年明けに大量解雇を発表したばかりのグーグル(Google)が新たなコスト削減策を社内向けに発表した。画像は同社のサンダー・ピチャイ最高経営責任者(CEO)。
REUTERS/Brandon Wade
グーグル(Google)は社内の経営資源を人工知能(AI)分野に集中させる体質改善を期して、一連のコスト削減策を社内向けに発表した。
3月31日付の従業員向けメールによれば、社内カフェテリアの営業時間を短縮し、マイクロキッチンと呼ばれる軽食コーナーの一部を統廃合するなど、その充実ぶりで知られる福利厚生のあり方を見直す模様だ。
グーグルは一方で「サーバーおよびデータセンターの能力を最大限に引き出す」ことでコスト削減を図るとし、インフラを最大の投資分野の一つに挙げた。AIモデルの学習向けに「よりスケーラブルで効率的な手法」を模索する計画という。
Insiderが今回入手した社内メールには、ルース・ポラット最高財務責任者(CFO)や、シニアバイスプレジデント(検索事業担当)のプラバカール・ラガバン氏らの署名が確認できる。
経営陣は文面で、今回のコスト削減策の中には従業員に直接的な影響の及ばないものもある一方で、従業員が日々利用する社内サービスなどに影響してくるものもあると説明。
例えば、ハイブリッドワークへの移行を背景に、カフェやマイクロキッチン、その他社内施設については「従業員の利用実態に合わせて」サービス内容を調整する。
一部のカフェは利用者が少ない日を休業とする。フィットネスレッスンやシャトルバスのスケジュールも利用状況に応じて調整される。
従業員が日々利用するものの例としては他に、従業員個々が使うデバイスの(交換など)更新頻度も見直すという。
「当社くらい規模の大きな企業においては、機器への出費も大変大きくなります。だからこそ、そこを見直すことで有意な経費削減を実現できるのです」
また、社内メールには、採用のペースを引き続き抑えつつ、より優先度の高い取り組みへの人材再配置を進めているとの記載もある。
グーグルは経営の引き締めと同時に、AI分野に経営資源を集中投下するための社内変革を行っている真っ最中だ。
1月には1万2000人のレイオフに着手。その理由として、成長促進に向けた採用の結果として余剰が生じたことと、その前提となった今日とは想定の「異なる経済実態」を挙げた。
グーグルの広報担当にコメントを求めたが拒否された。
以下に社内向けメールの全文を紹介しよう。
グーグラー(グーグル従業員を指す)の皆さん
当社は今年、重要な達成目標および主要な成果指標(OKR)の一つに、速度と効率の改善を通じて場当たり的でない持続可能なコスト低減を実現することを掲げ、あらゆるプロダクトエリア(製品部門)とファンクション(任務)がそれに取り組んでいます。
従業員の皆さんから、もっと詳しく知りたいとの要望がありましたので、以下で詳細をお伝えします。
今回の(コスト低減の)取り組みは、当社の近年の成長状況、足元の厳しい経済環境、さらにAIを筆頭とするテクノロジー革新に向け眼前に広がる途方もない投資機会を踏まえた時に、決定的に重要な意味を持ちます。
私たちはかつて同じような状況に直面したことがあります。
2008年を振り返ると、当時は売上高を上回るペースでコストが膨れ上がり、私たちは設備機器の稼働率を上げ、不動産投資を絞り込み、出張・経費(T&E)を引き締め、カフェ、マイクロキッチン、社用携帯の使用を減らし、ハイブリッド車購入時の補助を廃止して、事態に対応したのでした。
そして、それらはその場しのぎの対応ではなく、以降も当社は(福利厚生)プログラムやサービスの利用状況データに基づいて、リバランスを続けてきました。
社内変革のアプローチ
会社として最も難しい決断を迫られたのは従業員数の削減で、国によってはまだその実施の真っ最中です。
他の大きな変革や節減の取り組みは、ほとんどの皆さんの視界には入ってこないと思いますが、それでもコストに大きく響くものばかりです。AIコンピューティング向けのマシン稼働率改善を実現するイノベーションや、技術スタックの断片化解消などがそれに当たります。いずれも大がかりな、複数年にわたる取り組みになります。
いくつか具体例を挙げましょう。
