあります。
また、この施設の最大の課題、かつ重要ポイントとして挙げられるのが、来ていただいたお客様に楽しんでいただけること。これが何よりも重要です。
商業施設のビジネスだけを考えれば、「できるだけ人間を押し込めばいいじゃないか」という考え方になりますが、我々はむしろ来ていただいたお客様に、ゆったりとスペースを持ちながら、この施設を楽しんでいただきたい。ここが最大かつ重要なポイントです。
そう考えた末、その人数をしっかりとコントロールできる……コントロールという言い方は非常におこがましいですが、しっかりとコントロールができれば、来ていただいたお客様に最大限楽しんでいただけるだろうという理由から、日時完全予約制という方式を日本でも採用させていただく予定です。
──チケットは日本語と英語で案内するとのこと。インバウンド向けの対応などは。国内向けとインバウンド客でチケット枚数の違いなどはあったりするか。
ポスト「東京オリンピック2020」のインバウンドビジネスのニーズは高くなるだろうというのは、海外の本社メンバーも非常に認識しています。新たな人気スポットとして、東京の魅力を日本のみならず世界に発信をしていくことがポイントになるでしょう。
チケットの販売も我々の公式ホームページで行う予定です。今の時点では日本語と英語のみの対応になっていますが、将来的には対応言語も増やしていくことも考えています。
海外からもしっかりと予約が取れ、予約を一元化することでチケットがいろいろなところにばら撒かれるようなことがないような形で、しっかりとニーズを把握し、コントロールできるようにしていきたいという背景があります。国内向けとは違う海外のサーバーがあるとかではなく、あくまで一元化して販売する予定です。
──マーケティング戦略において、国内とインバウンドの比率イメージは。
マーケティングの戦略は、いま一生懸命に立ち上げようとしているところです。正直ベースで申し上げますと、やはり最初は国内(になると思う)。
もちろん、これからインバウンドが入ってきますが、その辺のステップを踏まえて、海外向けのものをどう変えていくのかは考えていかなければいけない。とは思っているものの、まずは基本であるうちのマーケティング戦略からの出発になると感じています。
ポストコロナという意味合いも含めて、多くの観光客が来ることを十分理解した上で、インバウンドビジネスとしてどのようにコミュニケーションをとっていくのか。これから前向きに検討していくというような、そんなフェーズにいると思います。
──日本語と英語が(対応言語として)選ばれたのは、欧米圏メインというわけではなくグローバルなインバウンド向けという意味での対応か。
そういった意味になります。あくまでも第1カ国語では日本語が中心になるが、第2カ国語としては英語が使われ、今回の施設でもできるだけ日本語と英語で表記しています。それを第3、第4、第5カ国語と特にアジア、ヨーロッパの言語をどこまで表記するか、マーケティングの素材を違う言葉で表すのか、現在検討している段階です。
としまえん跡地での建設の狙いと地域活性化の考え
スタジオツアー東京周辺や練馬区内に設置されている看板。
撮影:小林優多郎
──スタジオツアーの新設地を練馬区のとしまえん跡地に決めた理由。
最初にとしまえん跡地を関係者で訪れたとき、いくつかのポイントがありました。まずは都心から非常に近く、アクセスが良いという点。そして、我々の映画の中にも出てくるように緑、樹木が豊富にあること。
3つ目のポイントが、「としまえん」という非常に長い歴史のあるエンターテイメント施設があったことです。
日本にいる多くの方にとってみれば「豊島園」という駅を降りれば、ここにエンターテイメント施設があるということがイメージとして結び付けられている。
これは何にも変えられない非常に大事なセットです。この3つの点が、この場所を選んだ理由だと思っています。
──地元も開業を心待ちにしてるが、地域にどう関わっていきたいか。
地域との関連では、練馬区様とは非常にこまめにやり取りさせていただいています。先日(2月26日)も開かれたフラッグ(周辺商店会の街路灯等に設置されたスタジオツアー東京のコンセプトアートがデザインされたフラッグ)の除幕式に参加させていただきました。
練馬区にあるスタジオツアーということを、非常に積極的にプロモートしていただけていることは我々も十分に認識しており、できる限りサポートしていきたい。
除幕式のデザインも我々の方から無償で提供させていただきました。こういった関係性で、できるだけ地域のコミュニティとも距離を縮められるような活動をしていきたい。
敷地の面でも貢献したい。としまえん時代に聞きましたが、北側には車が両方向に通る道路があり、そこは通勤路・通学路でもあります。3メートルぐらいの白い壁、万年塀みたいなものがずっとありました。
今回、これをとっぱらって遊歩道をつくりました。一般の方々、特に歩行者の方々と車のアクシデントが一つでも減ればという思いからです。アジサイも植えられているので、夏前になるとアジサイを見ながら遊歩道を通れる道をご用意させていただきました。
これも地域に少しでも貢献ができることはないかという一つの活動。災害時の避難地としても、できる限りのサポートをさせていただくことを練馬区様と常にお話させていただいています。
──玄関となる西武鉄道「豊島園駅」の駅名を変更する話はあったか。
一度(西武鉄道と)お話をさせていただいたことはあります。
ただ、「豊島園」という名前がこの地域にとっていかに重要かということを我々も理解していますし、西武鉄道様もそういった理解が深いということで、一時「どうしますか?」というレベルでの相談はさせていただきました.
