Fabrizio Bensch/ Reuters
運用資産残高10億ドル規模のQuent Capitalの創業者兼ポートフォリオ・マネージャー、グレッグ・フィッシャーは、AI(人工知能)は浸透していると語る。
しかし同氏によると、過去のドットコムバブルや暗号資産バブルを考えると、投資の観点からはAIにすべての資金を投じることは必ずしも賢い方法ではないという。
バブル感はこの数カ月でAIに現れ始めている。例えばBuzzFeedの株価は、同社がAIを使ってコンテンツを作成し、利益率を向上させるというニュースを受けて2023年1月に307%上昇。その後、75%下落している。
「90年代を思い出す」とフィッシャーは、2000年にピークを迎えたインターネット関連株を引き合いに出しつつ、次のように語る。
「AIを使っていない企業名を挙げることなどできないと思う。つまり、ちょっとしたバブル状態になっている」
フィッシャーがAIに関して投資のチャンスを見出していないわけではない。バブルに対抗するために、健全な投資プロセスを持つことを推奨しているのだ。以下、具体的に見ていこう。
バブルを断ち切る
まず、フィッシャーはAI以外の強気銘柄やセクターを見ることが大切だと述べた。
「まず優れたビジネスを行い、適正な製品を適正な人々に販売し、持続可能な利益を得ている企業を見つけなければならない。
AIとは無関係に思える産業、セクター、企業から始める。そしてそれから、AIがそれらをより良くするかを考える」
フィッシャーが良い投資先を見極める際に好んで使う指標がある。ひとつは、生産性の指標となる売上高1ドルあたりの従業員数だ。
また、AI導入に積極的な企業であれば、研究開発への投資額、従業員の職種構成なども重要な指標だとフィッシャーは話す。例えば、AIに力を入れている企業は、エンジニアの割合が高くなるはずだ。
決算報告書などに目を通し、AIに関する記述や、AIをどのように活用しようとしているのかを探ることも有効という。
こうした分析を経て、フィッシャーは自身が投資している中小型株6銘柄を挙げた。以下、6社がどのようにAIを活用しているかをフィッシャーの解説とともに紹介する。ただし、株式のパフォーマンスにはマクロ要因などさまざまな要因が影響を与えていることに常に留意してほしい。
注目のAI関連中小型株6銘柄
フィッシャーが最初に名前を挙げたのは、RanPak(PACK)。AIを使った梱包ソリューションでダンボールの無駄を省く、時価総額4億1900万ドル(約544億円、1ドル=130円換算)の企業だ。
「同社はロボットアームを使ってダンボール箱を作り、アマゾンの配送センターなどで使われるパッケージを正確に適正サイズにする。
箱は入れるべきもののサイズに基づいてその場で作られ、適切な量の荷物が梱包される」
2社目は、企業向けのAI会計事務所Bill.com(BILL)。時価総額は79億ドル(約1兆円)だ。請求書からデータを抽出し、人的ミスを防ぐという。
「皆、間違って二重支払いをした経験があるだろう。AIがあなたのデータだけでなく、他の人のデータも使って学習し、そうしたことをほぼ起こらなくすることを想像してほしい」
続いてフィッシャーは、カスタマーエクスペリエンス企業3社を挙げた。 Pegasystems(PEGA)、Five9(FIVN)、PagerDuty(PD)だ。時価総額は29億〜44億ドル(約3800億〜5700億円)。AIを使って、顧客が問題を起こしそうなタイミングを予測し、先手を打ってサポートできるよう事業主に警告する。
「次に問題を起こすのは誰か、どのような内容かを予測できるようになる。
もしあなたが中小企業のオーナーだとして、No.6421のクライアントが明日午後3時にクレームの電話をかけてくると分かっていたら? あるいは、もしさまざまな要因からその可能性を予測できたとしたら? クライアントが電話をかけてくる前にこちらから電話をかけることができる。そうしたことが現実のものとなっている」
最後の6社目は、時価総額59億ドル(約7700億円)のサーバーメーカー、Supermicro(SMCI)。同社のサーバーはAIの急速な普及をサポートし、利益を上げることができるという。
「企業がAIや機械学習などについて多くを行うのであれば、より優れた、より速いコンピューターが必要だ」