新宿ミロード「モザイク通り」38年の歴史に幕。再開発で変わる新宿西口、新たに生まれる“超高層ビル”たち

モザイク通りの西口側始点「モザイク坂入口」(2023年3月16日)

モザイク通りの西口側始点「モザイク坂入口」(2023年3月16日)

撮影:吉川慧

新宿駅の西口〜南口を結ぶオープンモール「モザイク通り」が3月25日、38年6カ月の歴史に幕を下ろす。新宿駅西口周辺では複数の再開発計画が進み、超高層ビルへの建て替えが予定されている。近い将来、街の景色は大きく変わりそうだ。

モザイク通り入口。西口側からは「モザイク坂」を登るルートになる(2023年3月16日)

モザイク通り入口。西口側からは「モザイク坂」を登るルートになる(2023年3月16日)。

撮影:吉川慧

モザイク通りは1984年10月、小田急「新宿ミロード」の一区画として開業。全長約200メートルの狭い路地に小規模店舗が軒を連ねるオープンモールだ。

小田急と京王、2つの百貨店の狭間にある小さな区画ながら、アパレルや雑貨、カフェ、コスメなど様々な店舗が出店。西口と南口を結ぶ「近道」としても重宝されてきた。

1988年2月。オープンから3年ほど経ったモザイク通りの様子を、当時の新聞は流行語だった「新人類」という言葉を交えつつ、以下のように伝えている。

「ここは京王デパートの裏側の、昼でも日が差さない場所なのだが、まばゆいばかりの明るさに満ちている。緩い坂の路面に美しい幾何学文様のタイルが張られ、約20店のファッショナブルな店が並ぶ。ロックやフュージョンが流れる中、ショーウインドーを楽しげに見ながら通るのは、ほとんどが10代から22、3歳の若者だ」

「縫いぐるみ、食器、アクセサリー、その他ありとあらゆるインテリアや小物。ひっくるめてバラエティーグッズというのだそうだが、こういう品々が、今のヤングはよほどお気に入りらしい。怪獣の置物に『あ、これ、カワイイ!』。1960年代のアメリカの歌手をプリントしたTシャツを見て『オッシャレー』。“新人類語”が飛び交う」

(1988年2月25日「読売新聞」朝刊・東京本社版)

モザイク通り。後ろに見える台形のシルエットは小田急「新宿ミロード」本館(2023年3月16日)

モザイク通り。後ろに見える台形のシルエットは小田急「新宿ミロード」本館(2023年3月16日)。

撮影:吉川慧

モザイク通りとともに、新宿ミロード「モール2階」も営業を終える。モザイク通りは3月26日から通行できなくなるため、西口側から南口側に移動するには京王百貨店前と甲州街道を経由して迂回する必要がある。

モザイク通りは3月26日から通行できなくなるため、迂回路が案内されている。(2023年3月16日)

モザイク通りは3月26日から通行できなくなるため、迂回路が案内されている(2023年3月16日)。

撮影:吉川慧

新宿ミロード「本館」は今後も営業を継続するが、再開発のため2025年4月までに営業を終了し、以降解体される予定だ。

超高層ビルの計画ラッシュ、変貌する新宿駅西口の景色

新宿駅西口広場。スバルビル、明治安田生命ビルが解体され、ぽっかりと空間が生まれている。(2023年3月16日)

新宿駅西口広場。スバルビル、明治安田生命ビルが解体され、ぽっかりとした空間が生まれている(2023年3月16日)。

撮影:吉川慧

新宿駅は1日あたり約350万人の乗降客数を誇ったことから、「世界一利用客が多い駅」としてギネス世界記録になったことがある。

周辺地域は高度経済成長期の1960年代に整備が進められたが、時代とともに駅や駅ビルなどの施設は老朽化。新宿駅に不動産や乗り入れ路線を持つ事業者は古い施設を解体し、超高層ビルに建て替える再開発計画を進めている。

新宿駅西口広場(2022年9月撮影)

新宿駅西口広場(2022年9月撮影)。

撮影:吉川慧

西口地区では、小田急電鉄・東京地下鉄が大規模な再開発計画を推進。その一環として、2022年10月には小田急百貨店新宿店の本館が閉館した。新宿店は売り場面積を縮小し、隣接する別館ハルクに移転。旧本館では現在、解体工事が進んでいる。

小田急百貨店新宿店の旧本館は1967年にオープン。2022年10月、55年の歴史に幕をおろした。現在は解体工事の真っ只中だ。(2023年3月16日)

小田急百貨店新宿店の旧本館は1967年にオープン。2022年10月、55年の歴史に幕をおろした。現在は解体工事の真っ只中だ(2023年3月16日)。

撮影:吉川慧

将来的にはモザイク通りや新宿ミロード本館も解体され、約1万5700平方メートルの敷地に地下5階・地上48階の超高層ビルが建つ。新築工事と解体工事は並行して進められ、新たなビルは2029年度に完成する予定だ。

計画建物イメージパース(西側から計画地を望む)

計画建物イメージパース(西側から計画地をのぞむ)。

出典:新宿駅西口地区の開発計画について(小田急電鉄、東京地下鉄)

小田急電鉄は2010年、同じ西口地区にあった「新宿スバルビル」を富士重工業から取得し、すでに解体。近隣では明治安田生命も「西新宿一丁目地区プロジェクト」として約6000平方メートルの敷地に地上23階・地下4階、高さ約126mの高層オフィスビルを計画中だ。

京王とJR東日本、2040年代にかけて再開発計画

京王百貨店新宿店。後方にはJR東日本の本社ビル。(2022年9月撮影)

京王百貨店新宿店。後方にはJR東日本の本社ビル。(2022年9月撮影)

撮影:吉川慧

小田急だけでなく、京王やJR東日本も新宿で超高層ビルを計画している。

京王電鉄とJR東日本は2022年4月に「新宿駅西南口地区開発」の計画概要を発表。京王百貨店新宿店がある西口エリアからJR東日本の本社ビルに近い南口エリアにかけて、大規模な再開発を計画している。

JR東日本の本社ビルと隣接する「南街区」では、約6300平方メートルの敷地に地上37階・地下6階、高さ225メートルの超高層の複合施設を計画。2028年度に竣工予定だ。

京王百貨店新宿店とルミネ新宿「ルミネ1」がある「北街区」でも、約1万平方メートルの敷地に地上19階・地下3階、高さ110メートルの商業ビルを計画している。こちらは2040年代の開業を目指している。

新宿駅西南口地区の開発計画、外観イメージ。

新宿駅西南口地区の開発計画、外観イメージ。

出典:新宿駅西南口地区の開発計画について(京王電鉄、東日本旅客鉄道株式会社)

こうした再開発計画と合わせて、東京都も土地区画整理事業に着手。2046年度に向けて、新宿駅周辺を「新宿グランドターミナル」として再編する計画を進めている。

具体的には、駅前広場の整備や新宿駅の線路上空にデッキを設置するなどして、西口地区と東口地区の移動がしやすくなることを目指している。

新宿駅から徒歩圏内の歌舞伎町でも再開発計画は進む。新宿ミラノ座の跡地には、地上48階・地下5階、高さ約225mの複合施設「東急歌舞伎町タワー」が4月14日に開業を控えている。

都内では渋谷や東京駅周辺、日本橋をはじめ各所で高度経済成長期につくられた施設の再開発計画が進む。新宿の景色も、この先まだまだ変わりそうだ。

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