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- シリコンバレー銀行の破綻で銀行への信頼が揺らいだ投資家は、マネー・マーケット・ファンド(MMF)に現金を注ぎ込んでいる。
- MMFによって運用される資金の総額は、3月29日に5兆2000億ドルと過去最高を記録した。
- ここでは、MMFとは何か、そしてなぜ人気が急上昇しているのかについて説明する。
2008年の金融危機以来となる大規模な銀行破綻が発生し、それに恐怖を感じた人々は資金をマネー・マーケット・ファンド(money-market funds:MMF)に移している。
Investment Company Institute(ICI)が発表したデータによると、2023年3月29日までのわずか3週間で、3040億ドル(約40兆円)がMMFに流入し、それらのファンドによって運用される資金の総額は5兆2000億ドル(約690兆円)と過去最高を更新した。
この資金移動は、2023年3月上旬のシリコンバレー銀行(SVB)とシグネチャー銀行(Signature Bank)の破綻がきっかけとなって始まった。預金者は銀行の安全性に不安を覚え、小規模で脆弱な金融機関に預けていた資金を引き出し始めたのだ。
ウォール街の大企業はこの資金移動の恩恵を受け、ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)に520億ドル(約6兆9000億円)、JPモルガン(JPMorgan)に460億ドル(約6兆1000億円)、そしてフィデリティ(Fidelity)に370億ドル(約4兆9000億円)が流れた。
突然人気の高まったMMFとは一体どのようなものなのか、なぜ預金者にとって銀行の代わりに資金を預ける魅力的な場所になったのか、その理由を説明する。
MMFとは何か?
MMFは、投資会社や金融サービス会社が運用する投資信託のことをいう。短期金融市場(money-market )において米国債やレポ取引などの債券から得られる利子によって、安定したリターンを得ることができる低リスクの投資商品だ。
MMFを選ぶ際には、プラスの利回りで経費率が低いものを探すことになる。経費率とは、運用コストとして投資家に課される固定費を言う。
金融サービス会社のBankrateによると、3月31日現在、最も高い利回りを提供しているのは、UFB Direct、CFG Community Bank、CIT Bankが運用するMMFだ。
なぜMMFに投資するのか
資金がMMFに向かったのは、小規模の銀行までSVBと同じような運命をたどるのではないかという懸念によるところが大きい。投資家たちは、より安全だと思われる場所に資金をすばやく移動させたのだ。
またアメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、12カ月前にはほぼゼロだった基準金利を5%にまで引き上げ、借入コストは1980年代以降で最も上昇し、短期金融市場の利回りも上昇した。そのため預金金利がなかなか上がらなかった銀行に現金を預けるよりも、MMFに投資する方が高いリターンが得られるようになっている。
米国債1年債の利回りは2021年末から約12倍に急騰し、現在は4.66%程度となっている。
「預金者は、MMFで比較的高い利回りを得ることができ、かつリスクも低いことに気が付いたのだろう。銀行とは異なり、MMFの資産はFRBの引き締めサイクルにおける金利リスクを被る可能性ははるかに低い」とバークレイズ(Barclays)のストラテジスト、ジョセフ・アベイト(Joseph Abate)はブルームバーグに語っている。
MMFへの資金流入は、経済にとってどのような意味を持つのか
MMFが銀行預金よりも貯蓄者にとって魅力的な投資先であり続けるなら、小規模銀行の預金が引き出される可能性がある。
「銀行は大量に預金を失っている。しかし彼らは何も分かっていないようで、利回り0%を宣伝し続けている!そして今、我々は貸し渋りの兆候を見ている。クレジット・クランチ(信用収縮)が起きているのだろう」と業界の有力者、ジム・ビアンコ(Jim Bianco)は4月3日のツイートで警告した。
ブルームバーグによると、銀行預金からの流出額は3月15日までに17兆5000億ドル(約2310兆円)に増え、小規模銀行では5兆4000億ドル(約713兆円)に達している。