「卒業生の4割を起業家」にすることを掲げる神山まるごと高専。その気になる内部を取材した。
撮影:竹下郁子
4月の開校を控えた「神山まるごと高専」(以下、神山高専と省略)が、校舎と寮を町民らに「お披露目」した。
Sansan社長の寺田親弘氏が発起人かつ理事長を務める同校は、男女比50:50で、学費を実質無償化したことでも大きな注目を集めている。
そんな神山高専の目標は、卒業生の4割を起業家にすることだ。その気になる内部を取材し、前後編で伝える。
棚田を活かしたガラス張の校舎
徳島県神山町。校舎の目の前には鮎喰川が流れる。背後に見える白い建物は、旧・神山中学校の校舎をリノベーションした学生寮だ。
撮影:竹下郁子
徳島駅から車で40分ほど。山を背負い、眼前には川が流れる自然豊かな場所に神山まるごと高専は建っていた。
校舎の名称は「OFFICE」。3月13日に竣工式が開かれた。
撮影:竹下郁子
「起業家教育」を掲げる同校らしい「OFFICE」と呼ばれる校舎は、全面ガラス張りで開放的な雰囲気だ。
もともと棚田だった土地に建設したため、グラウンドも校舎内も至るところに高低差があり、それを活かした造りになっている。
撮影:竹下郁子
たとえばこんな風に。上段が研究室、下段は作業スペースだ。
柱や梁などには地元・神山町の「神山杉」がふんだんに使われており、杉の良い香りが学生を迎える。
机や椅子は各企業とコラボ
大講義室。
撮影:竹下郁子
大講義室には200名が収容できる。
教室1。
撮影:竹下郁子
教室2。
撮影:竹下郁子
「阿波おどり」ができるほど広い廊下。
撮影:竹下郁子
休憩室にはスノーピークのキャンプ用チェアが並ぶ。
撮影:竹下郁子
教室の机や椅子、生徒が使うロッカーはコクヨ、団らんスペースのイスはアウトドアメーカー・スノーピークのものだ。両社とも神山高専の設立に向けて寄付をしており、開校後は授業に社員を講師として派遣したりと今後もコラボしていくという。
寮には町で初めての図書館、町民にも開放
旧・神山中学校舎を居抜きでつくった寮。
撮影:竹下郁子
神山高専は全寮制だ。校舎から橋を渡り、3分ほど歩いた場所に寮がある。名称は「HOME」。旧・神山中学校をリノベーションして造った。
寮の入り口すぐには図書館が。町で初めての図書館で、町民にも開放する。
撮影:竹下郁子
入ってすぐにあるのが図書館だ。神山町には公立の図書館がないため、曜日を限定して町民にも利用できるよう開放するという。
地産地食の給食は「できたて」を提供
寮には広いキッチンスペースが設けられていた。
撮影:竹下郁子
3月13日の竣工式では給食の例が関係者にふるまわれた。
撮影:竹下郁子
撮影:竹下郁子
食堂などのスペースは町民も借りることができる。地元との交流も深まりそうだ。
撮影:竹下郁子
生徒たちの健康を支える食事は、地域の食を守るプロジェクトと連携。寮のキッチンで神山町で採れた野菜などを調理し、日本一の「地産地食」の給食を目指す。
モダン風な個室や共同スペース
撮影:竹下郁子
撮影:竹下郁子
撮影:竹下郁子
寮は1年生から3年生までを対象としており、1年生用の2人部屋と、2〜3年生用の1人部屋がある。打ち放しコンクリートの壁に、暖色のペンダントライトが今風だ。6人あたり1台のテレビと団欒スペースも。
休日は給食ナシで、10代から料理する習慣を
撮影:竹下郁子
ランドリースペースや生徒用のキッチンがあり、掃除や洗濯などの家事は学生自身が行う。
前述の給食も平日のみで、土日は「あえて提供しない」。学生たちが料理を楽しむ習慣を作るためだ。
説明を受けた神山町民からは、男子学生が若い頃から料理をすることを喜ぶ声が上がった。
町民ら1500人超が見学「懐かしい」「活気でる」
竣工式の様子。神山町議会議員や地元企業の関係者らが参加した。
撮影:竹下郁子
挨拶する神山町長の後藤正和氏。
撮影:竹下郁子
寮を町民に案内する職員たち。食堂スペースも町民がイベントなどでレンタルできるという。
撮影:竹下郁子
神山高専は3月13日に竣工式を行い、同日から1週間、地元神山町民らに校舎や寮を開放。職員らが案内する期間を設けた。
見学に訪れた人はのべ1500人を超える。初日の13日には幼い子ども連れの母親から、旧・神山中学校舎で学んだ老夫婦まで多くの町民が訪れ、「懐かしい」「活気が出るね」など口々に言い合っていた。
図書館は特に盛況だった。
撮影:竹下郁子
自身の子どもたちが旧・神山中学校に通っていたという男性は、
「ものすごい勢いで少子化が進んでいるのに、新しい学校をつくるなんて大丈夫か? 本当に子どもたちがきてくれるのか? と心配ばかりだった。でも実際に校舎を見せてもらって、新しい夢を持てた気分だ」
と語った。
実は神山高専ができるまでには、地元町民と衝突することもあったという。後編「『できるはずない』」地元の反対乗り越え、神山まるごと高専が開校へ。Sansan寺田社長が語るハードワーク」では高専設立までの過程を、発起人兼理事長でありSansan社長の寺田親弘氏と、後藤正和神山町長の話などを元に伝える。