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- 太陽に地球20個分ほどの大きさのコロナホールが観測された。
- この「穴」から、時速290万kmの太陽風が地球に向かって噴き出してくる。
- この風は3月30日あるいは31日に地球を直撃するとみられ、オーロラが発生する可能性が高いと専門家が述べている。
太陽の表面に巨大な「コロナホール」が出現した。この「穴」から噴き出した時速290万kmの太陽風が、2023年3月30日には地球に到達する可能性がある。
3月20日に地球の30倍もの大きさのコロナホールが観測され、この最初の穴が太陽の自転に伴い地球から見えなくなると、新たに地球18個から20個分の大きさのコロナホールが姿を現した。
コロナホールから宇宙空間に放出された太陽風は、地球に到達すると、人工衛星を破損させたり、見事なオーロラを発生させたりすることがある。
科学者は、このコロナホールが地球のインフラにダメージを与えるという心配はなく、一部の地域でオーロラを発生させるだろうと考えている。その理由を解説する。
穴があるのは太陽の赤道近く
太陽の自転に伴い、コロナホールが見えてきた。
NASA/Solar Dynamics Observatory
コロナホールの出現はよくある現象だが、通常は太陽の極の方に出現し、そこから太陽風が宇宙空間に放出される。
しかし、約11年周期の太陽活動がピークに近づくと、コロナホールは太陽の赤道付近に現れやすくなると、レディング大学の宇宙物理学教授であるマシュー・オーエンズ(Mathew Owens)はInsiderに述べている。
「これが赤道上にあるということは、自転して中央子午線を過ぎた2、3日後に、高速の太陽風が地球に到達することがほぼ確実だ」
太陽風は、秒速800km以上(時速290万km)というとてつもない速さで進むと、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの宇宙・気候物理学准教授であるダニエル・フェルスハーレン(Daniel Verscharen)はInsiderに語っている。
「このコロナホールの形状に特に変わったところはないが、その位置が非常に興味深い。そこから噴き出す速い風が、3月30日から31にかけて地球に到達するだろう」
コロナホールから太陽風が噴出
太陽は巨大なプラズマの塊だ。プラズマが太陽の内部から表面へと移動する際に磁場が生まれ、それが収縮、膨張しながらぶつかり合って合体する。
アメリカ航空宇宙局(NASA)によると、この磁場が宇宙空間に向かって開くとコロナホールが現れるという。そこからプラズマの塊である太陽風が高速で噴き出しやすくなるのだ。
このような磁場は、周囲の激しく対流するプラズマよりも温度が低く、密度も低いため、画像には暗く写し出される。
もしこの磁力線が地球に向いていれば、そこから噴き出す太陽風は地球の大気圏に衝突する。
「それが南方向に向いていれば、地球が宇宙天気現象の影響を受ける可能性が高くなるが、実際にどうなるのかはまだ分からない」とフェルスハーレンは言う。
前の週ほどではないものの、明るいオーロラが見られるかもしれない
2023年3月24日、ウィスコンシン州ラクロスで観測されたオーロラ。
NWS La Crosse
太陽風が地球の帯電した大気と相互作用すると、オーロラがより明るくなることがある。とはいえ、フロリダの緯度ではオーロラが見られることはない。
3月24日頃に、アリゾナ州まで鮮やかなオーロラで空が照らされたが、それはコロナホールだけが原因ではない。
前回観測された巨大なコロナホール。ここから噴出した太陽風が地球に到達した。
NASA/Solar Dynamics Observatory
ちょうどコロナホールが地球を向いているときに、コロナ質量放出(CME:大量のプラズマが宇宙空間に放出される現象)が何度か起こったため、大規模な地磁気嵐が発生し、その影響が強く出たのだ。
今回のコロナホールの場合、このようなことが再び起こるとは考えにくいと専門家は述べている。オーロラファンにとっては残念だが、地球の安全にとっては朗報だ。強い地磁気嵐は、人工衛星やインフラ、電波に大打撃を与えるからだ。
「今回は、それほど大きな盛り上がりは見られないだろう。ちょうど同じ時間帯に地球に向かってCMEが発生すれば別だが」とオーエンズは述べた。
宇宙天気を正確に予測することは難しい。
「宇宙天気の予報に関しては、本当に遅れている」とフェルスハーレンは言う。
「だからこそ、理論物理学やスーパーコンピューターによるプラズマシミュレーション、欧州宇宙機関(ESA)とNASAの共同ミッションであるソーラーオービターのような最先端の太陽観測衛星による観測を活用し、宇宙天気について理解しようと懸命に取り組んでいる」