2023年2月末、インベスターデイで登壇した米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)のデービッド・ソロモン最高経営責任者(CEO)。
REUTERS/Brendan McDermid
米金融大手ゴールドマン・サックスは、金融引き締め政策の影響が銀行の破綻という形で表出してきたことにより、今後12カ月以内に景気後退入りする可能性が高まったと見ている。
同社は3月16日付の顧客向けメールで、景気後退入りの予想確率を従来の25%から35%に引き上げた。
ゴールドマンの景気後退予測はそれでもなお、米ウォール街で最も低い部類の数字だ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルの調査によれば、エコノミスト予想の中央値は同65%となっている。
【図表1】今後12カ月以内の景気後退入り確率について、米ウォール・ストリート・ジャーナルのエコノミスト調査結果。ゴールドマン・サックス予測(赤塗り部分)は10%引き上げてもなお楽観視グループ。
Goldman Sachs
ゴールドマン・サックスが確率引き上げに動いた背景には、高金利環境のもとで困難に直面する銀行の現状がある。
シリコンバレーバンクとシグネチャー・バンクはともに預金流出を止められず、それぞれ3月10日、12日に破綻した。
シリコンバレーバンクは住宅ローン担保証券(MBS)をはじめとする保有債券の含み損がFRBの利上げにより拡大。顧客の資産引き出しへの対応のためにやむを得ず債券売却に踏み切り多額の損失を計上した結果、信用不安が広がって預金流出が加速し、破綻に至った。
信用不安はシグネチャー・バンクの顧客にも広がり、やはり流動性不足を解消するため資産売却に踏み切り、損失を出した。
ファースト・リパブリック・バンクも同様に急激な預金流出に見舞われたものの、JPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカなど米大手銀11行が合計300億ドルを協調預金する支援策を発表したことから、破綻はひとまず回避された。
ただ、経営不安は根本的に解消されておらず、米格付け会社S&Pグローバル・レーティングによる再格下げを受けて株価が急落したことなどを受け、JPモルガンら大手銀がさらなる支援策を協議中とウォール・ストリート・ジャーナルが報じている。
これら一連の事件により、資金退避の受け皿となった大手行は預金を増やした一方、中小銀行には不安が広がっており、結果として、地域コミュニティ向けの融資手控えにつながる可能性も出てきている。
米資産運用会社RIAアドバイザーズのランス・ロバーツ最高投資責任者(CIO)は3月16日にInsiderの電話取材に応じ、次のように指摘した。
「銀行は足元で融資に相当慎重な姿勢を示すようになっており、これから融資条件の引き締めが進んでいくと思われます。融資基準が厳しくなれば、アメリカの国内総生産(GDP)の約7割を占める個人消費支出が圧迫され、景気後退に引きずり込まれることになるでしょう。
なお、大手行の経営健全性は問題ありません。消費者向けあるいは法人向けの銀行サービスは大手行のビジネスの一部であり、巨額の富裕層向け資産管理サービスやポートフォリオ・トレーディング、機関投資家などを顧客とする投資銀行業務など、他にも多様な収入源が確保されています。
一方で地銀の経営が不安視されるのは、上記の大手行のようなビジネスの多様性を持たず、融資や債券購入を通じて金利収入を得る以外の選択肢が限られているからです。シリコンバレーバンクやファースト・リパブリック・バンクのような危機が繰り返される可能性はまだあると思います」
ロバーツ氏が指摘するように個人消費が圧迫されて景気後退に突入すれば、企業の業績や株価はさらに下降する可能性が高くなる。
ただし、ゴールドマン・サックスはそうした景気低迷に対する耐性のある株式銘柄をしっかり押さえている。
以下で紹介する20銘柄リストは、ゴールドマンが「ディフェンシブ・バスケット」と呼ぶ、耐性の強い銘柄群の中から時価総額上位20銘柄を並べたものだ。同バスケットに占めるウェイトが大きい順に、その構成割合とともに紹介しよう。
【1】マイクロソフト(Microsoft)
Markets Insider
[セクター]情報技術[バスケット構成比率]11.9%
【2】アルファベット(Alphabet)
Markets Insider
[セクター]通信サービス[バスケット構成比率]6.6%
【3】ユナイテッドヘルス・グループ(UnitedHealth Group)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]2.8%
【4】ジョンソン・エンド・ジョンソン(Johnson & Johnson)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]2.5%
【5】メタ・プラットフォームズ(Meta Platforms)
Markets Insider
[セクター]通信サービス[バスケット構成比率]2.5%
【6】ビザ(Visa)
Markets Insider
[セクター]情報技術[バスケット構成比率]2.3%
【7】プロクター・アンド・ギャンブル(Procter & Gamble)
Markets Insider
[セクター]生活必需品[バスケット構成比率]2.1%
【8】マスターカード(Mastercard)
Markets Insider
[セクター]情報技術[バスケット構成比率]1.9%
【9】アッヴィ(AbbVie)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.7%
【10】メルク(Merck)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.7%
【11】イーライリリー(Eli Lilly)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.6%
【12】ペプシコ(PepsiCo)
Markets Insider
[セクター]生活必需品[バスケット構成比率]1.5%
【13】コカコーラ(Coca-Cola)
Markets Insider
[セクター]生活必需品[バスケット構成比率]1.5%
【14】ファイザー(Pfizer)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.4%
【15】サーモフィッシャーサイエンティフィック(Thermo Fisher Scientific)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.4%
【16】コストコ・ホールセール(Costco Wholesale)
Markets Insider
[セクター]生活必需品[バスケット構成比率]1.4%
【17】ウォルマート(Walmart)
Markets Insider
[セクター]生活必需品[バスケット構成比率]1.3%
【18】セールスフォース(Salesforce)
Markets Insider
[セクター]情報技術[バスケット構成比率]1.2%
【19】ウォルト・ディズニー(Walt Disney)
Markets Insider
[セクター]通信サービス[バスケット構成比率]1.1%
【20】アボット・ラボラトリーズ(Abbott Laboratories)
Markets Insider
[セクター]ヘルスケア[バスケット構成比率]1.1%