- コンピューティングのワークロード(負荷)をいま以上に効率的に分散させ、サーバーおよびデータセンターの能力を最大限に引き出す取り組みを進めています。すでに成果は可視化されてきており、今後もさらなる効率化の進展が想定されます。インフラは当社にとって最大の投資分野の一つであり、その方針とも合致するものです。
- 高効率で徹底的に最適化されたインフラとソフトウェアを機械学習に適用することで、モデルをトレーニングし、ホストするための、よりスケーラブルで効率的な方法を発見し続けることができます。
- ソフトウェアから設備機器、専門サービスに至るまで、外部調達の改善にも大幅なコスト節減を期待できることがデータから明らかになっています。その一環として、調達ハブの見直しを先行して進めており、すでに交渉を済ませて魅力的な価格での提供が約束されているサプライヤーを、社内の各チームが見つけ出せるようになっています。
- 変化を生み出す変革は他にもあります。優先順位の高い取り組みにチームをデプロイし直したり、採用ペースの抑制を継続したり、出張・経費の支出を引き締めたり、(2022年7月に発表した業務効率化の取り組みである)「シンプリシティ・スプリント(Simplicity Sprint)から得られた数多くのサジェスチョンを実践に移し、優先順位付けやトレーニング、ローンチ、事業化プロセス、社内ツール、ミーティングスペースなどについて、改革の実施を促したり加速したりといった取り組みがそれです。
プログラムおよびサービスの変更
また、グーグル従業員が仕事などで利用するサービスに直接的に影響をおよぼすコスト節減策も想定していることを、前もってお伝えしておきたいと思います。
当社は従業員向けの手当、福利厚生、オフィスアメニティについて、業界をリードする高いハードルを設定しており、今後もそれを維持する方針です。
ただし、当社グーグルの今日のあり方に合わせて進化させるべきプログラムがあるのも事実です。以下のような変革は、ただコストを削減するだけにとどまらず、フードロスを減らし、環境に良い影響をもたらすものと考えます。
- 新たなハイブリッド勤務に対応するよう、オフィスサービスの見直しを進めています。カフェ、マイクロキッチン、その他の施設は利用実態に応じて運営のあり方を調整します。もちろん、必要な判断はデータに基づいて行われます。例えば、カフェで利用者数が著しく少ない日があれば、その日は休業にして、近隣でよく利用されている店舗をオプションに組み込んで使ってもらうようにします。同様に、得られる価値よりも無駄のほうが多いと見なされるオフィス物件でのマイクロキッチンは統合していきます。また、フィットネスレッスンやシャトルバスのスケジュールも利用状況に応じて変更する予定です。
- 従業員への業務用機器の支給についても検討しました。デバイスは長寿命化し、性能と信頼性も格段に向上していることから、それぞれの職務を遂行するのに何が必要とされるのかを精査した上で、会社から支給するデバイスの種類と交換の頻度を見直します。当社くらい規模の大きな企業においては、機器への出費も大変大きくなります。だからこそ、そこを見直すことで有意な経費削減を実現できるのです。
2008年に行ったのと同じように、私たちはデータに従って、想定通りの効率が実現されていない、あるいは当社の企業規模ではスケールメリットを享受できないような支出分野を特定していきます。
今後、業務で利用するサービスに直接影響を与えるような変更がある場合、逐一従業員向けの告知を行います。
当社には大きなチャンスがあります。達成目標および主要な成果指標(OKR)が明確になっており、その達成のために自由に使える相当量のリソースを私たちは持っています。ただし、そのリソースは無限ではありません。その有効利用を徹底することで、大きな違いが生まれるのです。
すべてのプロダクトエリアおよびファンクションのリーダーを代表して
ジェン(・フィッツパトリック、シニアバイスプレジデント)、フィリップ(・シンドラー最高事業責任者)、プラバカール(・ラガバン、シニアバイスプレジデント)、ルース(・ポラット最高財務責任者)、トーマス(OKRの共同所有者)の署名