REUTERS/Dado Ruvic/Illustration/File Photo、Business Insider Japan
ユーザーを拡大するドキュメンテーションサービスのNotionに、新機能「Notion AI」が追加された。
OpenAIのChatGPTや同社の技術を活用したBing AI、さらにこのNotion AIと、さまざまな生成AIが話題になっている。
仕事に使い始めている人は、どんな風に応用しているのか。すでに「Notion AI」のヘビーユーザーになっているという、MOLTS社コミュニケーションプランナーの松浦茂樹さんに、自身の活用法を聞いた。プランナーの仕事に活用するポイントは、
- 「日本語を直してもらう」意外な使い方
- 文章に意図的に「クセ」をつくる
- ChatGPT、NotionAI、Bing AIの使い分け
この3つだという。
「Notion AIに日本語を直してもらう」意外な使い方
MOLTS社コミュニケーションプランナーの松浦茂樹さん。コメンテーターとしても活躍している。
オンライン取材を編集部キャプチャー
松浦さんは、大きく分けて「日本語を直す」「清書する」や「アイデアを出させる」といった使い方が中心だという。
Notion AIは翻訳や要約もできるが、特に印象的だったのは、「日本語を直してもらう」という使い方だ。
「(プランナーという職業柄)最もよく利用するのは、実はアウトプットする文章を直してもらうこと。プレゼンで話すための台本もそうですが、(コンサルティング関連という仕事柄)テキストで残る文章は特に気を遣います。『漢字が合っているか』とか『慣用句が間違っていないか』とか、これまではいちいち検索していたけど、最近はNotion AIに頼っています」
Notion AIのメニューには「文章を改善する」という機能があり、これを選択すると、指定した文章を改善してしてくれる。
Notionに原稿の一部を「改善」させようとしているところ。選択肢にあたる部分は、Notionの「プリセット」として用意されている。ほかにも、言葉で指示することもできる。
Business Insider Japan作成
「改善」させた文章。無味乾燥ではあるものの、丁寧な表現になった。
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ほかにも「短くする」「長くする」「シンプルな表現に書き換える」「要約する」「説明を付ける」など、さまざまなアレンジが可能だ。
「もとの日本語がよほど変でない限り、変な文章にはならないし、かなりきれいにまとめてくれます」と松浦さん。AIが文章を生成する「長くする」機能を使うとこのようになる。
元の文章をベースに「長くする」を使ったところ。「さらに〜〜〜」以降はNotionAIが文脈を踏まえて生成した文章になっている。
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まとめながらさらに新しい文を書き加えていくことで、頭の中もブラッシュアップされ、新たな気づきが生まれるなどの効果も大きいという。
ChatGPTなどを活用するポイントは「AIの文章に自分の癖を加えること」
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ただし、それをいよいよアウトプット(人に見せたり、仕事に使う)するときには、「AIが清書したものを、そのままでは出さないようにしている」とも。
「AIに書かせると自分の文章ではなくなってしまうんです。
例えば僕の文章のクセで、『助詞を抜かしてしまう』というのがあるんですが、AIに清書させた後は逆に、敢えて助詞を削ったり、自分らしいクセを入れるようにしています」
この、文章にクセを作るというのは、AI時代ならではのちょっとしたテクニックかもしれない。
「整った文を作ることに時間を使う」のではなく、「整った文は数秒で生成(清書)されるから、自分らしさを入れるために時間を使う」という変化だ。
ビジネスの「メモの質を上げる」
Notion AIは、アウトプットだけでなく、「インプット」にも活用している。
基本的なものとしては、英文記事のURLに「日本語に翻訳して要約して」という指示してパスすると、日本語の要約文が表示される。
「英文の記事を翻訳するだけなら、ブラウザの拡張機能などでもっと簡単にやる方法もありますが、Notion AIでは記事の要約をお任せすることも。あとでまとめて読むのには、こちらの方が速い」
これは、うまく要約できるときと、そうでないときがある。またメモの整理には、Notion AIが欠かせない。
