「プロンプト・エンジニア」は、チャットボットの回答をテストして改善するのが仕事だ。
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- ChatGPTのような生成AIツールの普及に伴い「プロンプト・エンジニア」という仕事のニーズが高まっている。
- 「プロンプト・エンジニア」は、AIチャットボットを訓練して、よりよい回答ができるようにする。
- この仕事は、33万5000ドルもの年収が得られることもあり、その上、必ずしもテック系の学位が必要ではない。
給与が高いことで知られるテック業界に新たな仕事が加わった。しかもこの仕事にはSTEMの学位が求められているわけではない。
ChatGPTのような生成AIツールの普及に伴い「プロンプト・エンジニア」という仕事のニーズが高まっている。これは、AIチャットボットへの質問文(プロンプト)を作成し、その回答をテストして改善する仕事のことだ。中には年収33万5000ドル(約4500万円)と高給で、テック系の学位が必要ないポジションもある。
ブルームバーグが報じたところによると、AIの安全性と研究を行うAnthropicは現在「プロンプト・エンジニア兼ライブラリアン(文献管理責任者)」を募集しており、給与は17万5000ドル(約2300万円)から33万5000ドルを提示している。
同社の採用ページによると、このポジションは「さまざまなタスクを達成するための高品質なプロンプトまたはプロンプトチェーンのライブラリーを構築し、そこからユーザーがニーズに合ったものを検索できるような簡単なガイドをつけること」や「プロンプト・エンジニアの技術を顧客に教えるチュートリアルやインタラクティブツール一式を構築すること」が求められている。
基本的なプログラミングスキルがあり、大規模言語モデルに「高度に」精通した求職者が適任ではあるものの、「すべての条件を満たしているとは思えない場合」でも応募してほしいと同社は述べている。
ChatGPTを開発したOpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOは、プロンプト・エンジニアの必要性を訴えており、2023年2月には「チャットボットのペルソナのために本当にすばらしいプロンプトを書けるということは、驚くほど高レバレッジなスキルだ」とツイートしている。
文章の自動作成支援ツール、コピーエーアイ(Copy.ai)のプロンプト・エンジニアであるアンナ・バーンスタイン(Anna Bernstein)は、AIツールの仕事をする前は、フリーランスのライターや歴史研究アシスタントをしていた。
「この仕事の大好きなところは、馬鹿げたプロンプトを思いつき、それが実際に機能するのを見ることができる『マッドサイエンティスト』的なところ」とバーンスタインはInsiderに語っている。
「私は詩人でもあるので、この仕事は、言語に対する私の執着心にも影響を与えている。私の文学的バックグラウンドと分析的思考が交わる、実に不思議な交差点になっている」
プロンプト・エンジニアの市場は拡大している。2022年6月に開設されたプロンプト・マーケットプレイス「PromptBase」では、プロンプト・エンジニアを採用したり、プロンプトを販売したりすることができる。
プロンプト・エンジニアの仕事は、技術的なバックグラウンドを持たない人にも開かれているものの、給与が特に高いポジションのほとんどは、やはりテクノロジーに特化した分野で豊富な経験があり、高度な教育を受けたことを採用条件としていると、採用担当者はブルームバーグに語っている。
イギリスとアイルランドを拠点とする人材紹介会社Haysを運営するマーク・スタンデン(Mark Standen)は「給与は年間4万ポンド(約660万円)からのスタートだが、当社のデータベースには20万ポンド(約3280万円)から30万ポンド(約4900万円)を求める求職者がいる」とブルームバーグに語っている。
「専門性の高いプロンプト・エンジニアは、報酬を指定できるのだ」
プロンプト・エンジニアの市場は急速に拡大しているが、長期的には必ずしも人気の高い仕事とは言えなくなるかもしれないと警告する声もある。
「長期的に見ると『プロンプト・エンジニアリング』は重要なことではなくなり、プロンプト・エンジニアの仕事に未来はないと考えている」とペンシルベニア大学ウォートン・スクールのイーサン・モリック(Ethan Mollick)教授は2月にツイートしている。
ケンブリッジ大学で機械学習の研究ディレクターを務めるエイドリアン・ウェラー(Adrian Weller)も、プロンプトを通じて生成AIツールと対話できることは「価値が高い」としながらも、「それが長く続くとは言い切れない」とブルームバーグに述べている。
「プロンプト・エンジニアリングの現状にあまりこだわらない方がいい。ものすごい速さで進化しているのだから」