新社会人は何よりも「時間」という資産を多く持っている。
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- 新社会人として世に出たばかりの若者こそ、誰よりも確実にFIREを達成できる可能性は高い。
- 若ければ家計もシンプルで、家計管理の習慣を身に着けやすい。さらに健康を維持することで、より有利にFIREを達成できるからだ。
- さらにキャリアを柔軟に変更できるし、投資も勉強しやすい。何よりも、時間という資産を多く持っているのが、新社会人だからだ。
昨今、巷を賑わせているFIRE(Financial Independence, Retire Early:経済的自立、早期退職)には、華やかなイメージがつきまとう。一山当てたデイトレーダーや成功した起業家など、ごく一握りの人だけが享受できる贅沢なライフスタイルと思われがちだ。しかし、その実態はまるで異なる。
FIREムーブメントで提唱される、本来のFIREというのは、論理に裏付けされた、かなり再現性の高いもの。つまり、運や才能に左右されることなく、どんな人でも努力次第で達成できる可能性があるものなのだ。
特に新社会人として、世に出たばかりの若者こそ、誰よりも確実にFIREを達成できる可能性は高い。その理由を5つ挙げていこう。
1. 貯蓄を始めやすい
FIREへの第一歩は、家計の把握だ。家計管理によって計画的に支出を行えるようになり、貯蓄の習慣を身につけることができる。FIREに限らず、資産形成で重視されるのは、収入の多寡ではなく貯蓄能力なのだ。
新社会人となれば、若いがゆえにまだ家族や子どもを養う必要がなく、家計もシンプルだろう。そんなときだからこそ、家計管理の習慣を身に付けるチャンスといえる。
また、どんなに給料が低くても、家計管理さえしていれば、貯蓄を始める糸口も見えてくるはずだ。そのように節約のノウハウを得ておけば、後ほど昇給しても散財にふけることもなくなるだろう。実際にFIREを達成した後でも、支出の管理は、欠かせないスキルとなる。
とりあえず貯蓄の目標とすべき額は、3〜6カ月分の生活費だ。それだけ用意しておけば、転職や休職などの状況に置かれてもたいてい乗り越えることができる。これを一般的に「生活防衛費」と呼ぶ。
2. 健康な状態を保ちやすい
次に、FIREの達成に欠かせないのが健康だ。健康で居続けることで人生を長く楽しむことができるし、何より医療費や保険料を節約できる。
基本的に若者は健康状態が良い場合が多い。本人たちは気づきにくいが、それこそ「かけがいのない宝」なのだ。
ある程度の年齢になって、その事実に気づいても、すでに身についた悪習慣は簡単に変えられない。早めに長期的な視点を持って健康に意識的になれば、より有利にFIREを達成できるだろう。
3. キャリアを柔軟に変更できる
さらに、FIREを達成するには当然ながらそれ相応の資金が必要になる。つまり、貯蓄能力や健康と同様に「稼ぐ力」も欠かせないのだ。
FIREに必要とされる額は、FIREした後に必要と思われる年間支出額の25倍だ。例えば1年間を200万円で暮らせる人ならば、FIREするのに最低5000万円は必要になる。
目標とする金額を達成するために、新たなキャリアやさらなる報酬を求めて転職をするなら、早いに越したことはない。また、「これぞ」というものが見つかったら、それを極めるにも時間がより多くあった方が有利だろう。
4. 投資で成功しやすい
FIREで、一番の肝になるのが投資だ。節約や収入によって構築した資産を運用することで、経済的に自立した状態を作ることができる。
特に投資は、少額であっても若いうちから始めておいた方がいい。時間はかかるものの複利の力で、確実に大きなリターンを得られるからだ。また、投資を理解するにも、時間というのは偉大な教師となり得る。
ちなみに、FIREを実行するには「4%ルール」を理解しておくことが必要だ。これは、米国株だと一般的な年間成長率は7%で、そこから一般的な年間インフレ率3%を差し引くと、残りが4%になるというもの。つまり投資額の4%までなら、毎年引き出しても資金が減らないという理論だ。
先述の5000万円なら、その4%は200万円。年間200万円の生活費で済む人なら、5000万円の資金でFIREできる根拠がここにある(便宜上、税金についてはここで考慮に入れていない)。
なお、投資を始めるならまずは先述の生活防衛資金の構築を優先させたい。生活防衛資金以上の貯金のことを「余剰資金」と呼ぶ。多少なりともリスクが伴う投資は、余剰資金で行うことがセオリーだ。
5. 何より時間を味方にできる
上記4つの項目の説明にあたって、何度も言及しているのが「時間」だ。FIREを達成するには、時間こそが最も重要な鍵となる。
FIREムーブメントで提唱されているFIREとは、一朝一夕で手に入れられるものではない。10年、15年、20年とかけて達成する、一大プロジェクトなのだ。
それだけの時間と努力をかければ、多くの人がFIREを達成できる可能性は高い。しかし、40歳になってからそれに気づいても、経済的自立を確立した頃には、普通に定年退職になっている(それも悪くはないが)。
つまり経済的自立と早期退職を誰よりも素早く達成しやすい存在は、新社会人なのだ。
まとめ
基本的にFIREというライフスタイルは、一般的にイメージされているほど、華やかなものではない。質素倹約に努めながらも経済的自立を確立し、採算度外視してでも本当にやりたいことに注力するという生き方である。
中にはイメージどおりの絢爛豪華なFIREを達成した人もいるだろう。もちろん、それを望んで、そうしたのであれば素晴らしいことだ。
しかし、FIREで目指すべきは見た目の豊かさではない。給料という呪縛から解き放たれて初めてもたらされる、心の豊かさなのである。