NASA / Solar Dynamics Observatory
- 太陽から噴出する竜巻状のプロミネンスが観測された。
- 高温のプラズマでできたプロミネンスは、地球14個分の高さにまで成長したと推計される。
- 3月14日に形成が始まり、18日に爆発してプラズマを宇宙空間に拡散させた。
アメリカ航空宇宙局(NASA)の太陽観測衛星「ソーラー・ダイナミクス・オブザーバトリー(SDO)」は2023年3月20日、太陽表面に現れたコロナホールの映像を撮影した。このコロナホールは地球が20個から30個も収まるほどのスケールだ。
他にも竜巻状のプロミネンスが観測されており、これは3月14日に形成され始め、18日に爆発してプラズマを宇宙空間に拡散させたとSpaceWeatherが伝えている。
「この渦巻くプラズマの柱は、地球14個分の高さで、月サイズの白熱した物質の塊を太陽に降らせていた」と天体写真家のアンドリュー・マッカーシー(Andrew McCarthy)は19日にツイートしている。彼は3時間にわたって太陽望遠鏡を太陽に向け、この「竜巻」がどのようなものなのか、驚くべき映像で捉えた。
これは圧倒されるほどの現象だが、地球に危険が及ぶことはないようだ。
この現象を研究しているオスロ大学の太陽物理学教授、スヴェン・ウェデマイヤー(Sven Wedemeyer)は「今回目撃されたのは、スケールがかなり大きいものだ」とInsiderに語っている。
太陽は11年周期の活動がピークとなる「極大期」を迎え、一連の想像を絶するような現象が観測されており、この「太陽竜巻」もそれに続くものとなっている。なおこのような現象にはほとんど危険性はない。
「太陽竜巻」は、噴出の一部でしかない
太陽の北極付近で発生した太陽竜巻。
SDO/NASA
太陽竜巻を引き起こす磁気構造は、実は観測できているものよりもずっと大きい。
「今回観測されたのは極冠フィラメント(polar crown filament:PCF)だ。フィラメントとは太陽表面にできる巨大でねじれた磁気構造のことで、時には数カ月にわたって存在する」と、レディング大学の宇宙物理学教授、マシュー・オーエンズ(Mathew Owens)はInsiderに宛てたメールに記している。
太陽は、高温のガスとプラズマでできた巨大な球だ。プラズマとは荷電粒子から成る気体のことをいう。これが太陽表面を移動すると、磁場が発生し、下層大気が磁力線に沿って上層に突出する。
巨大な磁場からは、下の画像のように宇宙空間に向かって弧を描いてプラズマが噴出することがあり、これをフィラメントやプロミネンスという。
2012年8月31日、太陽表面から噴出する長いプロミネンスを、太陽観測衛星SDOが捉えた。
NASA Goddard Space Flight Center
プロミネンスやフィラメントに加え、太陽竜巻も、この目に見えない磁場から噴出するものの一例だとウェデマイヤーは言う。
最終的に、プロミネンスは「衰退するか、宇宙空間に向けて噴出する」とオーエンズは言う。
太陽竜巻の場合、プロミネンスが噴出すると、プラズマが太陽から飛び出し、宇宙空間を猛スピードで進んでいく。もし、これが地球に向かうと、多くのオーロラが発生するだけでなく、停電も起きるかもしれない。だが、地球は噴出した物質が通るコースからは外れているため、そのような心配はない。
「噴出した物質は、太陽の北極上空に向かっていったため、地球や他の太陽系惑星に向かうことはない」とオーエンズは述べた。
太陽竜巻は回転していないかもしれない
竜巻とは、構造が回転することを意味しており、このプロミネンスを太陽竜巻と名付けるのは間違いである可能性もあるとウェデマイヤーは言う。
「基本的に、2つの可能性がある。構造を結び付ける磁場が実際に回転しているか、あるいは、高温のガスであるプラズマが、ねじれた磁場に沿って螺旋状に上下に動いている様子が回転しているように見えるだけなのか、これらのいずれかだ」
「仮に、本当に回転しているのであれば、それが引き金となって全体の構造が不安定になり、今回の噴出につながったのかもしれない」とウェデマイヤーは続けた。
活発になっている太陽
NASAの太陽観測衛星SDOが撮影した映像から、太陽表面に現れた巨大なコロナホールが確認できる。
NASA/Solar Dynamics Observatory
現在、11年ごとの太陽周期において活動がピークとなる「極大期」を迎えており、今後数年にわたって驚くような太陽現象が見られるだろう。
太陽竜巻のように美しい現象だけでなく、黒点も多く見られるようになっている。上の映像が示すように、3月20日に巨大な黒点が現れた。そこから噴き出される太陽風が地球に届くと、美しいオーロラが見られるかもしれない。