日本で、銀行が閉鎖されたらどうなるのか? 万が一のために知っておきたいこと

shutterstock_2185306069

日本で金融機関が破綻した場合、普通預金なら1000万円まで保護される。

buritora/Shutterstock

  • 日本で金融機関が破綻した場合、預金保険機構が決済用口座(当座預金)の全額とその他預金を1000万円まで保護する。
  • 破綻処理の際、預金保険が保護する預金総額(付保預金)は、受け皿銀行が受け継ぐ資金援助方式か、預金保険機構が直接預金者に支払う保険金支払方式のいずれかによって預金者に支払われる。
  • 一方、外貨預金や譲渡性預金(CD)は預金保護の対象外である。また、外国銀行の在日支店への預金や、保険の対象となる金融機関の海外支店への預金も保護されない。

米国のシリコン・バレー銀行とシグネチャー銀行が業務を停止し、金融市場が混乱している。銀行が閉鎖されるという極めて異例の事態に陥ったら預金者はどうなるだろうか? 日本で銀行が閉鎖された場合を以下にまとめてみた。

銀行が閉鎖されるとどうなるか?

預金保険機構は、預金者などの保護と破綻金融機関にかかる資金決済を円滑にするため、米国の連邦預金保険公社(FDIC)をモデルとして1971年に設立された。

預金保険機構は、決済用口座(当座預金、利息の付かない普通預金)の全額と、利息の付く普通預金、定期預金、定期積立、元本補てん契約のある金銭信託を預金者1人当たり1000万円まで保護する。

一方、外貨預金や譲渡性預金(CD)は保護の対象外である。また、同じ金融機関に複数の口座を保有している場合は、預金者ごとの預金を取りまとめる「名寄せ」という作業が行われる。

例を挙げてみよう。ある金融機関に当座預金2000万円、普通預金に800万円、定期預金に400万円預けていたとする。この金融機関が破綻した場合、当座預金の2000万円は全額保護される。

一方、普通預金の800万円と定期預金の400万円は名寄せにより合算されて1200万円となり、一人の預金者のものとして扱われる。こちらの預金は1000万円までしか保護されないため、残りの200万円は預金保険の対象外となる(ペイオフ)。

銀行が破綻すると、監督当局が銀行窓口業務の閉鎖を命令し、預金の流出を防ぐ。その後、預金保険機構は、預金者に対し直接保険金を支払う保険金支払方式か、受け皿金融機関が破綻金融機関の業務を受け継ぐ資金援助方式のいずれかによって、破綻銀行を処理する。

どちらの方式でも、預金などが保護される範囲は同じだが、金融機能を維持し、破綻に伴う混乱を最小限に止めることができる資金援助方式のことが多い。

コラム:シリコン・バレー銀行とシグネチャー銀行の破綻のケースでは、米連邦預金保険公社(FDIC)がブリッジバンク(金融機関の破綻時に借り手企業などを保護するために、救済銀行が決まるまでの一定期間その業務を継承する機関)を設立した。

このブリッジバンクは、FDICがシリコン・バレー銀行の受け皿を決めるまでの間、金融安定を図るために設立された国法銀行である。 FDICのプレスリリースによると、シリコン・バレー銀行のすべての預金(保険対象外の預金を含む)がシリコン・バレー・バンク N.A(ブリッジバンク)に移行された。

また、別のFDICのプレスリリースでも、シグネチャー銀行の預金全額と大半の資産が、シグネチャー・ブリッジバンクに移管されたと記している。

これらブリッジバンクの名前は破綻銀行に似ているが、まったく別物で、FDICが預金を保護しており資産は安全である。

預けていたお金はいつ引き出せるのか?

