外資系企業の代表者らが「婚姻の平等」などを訴えた。
撮影:横山耕太郎
5月に広島で開催されるG7を前に、「同性婚の実現」など性的マイノリティの人権保護に関する議論や政策提言を目指す国際会議「Pride7サミット」が初開催された。
会議にはG7加盟国の駐日大使や、メキシコやタイ、ボツワナなど現地で活動する性的マイノリティ支援団体のほか、与野党の国会議員らが参加。
さらに、企業や経済団体も企業活動の面から同性婚実現やLGBT差別禁止法の必要性を訴え、存在感を示した。
LGBT法案をめぐっては、経団連の十倉雅和会長が3月20日、欧米と比較して議論が遅れていることについて「恥ずかしい」と発言。経済界からも、性的マイノリティの権利について踏み込んだ発言が増えている。
初解された国際会議「Pride7サミット」には、G7各国の大使らが参加した。
撮影:横山耕太郎
同性パートナーとの赴任に「困難」
EY Japanチェアパーソン兼CEOの貴田守亮氏。
撮影:横山耕太郎
「私が知る限り、日本ではただ1人のゲイを公表しているCEOです。
私たちが活動している日本は、ご存知のように、日本はG7諸国の中で唯一、同性婚を認めていない国です」
EY Japanチェアパーソン兼CEOの貴田守亮氏は、会議の場でそう発言した。
EYの従業員は全世界で約40万人。日本法人だけでも約1万人いる。ただ、貴田氏は高度な能力を持つEYの従業員が、日本以外の国で働くことを選んでいるとし「日本の労働市場にとっては損失だ」と指摘した。
「先日も外国人で日本企業の役員に就任した方が、同性パートナーとともに日本に赴任しようとしたものの、日本への移住や日本企業での就労に大きな困難を感じていました。
多くのヨーロッパ企業のエグゼクティブが、日本事業のために移住することに苦労している」(貴田氏)
EY Japanは2月、パナソニックホールディングスや富士通、三菱ケミカルグループなど日系企業らと共に、岸田首相らに結婚平等などを求める要望書を提出した。
「憲法改正ではなく法改正によって、日本では同性婚が可能になると言われている。日本のマイルストーンとして非常に重要なこの時期に、議論を進めてもらいたい」(貴田氏)
日本に来て「異なる扱い受けた」
日本コカ・コーラ人事本部長、パトリック・ジョーダン氏。
撮影:横山耕太郎
「日本で生活し働いているゲイとして、私は日本に来てから愛する人が男性であるというだけで、困難や異なる扱いを受けてきた」
日本コカ・コーラ人事本部長、パトリック・ジョーダン氏はそう発言した。
ジョーダン氏はオーストラリアで夫と合法的に結婚しているが、「日本に引っ越してきて、この平等な扱いを受けていないことに気づかされました」とした。
「夫は私の法的配偶者として認められていません。私は夫の入国管理局の書類には、(男性であるにも関わらず)『妻』となっています」
「このような差別を経験しなければよかったと思っています。
しかし、このような差別を経験することで、なぜ日本で(婚姻の)平等などの認識を持つことで、大きな利益を得ることができるのかより確信するようになりました」(ジョーダン氏)
その上で、コカ・コーラの顧客は性別などが多様であるからこそ、「多様な労働力を持つよう努力することは、私たちがサービスを提供する市場を反映するためだ」と説明した。
また「日本では、職場における性的マイノリティの保護を自分たちで作らなければならなかった」と説明。
日本コカ・コーラとボトリング会社など計6社は、全国2万人の社員らを対象に、就業規則を同性パートナーに対応したものに変更し、2022年にはLGBTQ +当事者へのサポート手引きとなるハンドブックを作成した。
「フィードバックは社内外ともに非常にポジティブ。より幸せを感じ、知ることのできる社員が増えただけです。
日本の人口の8~10%がLGBTコミュニティーのメンバーであると考えられていることも分かっています。私たちはこの問題に関してG7各国政府の指導者を全面的に信頼していますし、正しい意思を持っていると信じています」(ジョーダン氏)
経済同友会「人材獲得にマイナス」
オイシックス・ラ・大地社長の高島宏平氏。
撮影:横山耕太郎
またオイシックス・ラ・大地社長の高島宏平氏(経済同友会副代表幹事)は、「人材獲得」の観点から次のように訴えた。
「差別を禁止する法案さえなく、経済の観点からいうと、人材獲得にマイナスになる。日本が大好きなアジアの知人も日本での起業は断念した。
日本は環境のせいで人材獲得で負けてしまう。環境を整える必要がある」
経団連「イノベーションの鍵は多様性」
MS&ADインシュランスグループHD会長の柄澤康喜氏。
撮影:横山耕太郎
また経団連のダイバーシティ推進委員長で、MS&ADインシュランスグループHD会長の柄澤康喜氏は「経団連ではイノベーションの鍵を握るのは、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DE&I)だと考えている」と説明した。
「先行きが不透明な 厳しい事業環境の中で、日本経済が持続的に成長していくためには、多様な視点で未来を予測し、多様な価値観が融合して新たな時代を切り上げていくことが重要だと考えている」