「コロナ禍でローカル回帰」は幻想。地政学リスクがあってもがグローバリゼーションが止まらない理由

コンテナ船

shaunl/Getty Images

鴻海精密工業(フォックスコン)は米ウィスコンシン州でEV用バッテリーの製造を予定しており、インテル(Intel)はオハイオ州で半導体チップの製造を予定している。メキシコの倉庫はアメリカ向けの商品であふれ返り、テスラ(Tesla)もメキシコに工場を建設する計画を発表した。こうしたニュースの見出しから、アメリカの消費者に近いところへとサプライチェーンのシフトが起きていると考えるのは当然だ。

ブラックロック(Black Rock)のCEOであるラリー・フィンク(Larry Fink)CEOもそう確信している。フィンクは先日発表した注目の株主向け年次書簡の中で、「ここ数年の度重なる衝撃で、サプライチェーンは劇的に変化しました」と述べている。

フィンクはウクライナ戦争をはじめとする地政学的な緊張を引き合いに出し、企業はサプライチェーンをリスクから遠ざけ、「たとえ価格が上昇しても、必需品を自国の近くで調達する」ことを目指していると指摘した。

ここ何年かの情勢を鑑み、よりローカルなサプライチェーンへのシフトが避けられないと見ているのは、フィンクに限らず他の経営者や識者たちも同様だ。

「このような状況の変化は、世界経済の統合を弱め、より分断化させています。官民のリーダーたちは本質的に、効率性や低コストと引き換えにレジリエンスの向上や国家安全保障に重きを置いています」(フィンク)

しかし、少なくともこれまでのところ、サプライチェーンに関するデータを見る限り事情は異なるようだ。

商品の移動距離はむしろ伸びている

DHLとニューヨーク大学スターンビジネススクールが共同で発表した最新のDHL国際際連結性指数(DHL Global Connectedness Index)によると、パンデミックの始まりから3年が経過した現在、われわれのモノづくりは最終消費者に近づくどころか、より遠ざかっている。

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