シェア自転車「ダイチャリ」。
撮影:土屋咲花
4月から、改正道路交通法が施行されることに伴い、自転車に乗る全ての人を対象にヘルメットの着用が努力義務化される。そこで対応が注目されるのが、都内を中心にサービスが普及しているシェアサイクル事業者たちだ。
シェアサイクル「ダイチャリ」を運営するシナネンモビリティPLUSの三橋美和社長は
「当社としては、自分たちで(ヘルメットを)準備するということは考えておりません」
と、3月16日に開催した説明会で明言した。
こう言い切る背景にあるのは、同社が実施した自転車用ヘルメット着用に関する実態調査だ。自転車利用者たちはヘルメット着用の努力義務化をどう捉えているのか、調査結果を見ていこう。
「自転車用ヘルメット着用に関する実態調査」
調査期間:2023年2月16日~2月18日
調査対象:週に1回以上自転車(他人と自転車を共有するサービスを含む)を利用する全国の15歳~69歳の男女
回答者数:1299人
調査方法:インターネット調査
「毎回着用」は全体の2割
自転車用ヘルメットの着用率。
出典:シナネンホールディングス
前提として、現状どの程度ヘルメットを着用しているのか。
ヘルメットの着用率を聞いた質問では、「毎回着用している」と回答したユーザーは全体の2割程度にしか過ぎなかった。「着用していない」割合も半数を超えており、日常的にヘルメットを着用せずに自転車に乗っているケースが多いことが分かる。
また、調査ではヘルメットを自分で持っている人でも、毎回着用している人は5割程にとどまっていた。
ヘルメット「なし」は致死率約2倍
警視庁のデータによると、ヘルメットを着用しなかった場合の致死率は、着用した場合の約2.3倍。自転車事故で亡くなった人は、約7割が主に頭部を損傷しているという。
自転車事故の件数も増えている。2022年に都内で発生した交通事故3万170件のうち、自転車が関与しているものは1万3883件。自転車事故の割合が46%と、2017年の33.4%から右肩上がりで増えている。
事故当事者の年齢は20~39歳が27.3%、40~59歳が30.3%、60歳以上が27.9%。どの年代でも当事者になりえる。
重視するのは「軽さ」「自分専用」
ヘルメットを使用する場合の重視したいポイント。
出典:シナネンホールディングス
ヘルメットの着用を促すにはどうしたら良いのか。
「ヘルメットを使用する場合に重視したいポイント」を聞いた質問では、「軽量性」が51.8%で1位となった。シェアサイクルなど、他人と共有する自転車を利用する人の回答では、軽量性に次いで「自分専用であること」を求める割合が48.7%に上った。「抗菌仕様」も31.9%で5番目に多かった。
こういった結果を踏まえて、ダイチャリとしては、4月以降もシャアサイクル利用者向けにヘルメットの貸し出しなどはしない方針だ。
三橋社長は、
「理由の一つは個人の頭のサイズが違うというところです。 しっかり個人に合ったサイズを利用するのが望ましいと考えています。もう一つの理由は衛生面。やはり、シェア自転車を利用するにしても、他人が被ったヘルメットを被るのかっていうと、ここは何度アンケートを取っても『借りたくない』という声もいただいております」
と話す。
なお、調査ではヘルメット着用が努力義務化されることへの認知度は約7割だった。全年代で認知率は高く、特に20代では8割を超えるなど、関心の高さが伺えた。同社では今後、ヘルメット着用の呼びかけやプレゼントキャンペーンを通し、着用を促していくという。