ビル・ゲイツがAIの未来について7ページに及ぶ書簡を発表した。
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- ビル・ゲイツは、AI(人工知能)の未来について7ページに及ぶ書簡を発表した。
- ゲイツの書簡は、AIが変革しうる3つの分野、すなわち労働、医療、教育に焦点を当てている。
- この書簡は、現在普及しているAIチャットボットをめぐる議論に拍車をかける内容となっている。
ビル・ゲイツ(Bill Gates)はAIについて多くのことを考えてきたが、その思いを今、書簡にしたためた。
マイクロソフトの共同創業者、ビル・ゲイツは、2023年3月21日に、『AIの時代が始まった(The Age of AI has Begun)』と題した7ページに及ぶ書簡を発表し、人工知能の将来について自身の見解を示した。彼は、AIの開発は「マイクロプロセッサ、パソコン、インターネット、携帯電話の誕生と同じくらい基本的なものである」だと書いている。
この書簡が届いたのは、グーグル(Google)がAIチャットボット「Bard」をリリースし、マイクロソフト(Microsoft)の「Bing」とともにAI軍拡競争に加わったのと同じ日だった。また「ChatGPT」を作ったOpenAIが最新のAIモデル「GPT-4」を発表してから1週間後のことだった。
ゲイツは以前にも、AIの将来への期待、具体的には教育現場での家庭教師としての活用や、医師が十分に行き届かない場で医療的なアドバイスを提供することなど、どのような使い方ができるかを語っている。
彼はこの書簡の中で、人間が人工知能を悪用するリスクや、時間が経過するにつれてAI技術が向上して「自らの目標を確立する」ことができるスーパーインテリジェントな、すなわち「強い」AI誕生の可能性など、人工知能に関する懸念を手紙の中で認めている。
ゲイツはこの書簡で、AIを人々の生産性を向上させるツールとして使うだけでなく、職場、医療、教育など、世界的な不公平を改善するための活用方法など自らの考えを述べ、詳しく説明している。
さまざまな仕事をサポートしてくれるホワイトカラー
ゲイツは、従業員の生産性を高めるために、AIを「デジタル・パーソナル・アシスタント」として活用する方法について書いている。このアイデアは2023年2月に彼が語っていたものだ。例えば、マイクロソフトOfficeのようなデジタルワークツールに組み込まれたAIは、メールの管理や作成に役立つ可能性があると彼は書いている。AIが生成する「パーソナル・エージェント」 は、企業や業界に関する膨大な知識やデータを備え、従業員がコミュニケーションを取るためのリソースとしての役割も担うとゲイツは述べている。
「コンピューティングパワーが安価になるにつれて、GPTがアイデアを表現する能力は、ますますホワイトカラーがいろいろな仕事を手伝ってくれるようなものになるだろう」
医療従事者の雑務を請け負うデジタルヘルパー
ゲイツは、医療業界においては、AIによって、保険請求書や書類の作成、また医師の診察記録の作成といった特定の作業から医療従事者を解放する可能性があると述べている。
「多くの人々が医者の診察を受けられない」貧困国では、AIは医療従事者が患者を診る際の効率を高め、医療施設の近隣に住んでいない患者の治療にも役立つ可能性があるとゲイツは書いている。
AIはすでに医療分野では、医療データの分析や薬品の開発に使用されている。しかし、AIツールの次の波は、薬の副作用の予測したり、投与量を計算したりするのに役立つかもしれないという。
ゲイツは、貧しい国の農作物や家畜のために、AIは地域の気候に合わせた種子や家畜用ワクチンの開発を支援できるとし、これらの開発は「異常気象と気候変動が低所得国の自給自足の農家をさらに圧迫している中」で特に重要になるだろうと述べている。
教師はいなくならないが、適応する必要がある
ゲイツは、何が個々の生徒のモチベーションを高め、教科への興味を失わせるのかなどを学び、生徒の学習スタイルに合わせたコンテンツを提供することで、AIが今後5年から10年で教育を大きく変える可能性があると予測している。
また、授業の指導計画や生徒の授業の理解度を評価することで、AIは教師を支援できるかもしれないと述べている。
「テクノロジーが完成しても、学びというものは、生徒と教師の素晴らしい関係によって左右される」とゲイツは書簡に書いている。
「AIは生徒と教師が教室で一緒に行う作業を強化するものであり、決して教師に代わるものではない」
ゲイツは、AIは「低所得世帯の生徒が取り残されないように」、アメリカや世界中の低い所得層の子どもが通う学校にも平等に利用できるようにする必要があると記している。
教師はまたGPTのような新しいテクノロジーを教室で使う生徒に適応する必要があるだろう。ゲイツは、GPTを使いエッセイの初稿を生徒に書かせ、その後GPTが書いた原稿を教師が生徒たちにパーソナライズさせる例を挙げている。
「この驚くべき新技術を最大限に活用するためには、リスクを警戒するとともに、できるだけその恩恵を多くの人々に広める必要がある」
ビル・ゲイツの書簡の全文はこちらから(英文)