ジェネレーティブAI(生成AI)は、幅広い仕事を自動化する可能性があると、いくつかの研究が報告している。
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- ジェネレーティブAI(生成AI)は、幅広い仕事を自動化する可能性があると、いくつかの研究が報告している。
- しかし、製造業や建設業など、ブルーカラー職種への影響は最小限に留まることをデータは示している。
- 一部の業界は、なぜ他の業界よりもAI技術の影響を受けやすいのか、その理由について解説する。
人工知能の急速な進歩が、仕事の自動化をめぐる従業員の懸念をかき立てている。
ジェネレーティブAI(生成AI)は、ユーザーのプロンプトに応じて、テキストその他のコンテンツを生成する人工知能の一種であり、OpenAIの対話型AI「ChatGPT」の発表から数カ月で爆発的な人気を博している。一部の企業はすでに、コンテンツ制作の仕事に対話型AIを利用している。
ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)の最新報告書によると、この技術は労働市場に大きなディスラプション(破壊的イノベーション)をもたらし、世界全体のフルタイム雇用のうち18%(約3億人分)に影響を及ぼす可能性があるという。
また、OpenAIとペンシルベニア大学による最新研究は、ChatGPTが、アメリカにおける仕事の約80%に影響を及ぼす可能性があることを明らかにしている。この研究によると、最も大きな打撃を受ける可能性があるのはホワイトカラーの職種だという。
これらの研究は、AI技術の進歩が労働生産性を向上させ、雇用を創出する可能性もあると予測する一方で、一部の業界は他の業界より大きな影響を受けるとみている。
法律サービス
複数の研究によると、法律業界は、自動化の影響を最も受ける業界のひとつに挙がっている。
プリンストン大学、ペンシルベニア大学、ニューヨーク大学の研究者が3月に発表した研究では、法律業界はChatGPTのようなAI技術の影響を受ける可能性が最も高いと推定している。研究チームは、特定の作業タスクとAIの機能をマッチングさせたベンチマークを用いて結果を導き出した。
研究著者の1人で、ペンシルベニア大学ウォートン校で経営学のアシスタント・プロフェッサー(助教)を務めるマナブ・ラージ(Manav Raj)は、こうした結果が出た理由について、法律業界がパラリーガル(法律事務員)など、すでに自動化にさらされている比較的少数の職種で構成されているためだとInsiderに語っている。
ゴールドマン・サックスの報告書も、欧米の業務タスクに関するデータの分析に基づいて、AI技術に影響を受けるリスクが特に高いのは法律関連の職種だとしている。
大学の教育・研究
教育は、ChatGPTの影響を最初に目の当たりにした分野のひとつだ。教育機関、特に高等教育機関は、この技術がもたらす結果への対処を急いでいる。
プリンストン大学が主導し、先述したラージのほか、エド・フェルテン(Ed Felten)とロバート・シーマンズ(Robert Seamans)が執筆した研究では、大規模言語モデル(LLM)の影響を強く受ける職種として、高等教育の教員を挙げている。
影響を受けると予想される職業のランキングでは、さまざまな科目の高等教育教員が、トップ10のうち8つを占めている。短期大学は、影響を受ける業界の17位にランクされた。ラージによるとこれは、対話型AIが、パターン特定やリポート作成といった研究タスクに非常に優れている傾向があるためだという。
また、ジョセフ・ブリッグス(Joseph Briggs)とデベシュ・コドナニ(Devesh Kodnani)が執筆したゴールドマン・サックスの調査報告書では、欧米の教育指導と図書館サービスにおける作業タスクの30%近くが自動化される可能性があると推定している。
事務
ゴールドマン・サックスの調査は、事務職が特に自動化の影響を受けやすいことを明らかにした。この部門における作業タスクの約46%が自動化される可能性があると推定されている。
ペンシルベニア大学のラージも、事務のような「ホワイトカラー職種の比率が比較的高い」業界は、高度なAI技術の影響を「より多く受ける傾向がみられる」と述べている。とはいえ、AIが労働市場に及ぼす影響は「多面的」であり、人間の仕事を補完するケースもある、とラージは指摘している。
金融
銀行は、すでにAI技術を日常の業務に取り入れている。
ケンブリッジ大学オルタナティブ金融センターと世界経済フォーラムによると、半数以上の銀行が、利益率を上げるためにAI技術を利用していると答えている。また、OpenAIとペンシルベニア大学が主導した研究では、金融系の計量アナリスト(クオンツ)が、高度なAI技術の影響を強く受ける職種のひとつとされている。
IT系
ChatGPTのような対話型AIは、コードを書く能力に長けている。これらの新しいプログラムは、数字を分析してコードを作成することができ、そのペースは多くの場合、人間を上回る。
プリンストン大学主導の研究では、ChatGPTのような技術に影響を受ける可能性の高い業界として、ソフトウェア・パブリッシャーを11位にランク付けしている。ラージはその理由として、対話型AIのコーディング能力の高さを挙げている。ゴールドマン・サックスの調査では、欧米におけるコンピューティングおよび数学タスクの約29%が自動化される可能性があると推定している。
建設
ゴールドマン・サックスの調査では、建設業のようなブルーカラーの職種が多い業界は、影響度が比較的低いスコアとなった。欧米の建設業界で自動化にさらされる作業タスクは10%未満と推定されている。
プリンストン大学、ペンシルバニア大学、ニューヨーク大学の研究者がまとめたリストでも、建設およびその関連職は、最も影響の少ない職業のリストに入っている。
技能職
技能職も、比較的AIの影響を受けにくい職種だと予想されている。技能職の仕事には現場での実務経験や専門的な訓練が必要であり、多くのタスクが肉体労働だ。
ゴールドマン・サックスの調査によると、技能工および関連職業の従事者は、ヨーロッパで自動化にさらされる割合が最も低い職業分類とされている。同業界では、AIによって自動化される可能性のあるタスクはわずか4%にすぎないと推定されている。