セブンイレブンジャパンの入社式の様子。
提供:セブンイレブン
新入社員におくられる大企業の「祝辞」は、その自社がビジネス環境をどう捉えているのかを端的に表すトップメッセージとも言える。
4月1日から3日にかけて、大手コンビニ3社でも入社式が開かれた。その祝辞で語られた言葉からは、コンビニ各社の「いま」が垣間見える。
3社に共通する「新しい価値観の打ち出し」
3社に共通するのは、「新しい時代に対応するために新しい価値観」を打ち出さなければならないという変化への対応と改革志向だ。
背景には、ウクライナ戦争による世界情勢の混乱、円安、エネルギー価格上昇などによる「値上げ」に踏み切らざるを得ない各社の事情がある。
2023年2月期の通期業績予想で営業利益5000億円(連結)を見込み、業界最大手セブンイレブンを擁するセブン&アイ・ホールディングスは、セブンに関連するステークホルダーとの信頼関係を守ることの大切さを説いた。
ファミリーマートは、世界に2万4000店舗を展開し、スタッフが全国に20万人いるなど、「規模の大きさ」に言及し、社員が巨大なネットワークの一員である自覚を持つことを求めた。
ローソンは、コロナ禍で「ローソン大変革実行委員会」を立ち上げ、「新しいローソン」へと意気込む。
各社の祝辞のポイントをまとめた。
セブン「ステークホルダーに信頼される誠実な企業でありたい」
業界最大手に君臨するセブンイレブン。
撮影:今村拓馬
セブンイレブンを擁するセブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、3月10日に死去した伊藤雅俊名誉会長について言及し、「お客様をはじめとする『すべてのステークホルダーに信頼される誠実な企業でありたい』という創業の精神」の大切さを説いた。
そして、「日本国内では以前より、社会構造の変化が進行しています。私たちはそのようなお客様の『変化』に対応することで、ステークホルダーの皆様の期待にお応えし、企業として力強く成長し続けなければなりません」と競争環境の変化に言及しながら、「世の中は絶えず変化し、そのスピードは速くなる一方ですが、グループの会社同士が連携することで様々な挑戦が可能になります」とグループ間のシナジーを強調した。
ファミマ「世界情勢とビジネスは密接に結びついている」
業界2位のファミマは2021年に「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」と広告を打った。
撮影:今村拓馬
ファミリーマートの細見研介社長は、「ウクライナ戦争により、日本では円安、原材料やエネルギー価格、電気料金の暴騰など厳しい環境変化に見舞われています」「ファミチキはタイから輸入していますし、コーヒー豆はブラジルやグアテマラから輸入しています」と世界情勢とコンビニビジネスが密接に結びついていることに言及した。
そして、「年間で約6兆円ものお金がファミリーマートに流入してきます。 店舗で活躍してくれているスタッフさんは全国で約20万人。1日の来店客数は約1500万人」「物流ネットワークは、(略)最新のAIの活用も進めることにより最先端のロジステックス戦略が推進」と、ファミリーマートのビジネス規模と、テクノロジー投資を具体的に紹介。デジタル活用が業界で評価されているとした上で、「スマホ世代の皆さんの知恵の積極的な活用が成功の鍵」だと呼びかけた。
ローソン「コロナ禍の3年間でデジタル技術は目覚ましく進化した」
ローソンはポストコロナ時代の「新しいローソン」など改革姿勢を前面に打ち出している。
撮影:今村拓馬
ローソンの竹増貞信社長は、コロナ禍がビジネス面で大きな影響を与えたと言及しながら、2023年を「ポストコロナとなる2023年度」と表現。
「『全てはお客様のためにある』という原点に立ちかえって、全ての商品・サービス・グループ事業を見直そうと考え、ローソングループ大変革実行委員会を立ち上げました」と2020年9月に立ち上げたプロジェクトとコロナ禍の3年間の改革について言及した。
また「コロナ禍の3年間でデジタル技術は目覚ましく進化」したことに触れ、「リアルの良さを一層高めるためにデジタル技術を大いに活用して、より新しい便利をお客様にご提案していく」とした。
ローソンは3月、愛知県でローソンアプリを活用してコンビニコーヒーを月額(サブスクリプション)で提供する実証も発表しており、こうした取り組みも、祝辞にある「より新しい便利」の1つと言える。