「先日、Evernoteに溜めていた12年分のテキストをNotionにインポートしたんです。
1つのノートブックで1000以上とか、ものすごいボリュームがありました。
Evernoteでもデータベースのように過去のメモを検索して活用したり、2週に1回くらいメモを整理していましたが、Notion AIが使えるようになって、整理する量は変わらなくても質がかなり上がりました」
この、「メモの質を上げる」というのがビジネス活用のポイントだ、と松浦さん。
過去のメモから、新しいものが生まれることも多い。Notion AIを使えば前述のように、過去のメモに新しいアイデアを加えて、アップデートすることも簡単にできる。
「たとえば採用面接の際に、過去の面接ではどんなことを質問していたかというメモを引っ張り出してきて、そこに今聞きたい質問を加えて、改めて質問内容を整理するみたいなことができる」
メモがあるなら従来のツールでもコピペで済むのでは?と思いそうだが、「メモ」の状態はただの箇条書きの断片だったり、文として成立していないものであるケースもある。
断片をつなぎあわせて「文」にすることで再利用できるようにし、アップデートして使うということになる。
適当に個条書きしたメモを「清書」すると、読みやすい文章に整形できる。インプットの質をあげられる使い方の1つだと言う。
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「人が頭で覚えていられる量は決まっているので、メモとして極力外に置いておく方がいい。ただし適当なメモのままだと、それが思い込みや記憶違いとしてそのまま出力されてしまったりする。だからメモを整理しておくのは大切なこと。その方がインプットもアウトプットもしやすい。それを手助けしてくれる」
ちなみに、NotionAIでは、Evernoteのデータインポートができる。使い方は、「インポート」から「Evernote」を選ぶだけ。
NotionAIにEvenoteを読み込ませる方法。標準でインポート機能がある。
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ChatGPT、Bing AIの使い分け
Notion AIのほか、ChatGPTやBing AIも活用している。
ChatGPTはセルフブレストに向いていると、松浦さん。
「Notion AIに、『プランを5つ出して』のように投げると、割と一般的なプランしか出てこない。このような命令はChatGPTの方が得意だと感じている」
左がNotionAI、右がChatGPT(GPT3.5)に同じ質問をしたところ。ChatGPTのほうが長く、また詳細に提案している。再生成を繰り返すと、回答は変化していく。
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一方で、ChatGPTへ投げた情報は再学習に使われるため、仕事に使う場合は注意が必要とも。
松浦さん自身は「あまり具体的なことは書かないようにしている」と話す。
Bing AIは、また別の使い方だ。
「回答に使った情報ソースが表示されるため、リサーチに活用しやすい」(松浦さん)
松浦さんは仕事以外に、趣味のクイズにおいて問題作成のための元ネタ探しにも使用しているそうだ。
「過去に大河ドラマで徳川家康を演じた人を全部書き出して ── みたいな使い方をしています。検索でも調べられるけど、1つ1つ抽出してまとめるのが大変。
ただ時々大嘘をつかれるので、そこは(使う側がファクトチェックをするなど)気をつけないといけません」
Bing AIの回答。間違いも混ざっているが、正答もある。
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一方、ChatGPTの回答はもっともらしいが間違いばかりだ。「人選が本物っぽい」ことの弊害でノーチェックで信じるのは危ういことがわかる。
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現時点では生成型AIには、ファクトチェックが欠かせない。大嘘をうっかり信じてしまったり、ダマされないためにはどうすればいいのか。
松浦さんは「結局は一次情報を探せるかどうか。探すための知識を持っているかが重要」だと話す。
「ネットがない時代から検索という行為はあった。たとえば国会図書館に行くとか、何かしらのデータベースにあたるとかしていたと思います。Googleのおかげで検索はラクになったけど、Googleの検索結果だって嘘をつきます。生成AIをナレッジとして使おうとするなら、自分の検索能力も試されるということですね」