「LINE Bank開業断念」がみずほ銀行とLINEの金融戦略に与えるインパクト

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撮影:Business Insider Japan

LINEとみずほフィナンシャルグループ(FG)は3月30日、両社が進めていた新銀行・LINE Bank開業に向けたプロジェクトの中止を正式に発表した。

もともと同プロジェクトは両社傘下のLINE Financialとみずほ銀行が2018年11月に銀行業参入のための共同出資による準備会社設立で合意したことから始まり、2019年5月に「LINE Bank設立準備会社」が設立されて現在に至る。

当初、2020年度内の事業開始を目指していたLINE Bankだが、コロナ禍などの事情もあり計画が遅延。

複数の報道によると、初期にシステム開発に参加した富士通は予算面で折り合いがつかず、韓国企業のパッケージソフトに乗り換えるなどの混乱があったという。

最初の延期では2021年2月開始を予定していたが、この期限が到来するタイミングで、関係各社はLINE Bank設立準備会社の経営体制変更と120億円の追加出資を発表し、開始目標を2022年度中へと変更して再スタートを切った。

今回のプロジェクト中止発表は、この期限となる2023年3月末の直前のタイミングであり、再延期はなく、設立準備会社はそのまま清算に向かう。

中止に至った理由…様変わりした競争環境

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撮影:小林優多郎

「『LINE』とリンクした、親しみやすく利用しやすい“スマホ銀行”の提供」をうたっていたLINE社。

しかし、スマホ決済やモバイルバンキングを取り巻く事情は、延期に次ぐ延期のなかで、2018年の発表当時から大きく様変わりしており、計画の修正を余儀なくされたことは想像に難くない。

振り返れば、もともとはLINEの巨大な月間ユーザー数(2022年12月末時点で9400万人以上)の基盤を武器に、みずほ銀行の金融ノウハウを加え、“今どき”のスマホUI・UXに慣れ親しんだ若年層を取り込んでいくことを目指していた。

しかし、今回のプロジェクト中止発表に至る4年半の間に、グループ戦略自体が大きく変化している。LINEはソフトバンク系のZホールディングスと経営統合し、2018年当時はスマホ決済の世界でトップランナーの1社だったLINE Payのコード決済市場は、実質的にPayPayに飲み込まれた。

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LINE Bank開業断念の主要な理由として挙げる2点。

出典:「LINE およびみずほフィナンシャルグループ、 新銀行開業に向けたプロジェクトの中止に関するお知らせ」より

各社連名のプレスリリースによると、中止に至った理由として挙げているのが「市場環境の変化」と「開発事業継続にはさらなる追加コストと時間が必要」の主に二つだ。みずほFGによると、両社首脳で話し合った結果、今回の最終判断に至ったという。

前述のようにシステム開発失敗が理由として連想されるが、「システム開発自体は多少の遅延はあったが目処は立っており、むしろそれ以外の対応に時間とコストが取られる点が懸案だった」(LINE/みずほFG)と述べている。

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4月1日から新しい役職に就任するZホールディングスの慎ジュンホ氏(新・代表取締役 GCPO)、出澤剛氏(新・代表取締役社長 CEO)、川邊健太郎氏(新・代表取締役会長)。

出典:Zホールディングス

例として挙がったのは「モバイルバンキングに求められるものの変化、安心安全に取り引きできるセキュリティ対策、個人情報保護、それに必要なサポートなど」(みずほFG)で、少なくとも両社の期待値に完成度を引き上げるにはまだ時間がかかるという判断につながったとする。

興味深いのは、ZHD側の発表内容の変化だ。

LINE出身の共同代表で、4月1日からはZホールディングス(ZHD)のCEOとなる出澤剛氏は、2022年後半の決算発表で、LINE Bankについて「UI・UXのさらなるブラッシュアップが必要で、場合によっては当初予定(2023年3月まで)より遅れる可能性がある」ことを示唆していた。が、実際にはそれとはやや異なる部分での検討事項があり、最終的に「再延期はない」と決めた、ということになる。

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