ただそれ以降、具体的に名前を変えようという話は全く出ておりません。
ハリー・ポッターというIPと日本
自身も熱心なハリー・ポッターシリーズのファンでもあるハリー杉山さん(左)と芦田愛菜さん(右)。
撮影:小林優多郎
──IPにとってはファン拡大につながる施策とも考えられる。『ハリー・ポッター』というIPが、日本市場においてどういう位置付けなのか、ワーナー側の考えや認識を伺えれば。
『ハリー・ポッター』の第1作目が劇場で公開されて、もう20年以上経つIPであることは我々も認識しています。
当然、日本には『ハリー・ポッター』以外にも数多くのIPが存在しています。その中で『ハリー・ポッター』が、なぜここまで人気があるんだろうかというのは、よく社内でも話す内容です。
ただ、やはり『ハリー・ポッター』の人気は、単に我々が『ハリー・ポッター』を宣伝していくだけではなく、もちろん映画会社ですので、いろいろな方面からこのIPを育てる、メンテする、要するに「減らさない」ということも含めて、いろいろな面でサポートをし合ってるというのが現状です。
例として挙げられるのは、『ハリー・ポッター』の遊園地(テーマパーク)・演劇(舞台)・スタジオツアーの3つ。私は勝手に「ハリポタ三大施設」と言っていますが、この3つがあるのは実は世界の中で日本だけになりました。
アメリカにも二大施設しかないですし、イギリス本国にも二大施設、オーストラリアにも二大施設。日本だけこの3つが全部そろっています。
これはいかに『ハリー・ポッター』の市場が、この日本において非常に高く評価され、かつ大事に扱っていただけている国であるかという本国の認識も相まっています。
今回のスタジオツアーの設置事業を始めようと決めた大きな理由は、まさにこのファンベースがあります。(日本において『ハリー・ポッター』という)IPがどれだけ強いかという認識につながってるのかなというふうに思います。
──第1作から20年が経過しているが、ターゲットとして想定する年齢層は。どちらかというと大人になられた『ハリー・ポッター』ファンの方が多くおられるのかなと。
おっしゃるように、20年前の作品。我々も、おそらく20年前に中学生・高校生だった年代の方々がメインのターゲットにはなるだろうという予測は立てています。
ただ、『ハリー・ポッター』の世界の不思議というか、非常に素晴らしいところは、この素晴らしいストーリーがお子様たちに伝わっていること。
つまり、我々が元々『ハリー・ポッター』のファンではないと思っていた、いわゆるローティーンであるとか、いわゆるティーン・エイジャーにも非常にこの『ハリー・ポッター』の世界観を理解していただいて、ファンが多いというデータも出ております。
この作品の強いところは、年齢性別を問わず、非常に幅広く愛されてるIPだというのはつくづく感じます。
よく言われるのが、日本での映画の歴代人気のランキング。日本はアニメ大国で、アニメが最近ハイライトされていますが、洋画の実写作品では『ハリーポッターと賢者の石』のナンバー2のポジションはいまだに揺るいでいない。映画シリーズの中では、やはりどのシリーズよりも、『ハリー・ポッター』全8作が日本では人気がありました。
Netflixさんで配信が始まりましたが、一時はトップ10のほとんどが『ハリー・ポッター』シリーズで埋まったとか。非常にこの『ハリー・ポッター』の人気の度合いが高いという大変ありがたい話。
決して自慢話をしにきたわけではないですが(笑) それだけ、このIPが日本で愛されているということは、この事業を始めてからつくづく我々も肌で感じるようになっています。