提供:Amazon
アナリストらは、アマゾン(Amazon)の「Buy with Prime」機能がShopify(ショッピファイ)の利益に与える影響について懸念を強めている。
この新機能は、販売者が自分のウェブサイトに「Buy with Prime」ボタンを設置すると、Amazon.com以外のウェブサイトでもアマゾンのプライム特典(迅速な発送、無料配送、返品無料など)を提供できるというものだ。買い物客はアマゾンのアカウントに保存されている支払い・配送情報を使って決済できる。
UBSのアナリスト、クナル・マドゥカル(Kunal Madhukar)らのグループは3月19日に発表したノートの中で、Buy with PrimeがShopifyに与える影響について「徐々にネガティブになっている」という見解を示している。
UBSのアナリストは現時点で、Buy with PrimeがShopifyの収益に8〜18%のリスクを、粗利益に6〜12%のリスクをもたらす可能性がある試算している。これはつまり、2023年度の業績について収益ベースで約8億1000万ドル(約1000億円、1ドル=130円換算)、粗利益ベースで約2億6000万ドル(約340億円)もの影響を与えかねないことを意味する。
これらの数字は、アナリストらがノートで概説したベスト、ニュートラル、ワーストとい3つの考えうるシナリオのうちのニュートラルに当たる。
Shopifyの「レバレッジは限定的」
UBSのアナリストは、複数のアマゾン担当者やBuy with Primeを利用している複数の加盟店へのヒアリング内容、およびShopifyがアマゾンのこの新機能によって発生する取引に対していかなる見通しも持っていないと分かったことなどにより、よりネガティブな所感を持つようになったとしている。
現在、Shopifyを利用しているECサイトがBuy with Primeに加盟し、買い物客がBuy with Prime経由で決済すると、Buy with Primeがホストする加盟店の決済ページに直接移動して購入が完了する。
このため、買い物客はShopifyの決済システムの外へ出ることになる。Shopifyはこれらの取引に関する情報を受け取らないため、加盟店に対して第三者決済プロバイダーに対する通常の手数料を請求することができない。
これはShopifyの利益への影響が「以前聞いていた内容よりもはるかに大きくなる可能性がある」ことを示唆する、とUBSのアナリストたちは指摘する。
しかし、Shopifyには「一筋の光明」があるともアナリストは記している。Buy with Primeでは現在、買い物客がカートを自由に管理できない。つまり、買い物客が一度に購入できるのは1つの商品だけなのだ。
モルガン・スタンレー(Morgan Stanley)のアナリストも最近、Buy with Primeにカート機能がないことを強調し、これはアマゾンのツールを利用している販売者にヒアリングした際の「最大のフィードバックポイント」だったと述べている。
アマゾンはBuy with Primeに新機能を追加し続けるとしているが、Shopifyの協力なしにShopify加盟店のサイトに新機能を追加できるかどうかは明らかではない。もしアマゾンがShopifyの支援なしにこれらの機能を開発できるのであれば、Shopifyの「レバレッジは限定的」になるとUBSのアナリストは指摘している。
だがもしアマゾンがShopifyの協力を必要とするならば、Shopifyは理論上、Shopify加盟店のBuy with Prime取引、およびアマゾンから別途支払われる手数料について、アマゾンの見通しを示すよう主張できるだろうというのがアナリストの見解だ。
Shopifyはアマゾンと「協議中」
Shopifyは2月に行われた第4四半期決算説明会で、Buy with Primeをプラットフォームに正式に統合することについてはアマゾンと「協議中」だと述べていた。
「私たちは、加盟店の販売を伸ばすためのインフラを提供する企業の取り組みは、素晴らしいと考えています。それを問題だとは思っていません。
しかしそれは、加盟店がエンドコンシューマーと取引をするうえでShopifyが重要だと考える方法でなされる必要があります」
Shopify社長のハーレー・フィンケルシュタイン(Harley Finkelstein)は決算説明会の場でこのように語っている。
InsiderはShopifyの広報担当者に問い合わせたが、回答は次のようにフィルケンシュタインの発言をなぞるものだった。
「Shopifyは世界的に展開する独立事業者のための主要なプラットフォームとして、ペイパル(PayPal)、アファーム(Affirm)、ストライプ(Stripe)といったパートナーとともに直接統合を構築し、加盟店がアクセスしやすく、ビジネスの成長に役立つオプションを数多く提供してきた長い歴史があります。
私たちがBuy with Primeを利用するShopify加盟店のためにアマゾンと協力して直接統合を構築しようと検討を重ねているのも、このような理由からです」
なおアマゾンの広報担当者は、Buy with Primeを利用する加盟店は顧客情報が見られるようになると述べている。
「Buy with Primeを利用することで、加盟店は買い物客の注文時のメールアドレスを含む注文情報が得られます。この情報をもとにカスタマーサービスを提供したり、買い物客とダイレクトに関係を構築することができます」
アマゾンはBuy with Primeがこれまで加盟店に働きかけてきた成果について「楽観的に捉えている」という。
「私たちはあらゆる規模の加盟店の成功を支援し、プライム会員が好む買い物特典をアマゾン上であろうとそれ以外のプラットフォームであろうと提供できるよう、新機能やツールに対し投資を続けて今後もイノベーションを起こしていきます。私たちにとってはまだ緒についたばかりで、これからが本番です」(アマゾンの広報担当者)