撮影:今村拓馬
人材育成やリスキリングなど、従業員の能力・スキルを高める「人的資本への投資」。IT人材の不足や、企業の持続的な成長といった観点から必要不可欠なものだと認識されている一方で、具体的に進めていくのは難しいという声も少なくない。
現場と経営層にギャップ
【図1】AI・DX人材の育成に関する投資意向
出典:AI inside「人的資本投資 企業の実態・意向を調査」
AI運用支援のスタートアップ、AI insideは3月28日、経営者・役員を含む人的資本投資の決裁権保有者1593人(20〜59歳の男女正社員)を対象に実施した調査結果を発表。
AI・DX人材育成への投資について、経営者・役員「以外」の決裁権保有者は約6割が「積極的に投資したい」あるいは「投資したい」と意欲的だったのに対し、経営者・役員では3割強と、2倍近くの差があった。また、「まったく投資したくない」「投資したくない」と回答した経営者・役員以外の層は10.2%だったのに対し、経営者・役員は23.5%とこちらも2倍以上の差があるなど、現場と経営層の認識に大きなギャップがあることが分かった。
経営者・役員とそれ以外の層の認識に大きなギャップがあることについて、AIインサイドは「経営者・役員が社員の声を広く聞き入れながら、人的資本投資がもたらすビジネスへの効果を再認識する必要があると考えられる」と指摘している。
重要だけど「進まない」現実
また、人的資本投資を重要だと答えた回答者は77.1%と大勢を占めたのに対し、具体的な投資の進捗に関しては「進んでいると思う」が41.4%、「進んでいると思わない」が31.3%と回答が分かれた【図2】。
【図2】人的資本投資の重要性と自社の進捗状況
出典:AI inside「人的資本投資 企業の実態・意向を調査」
「進んでいると思わない」と答えた回答者に理由を尋ねたところ、「費用対効果が見えないから」と「投資資金が確保できないから」が同率の33.7%でトップ。以下、「人材の育成方法がわからないから」(31.7%)、「スキルを身につけた社員の外部流出の恐れがあるから」(19.9%)、「ビジネスに還元される保証がないから」(18.1%)と続き、資金不足や方法が分からないといった理由だけでなく、人材育成そのものに懐疑的・否定的な姿勢も浮き彫りになった【図3】。
【図3】人的資本への投資が進んでいない理由
出典:AI inside「人的資本投資 企業の実態・意向を調査」