最も明るい「ガンマ線バースト」、これまでの70倍の明るさだった

ガンマ線バーストは、「宇宙で最も強力な種類の爆発」とされている。

ガンマ線バーストは、「宇宙で最も強力な種類の爆発」とされている。

NASA/Swift/Cruz deWilde

  • 「観測史上最も明るい」と称されるこのガンマ線バーストが、2022年秋に太陽系を直撃した。
  • その明るさは、宇宙機器や望遠鏡が見えなくなるほどだった。
  • これまでに観測された最も明るいバーストよりも70倍も明るいものだったという。

アメリカ航空宇宙局(NASA)の発表によると、2022年秋に太陽系を直撃したガンマ線バースト(GRB)は、非常に明るく、宇宙空間にあるガンマ線観測装置が一時的に稼働できなくなるほどだったという。

GRBは「宇宙で最も強力な種類の爆発」とされている。2022年秋に見られたGRBは、これまでに観測された最も明るいGRBより70倍も明るく、「BOAT(brightest of all time:史上最も明るい)」と名づけられた。

ガンマ線バーストとは何か

GRBとは、基本的にはブラックホールの最初の「息吹」であり、しかも極めて壮大なものだ。

超大質量星が寿命を迎え、コアでエネルギーを生成できなくなると、自らの重さを支えられなくなって崩壊し、ブラックホールが形成される。

このとき、2つのことが起こる。まず超新星爆発が起こる。次に爆発後に残ったガスや塵の雲の中でブラックホールが生まれ、周囲のすべてを一気に飲み込んでいく。

ブラックホールの周囲に残留するガスや塵が「ジェット」によってブラックホールから噴出する。これがガンマ線バーストだと考えられている。

ブラックホールの周囲に残留するガスや塵が「ジェット」によってブラックホールから噴出する。これがガンマ線バーストだと考えられている。

NASA Goddard

そしてブラックホールは、高エネルギーのガンマ線を含む強力なジェットを、光速に近い速度で2つの方向に噴出する。この現象は何度も観測されているが、なぜ起こるのかについては謎に包まれている。

このようなジェットは数秒しか続かないが、非常に明るいため、これまでに約1万2000のGRBが記録されている。そして、2022年秋に太陽系を直撃したのも、このジェットだった。

BOAT:観測史上最も明るいGRB

ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3により、BOAT GRBとそのホスト銀河の赤外線残光が観測された(円で示した部分)。銀河はエッジオン(円盤が薄く見える方向)で見えており、右上に伸びる光の一片としてバーストが確認される。

ハッブル宇宙望遠鏡の広視野カメラ3により、BOAT GRBとそのホスト銀河の赤外線残光が観測された(円で示した部分)。銀河はエッジオン(円盤が薄く見える方向)で見えており、右上に伸びる光の一片としてバーストが確認される。

NASA, ESA, CSA, STScI, A. Levan (Radboud University); Image Processing: Gladys Kober

2022年10月9日に観測されたこのGRBは、「GRB221009A」という名称がつけられた。その明るさはあまりにも強力だったため、宇宙観測機器が稼働せず、バーストが地球に到達したときの正確な明るさは記録できなかった。

この数カ月間、アメリカ、中国、ロシアを含む世界各国の科学者が、他の観測機器からのデータを統合してGRB221009Aの明るさを再測定した結果、これまでに観測された中で最も明るいGRBより70倍も明るいことが明らかになった。

GRB「221009A」からのガンマ線量は、記録されている他のどのGRBよりも極めて大きい。

GRB「221009A」からのガンマ線量は、記録されている他のどのGRBよりも極めて大きい。

NASA's Goddard Space Flight Center and Adam Goldstein (USRA)

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