ウォーレン・バフェット
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- アメリカでは3月上旬に3つの銀行が破綻し、銀行危機と金融業界全体に被害が広がることが懸念されている。
- ウォーレン・バフェットは長年にわたり、銀行の経営破綻、救済、保険付き預金について意見を述べてきた。
- ここでは、銀行に関するバフェットの洞察に満ちた9つの金言を紹介する。
シリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank:SVB)、シグネチャー銀行(Signature Bank)、シルバーゲート銀行(Silvergate Bank)が2023年3月上旬にすべて破綻し、業界のメルトダウンと本格的な金融危機に対する懸念が高まっている。
バークシャー・ハサウェイ(Berkshire Hathaway)を経営する世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェット(Warren Buffett)は、50年以上にわたって銀行について研究し、投資をしてきた。彼の過去の発言は、銀行の取り付け騒ぎ、政府による救済、保険付き預金、リスク管理の不備など、現在の騒動と驚くほど関連している。
以下にバフェットの銀行に関する9つの金言を紹介する。簡潔にするために若干編集している。
- 「銀行というビジネスは、正しく運営すれば、非常に優れたビジネスになる。魔法があるわけではない。ただ、愚かなことをしないようにすればいいだけのことだ。投資と少し似ている。とても賢いことをする必要はない。とんでもなく馬鹿なことをしなければいい」(1996)
- 「我々は銀行ビジネスが好きなわけではない。資産が自己資本の20倍である場合(この業界では一般的な比率)、資産のほんの一部に関わるミスが、自己資本の大部分を破壊する可能性がある。そして、多くの大手銀行では、ミスは例外ではなく、むしろルールとなっている。多くの銀行家は、レミングの大行進のように前に倣えの姿勢で融資を行ってきたが、今、彼らはレミングのような運命に陥っている」(1990)
- 「パニックになったとき『必要なことは何でもやる』と言ってくれる、心から信じられる人がどこかにいなければならない」(2015)
- 「昔は、取り付け騒ぎを収めるためにできる唯一のことは、誰かにゴールドを持たせて銀行に送り込み、それを積み上げることだった。問題のある支店に対してはそうやって対処していた。銀行のCEOが出てきて「当行の自己資本比率は11.4%」と訴えたところで(払戻しを求める)列は長くなるばかりだ。それでは騒ぎは収まらない。ゴールドなら騒ぎを収められる」(2015)
- 「通常、固定金利で長く貸し、短く借りるというのはリスクの高いビジネスだ。ちょうど我々がクレイトン(Clayton)に対してやっているように。これまでいくつかの有力な金融機関がそのようなことをして破綻してきた。しかしバークシャーでは、短期金利を得られる現金同等物を常に200億ドル以上保有しており、自然に相殺される。バークシャーは今も、そしてこれからも金利に敏感で、金利上昇の恩恵を受けることになるだろう」(SVBが問題になったのは、すぐに引き出せる預金を、金利リスクを十分にヘッジせずに、長期の債券に投資したため)(2015)
- 「現時点では、政府による保証のないジブラルタル(Gibraltar)のような金融機関から融資を受けるよりも、保証のある金融機関から融資を受けて財政的に不自由になる方がずっとましなようだ」(連邦預金保険公社:FDICの保険付き預金を提供する銀行や、政府に保証された他の貸し手の場合、手数料が最小で簡単に借り入れができることに、バフェットは不満を抱いていた。バークシャーのように政府に保証されていなくてもAAA級の信用格付けを持ち、バランスシートが堅実な企業の場合は、融資の提供が難しく、手数料も高くなっていたからだ)(2008)
- 「多額の歳入不足に直面したとき、保険がかけられた地方債を歳入に組み込んでいる自治体は、地元の銀行や住民に支えられた保険のかけられていない地方債を組み込んでいる自治体よりも、債券保有者にとって不利な『解決策』を策定しやすい」(人は懸命に行動するのは自分たちの自治体が被る損失を最小限に抑えようとするからであり、大手の保険会社や政府が損失を負担するのであればそうはいかないと、バフェットは主張している。これは、政府保証の銀行預金から生じる『モラルハザード』のリスクについて述べたものだ)(2008)
- 「連邦準備制度理事会(FRB)が設立される以前は、弱小銀行の破綻によって、大手銀行が突然、予期せぬ形で資金の流動性を高めるよう求められることがあり、その結果、大手銀行まで破綻することがあった。FRBは現在、弱小銀行のトラブルから大手銀行を切り離している」
- 「少なくとも銀行家の行動は、責任感のあるバーテンダーのようなものでなくてはならない。つまり、必要であれば儲けがなくても酒を売ることを拒否し、酔っ払いがハイウェイで車を運転することがないようにするという責任感だ。だが最近では残念なことに、多くの大手投資会社は、バーテンダーのモラルが耐え難いほど制限を強いられる基準であると感じているようだ」