預金保険機構のホームページには、「資金援助方式による破綻処理については、金曜日の営業終了後に破綻が生じたと仮定すると、土曜日、日曜日で預金者の名寄せ等の準備を終え、月曜日から破綻金融機関の営業を一定の範囲(付保預金の払戻し等)で再開・継続することを考えています」とある。

つまり一般的に、銀行閉鎖から2~3営業日で預金を引き出せるということだ。 金融機関の破綻ニュースが週末に多いのはそのためだろう。

コラム:シリコン・バレー銀行に口座を持つ人は、2023年3月10日の破綻から3日後となる3月13日から預金を全額引き出せた。また銀行業務も同日から再開されている。

銀行が破綻した場合、預金者は何ができるか?

銀行が破綻すると、預金者はパニックになるかもしれない。だが、そんな中でもできることはある。

  • 自動引き落とし等になっている支払期日を確認する。受け皿銀行に預金が移行されれば、通常自動引き落としは問題なく処理される。だが、他の銀行から入金されるお金を支払いに充てる場合など、入金日と自動引き落とし日が影響を受ける可能性もある。確実に引き落としが行われているか、確認しておこう。
  • 受け皿銀行の商品について調べておく。商品やサービスは金融機関ごとに大きく異なる。受け皿銀行に預金が移管される場合は、新しい金融機関の商品や利用条件を理解しよう。預金移行時に新しい金融機関の情報が送られてくるので、質問があればカスタマーサービスに連絡しよう。
  • ニュースや預金保険機構のホームページを確認する。保険金支払方式で預金が保護される場合、預金者に直接保険金を支払う方式と預金設定方式がある。前者の場合、預金保険機構は、預金者に保険金の額等を記入した保険金支払通知書・保険金支払請求書を郵送し、預金者からの保険金の支払請求に基づいて保険金を支払う。後者の場合、預金保険機構が破綻金融機関以外の金融機関に預金を預け入れ、同預金債権を当該預金者に譲渡する。預金者には新しい銀行の預金通帳が交付される。保険金支払方式で処理されるケースは少ないが、ニュースや預金保険機構のホームページで情報をこまめにチェックすることが肝心だ。
  • 1金融機関当たりの預金総額を確認する。これは日ごろから心がけておくべきことだが、預金保険機構の保険限度額は1金融機関につき預金者1人当たり1000万円だ。名寄せされても全額保護されるようにしたいなら、金融機関の分散を図ろう。あるいは、金利のつかない決済口座に移管しておくという手もある。例えば、マンションの管理組合や学校など1000万円を超えて銀行に預け入れているケースも考えられる。この場合も名寄せの対象になるので注意しよう。また、子や孫の名義も借名口座とみなされ名寄せの対象になるため、そのような口座がないか確認しておこう。

ペイオフの対象になったらどうなるか?

日本で初めてペイオフが発動されたのは、2010年9月に破綻した日本振興銀行だ。同行は、取り扱う預金の種類が運用目的の定期預金だけで、当座預金や普通預金など決済性預金は扱っておらず、1000万円を超える預金者は全体の3%だった。

預金は1000万円までは保護されたが、保護されない3%の預金については、(もしあれば)借入金と相殺された後、銀行資産の処分状況に応じて預金額がカットされた。日本振興銀行の場合、最終的に1000万円を超える預金額の約105億円のうち、4割分が戻ってこなかった

コラム:米財務省、米連邦準備理事会(FRB)およびFDICは、シリコン・バレー銀行とシグネチャー銀行に対して例外的な措置を講じた。プレスリリースによると、両行については「納税者に損失を負担させない」とし、FDICの付保上限額(25万ドル)を超える預金についても全額保護した。

上記2行以外に米国で銀行破綻が起こったのは、2020年10月のカンザス州のアラメナ州立銀行(Alamena State Bank)が最後である。2007年の世界金融危機時と比べて、近年の景気後退で銀行閉鎖に追い込まれるケースは格段に減っている。

普段意識せずに使っている銀行だが、金融情勢の変化により突然閉鎖されることもありうる。今回の米銀破綻を機に、一度銀行を見直してみるのも良いかもしれない。

[参考:What to know if your bank shuts down

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み