イオンは2023年夏から、AIやロボットなどの技術を駆使した次世代ネットスーパー「Green Beans(グリーンビーンズ)」を開始する。
「グリーンビーンズ」は、中期経営計画で「デジタルシフトの加速と進化」を成長戦略の一つに掲げるイオンの目玉施策の一つ。イギリスのネットスーパー専業企業Ocado(オカド)の子会社オカドソリューションズと提携してサービスを構築している。
イオンとイオンのデジタルシフトを担う子会社イオンネクストが4日、都内で会見を開き、その全貌を明かした。
ロボットが6分で50品目をピッキング
次世代ネットスーパー「Green Beans」の発表会。
撮影:土屋咲花
グリーンビーンズは、大型物流センターから宅配・配送サービスで食料品や日用品を届けるネットスーパーの新ブランド。
イオンは2019年、イギリスのオカドソリューションズとパートナーシップを結び、同社の技術を駆使したネットスーパー専用の物流拠点「イオンネクスト誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)」を千葉県千葉市緑区誉田町に建設した。この施設を拠点に、今夏から東京23区の一部と千葉県千葉市、神奈川県川崎市を対象にサービスを開始する計画だ。
イオンネクスト誉田CFC(顧客フルフィルメントセンター)。
イオンネクスト提供
物流拠点では、オカド社が開発するロボットが24時間稼働し、商品をピッキングする。
ロボットは倉庫内を縦横に動き、6分間に50品目もの商品をピッキングできる。既存のイオンネットスーパーでは店舗で従業員が同じ作業を担っているが、誉田CFCではロボットの導入により作業効率は10倍になるという。
品揃えは開業から1年で既存のイオンネットスーパーの倍近い約5万点を予定する。このうち半数は食品、残りはベビー用品やペット用品、医薬品など日用品だ。まとめ買いの需要に対応した大容量品やオーガニック、ビーガン商品など、実店舗にはない豊富な選択肢を取り揃える。
誉田CFCでピッキングを行うオカド社のロボット。
撮影:土屋咲花
ロボット稼働の様子。
イオンネクスト提供
1時間単位で配達指定、鮮度保証も
「多忙な都市部のお客様のためにサービス構築を進めてきました。消費者のオンライン購入のあり方を首都圏で変えることを目指すブランドです。ブランドコンセプトの『買い物を変える、毎日を変える。』のように、買い物を楽しく充実した時間に変えていきたい」
イオンネクストのバラット・ルパー二社長は、グリーンビーンズの狙いをこう語った。
グリーンビーンズはネットスーパーの課題として指摘される「生鮮食品は新鮮なものを選びたい」というニーズや配送枠不足、欠品リスクなどに対応。ストレスの少ない買い物体験を提供する。
一つは鮮度保証サービスだ。収穫から包装、温度管理までの一連の工程を工夫し、葉物野菜を中心とした生鮮食品について、配達後1週間の鮮度を保証するという。
また、オンラインだからこそ実現できる機能として「スマートカート機能」を搭載。2回目以降の買い物は、購入履歴に基づいてAIがわずか数秒の間に商品をカートに自動で追加する。
イオンネクストの太田正道副社長は
「従来の買い物と考え方が180度違い、商品が入った状態からスタートします。 お客様は、そこから数を増やしたり、あるいは『これは今回はいらないな、外してみよう』 という形で買い物ができます」
と説明する。
買い物を繰り返すごとにデータが蓄積され、精度が高まっていくという。
「精度の高いご提案ができると、毎日の買い物はわずか15秒で済ませることも可能になる。そういった世界観をお客様にご提案したい」(太田副社長)
配達もきめ細かく対応する。朝7時から夜11時まで、1時間単位で配達枠を設ける。注文は配達希望日の2週間前から可能だ。
配送は子会社の「イオンネクストデリバリー」が担う。トラックドライバーの時間外労働の上限規制による「2024年問題」が控える中、内製化によって効率化を図るほか、顧客との唯一の接点を自社で担うことでブランドイメージの構築につなげる。
配送を内製化し、顧客接点の創出やブランドイメージの向上につなげる。
撮影:土屋咲花
既存ネットスーパーが行き届かないエリアを網羅
グリーンビーンズは、都心に住む若い世代が主なターゲットだ。
イオンは既に「イオンネットスーパー」を全国で展開する。ネットで注文した商品を近隣店舗でピッキングし、自宅や指定場所まで配送する「店舗出荷型」で、2023年2月時点で全国262店舗が対応している。
たが、店舗ありきのイオンネットスーパーは、都心では対応店舗が少なく、サービスが行き届かずにいた。グリーンビーンズはそこをカバーしていく。
イオンの吉田昭夫社長は
「東京23区内に店舗出荷型の店は極めて少なく、ほぼカバーできていません。一方、買い物に不便を感じている方が非常に多いエリアだと認識しています」
と話す。
誉田CFCは、こうした実店舗が少ない地域を含む700万世帯への物流をカバーする一大拠点となる。さらに、2026年には、八王子市にも新しいCFCの開設が予定されているほか、既に3カ所目の建設も検討中だという。
ネットスーパーは大手の設備投資が進む
経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、食品のEC化率は3.77%。書籍や音楽(46.2%)、生活家電やAV機器(38.13%)など他品目と比較して低い水準にある。ただ、コロナ禍に突入した2020年には市場規模が2割成長するなど、大手による設備投資が進んでいる。
「楽天西友ネットスーパー」は2023年3月、同グループ最大規模となるネットスーパー専用物流拠点を本格稼働させた。セブン&アイ・ホールディングスも、2001年から展開する「イトーヨーカドーネットスーパー」の新たな物流拠点を2023年に横浜市に開設予定だ。
「2025年以降、労働人口の半分がミレニアル世代に入れ替わっていきます。いわゆるデジタルネイティブの世代が消費の中心になっていく中で、オンラインチャネルのマーケットでアプローチすることは、大きな事業機会になっていくのではないかと思っています」(イオン・吉田社長)