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- バンク・オブ・アメリカによると、景気後退が間近に迫っていることを示す3つのシグナルがあるという。
- 同行は150年にわたる景気後退の歴史を調べ、2つのシグナルがすでに点滅していると警告している。
- 「株式市場はリスクを無視している」と同行は述べている。
バンク・オブ・アメリカ(Bank of America、バンカメ)は、1800年代後半以降にアメリカで発生した30回の景気後退を分析した結果、景気後退が始まる直前に点滅する3つの明確なシグナルがあることを明らかにした。この3つのシグナルのうち2つは、現在すでに点滅しており、株式市場に悲惨な結果をもたらす可能性があるという。
「株式市場はリスクを無視している」と同行は述べ、リスクの高い消費関連の景気循環株の運用成績がここ数カ月、ディフェンシブ株を上回っていることを強調した。ディフェンシブ株は通常、景気後退局面で運用成績が高まるが、その局面が目前に迫っている今、投資家は目を覚ますべきかもしれない。
投資家が注視すべき景気後退の到来を示すシグナルとして、バンカメは以下の3つを挙げた。
1. イールドカーブのスティープ化(シグナル点滅中)
「イールドカーブが逆転した後のスティープ化は、株価の大幅な下落に先行する傾向がある。イールドカーブがスティープ化したら、守りに入るといい」とバンカメは述べている。
イールドカーブ(利回り曲線)は、米国債の短期金利と長期金利の差を示している。現在、短期金利の方が長期金利よりも高い「逆イールド」の状態となっているが、これは普通の状態ではない。通常、資金を長期間貸し出す方がより多くの利息が得られるはずだ。
バンカメによると、逆イールドは、景気後退が迫っていることを示す確かなシグナルだという。1921年以来、10回の逆イールドが見られ、そのうち8回は、不況の弱気相場に先行している。その後イールドカーブがスティープ化し、反転が解除されると、景気後退が数カ月後に迫っていることを示すサインとなる。
米国債の2年物と10年物の金利差は逆イールドを示していたが、ピーク時のマイナス1.07%からマイナス0.54%までスティープ化(傾きがさらに急になること)している。
青いラインが米国債の2年物と10年物の金利差、水色のラインが不況を示している。
Bank of America
2. 貸出基準の厳格化(シグナル点滅中)
「アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)は、1960年代から銀行の貸出態度を追跡し『シニア・ローン・オフィサー・サーベイ』として発表している。これに警告のサインが示されている。景気後退につながったり、景気後退が同時に発生したりすることなく、貸出基準がこれほど厳しくなったことはない。貸出基準は通常、株価が下落し、買い時になる約1年前にマイナスに転じる。2022年12月には新型コロナのパンデミック以来、初めて貸出基準が引き締められ、それ以降、状況は悪化している」とバンカメは述べている。
また、アメリカの銀行システムがシリコンバレー銀行(Silicon Valley Bank)の破綻の影響を受け続けているため、貸出基準はさらに厳しくなる可能性がある。
青いラインが貸出基準、灰色のラインが不況を示している。
Bank of America
3. FRBが利下げを余儀なくされる(シグナルはまだ出ていない)
「緩和政策を開始するために利下げを何度か行うことは、明らかに弱気相場を示すシグナルだ。後退気味の弱気相場では、FRBの最初の利下げ後に25%以上の下げ幅が生じるのが一般的だ」とバンカメは述べ、投資家に「最初のFRB利下げで資産を現金化する」ことを推奨している。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の「FedWatch Tool」は、金利先物市場のデータを基に市場の利上げ織り込み度を算出するツールだ。これによると投資家は、利上げは5月にあと1回行われ、6月は見送り、7月には利下げに転じると見込んでいることが示されている。市場は現在、年内に約1%の利下げを織り込んでいる。
青いラインが政策金利、水色のラインが不況を示している。
Bank of America