イエール大学の教授に聞いた… アメリカ人はなぜ「勤勉さ」にかつてのような価値を見出さなくなったのか

働く人

Tomasz Zajda / EyeEm/Getty Images

  • ウォール・ストリート・ジャーナルの調査の結果、アメリカ人はかつてのように「勤勉であること」に価値を見出していないことが分かった。
  • 「勤勉さ」を必要とする仕事がなくなったわけではない。賃金が安いだけだ。
  • 今日の労働者 —— 特にギグワーカー(雇用関係を結ばない単発・短時間の働き方をする人)に、かつて「勤勉であること」が約束したような保証はない。

ウォール・ストリート・ジャーナルの調査の結果、アメリカ人は愛国心、宗教、勤勉であることをかつてほど重要視していないことが分かり、共和党の活動家や政治家たちはこれに憤慨した。

調査の結果を受け、「アンチ・ウォーク」の投資家で2024年の大統領選の共和党候補指名争いに立候補したヴィヴェク・ラマスワミ(Vivek Ramaswamy)氏は、「信仰、愛国心、家族、勤勉は姿を消した」とツイートした。トランプ政権で大統領報道官を務めたアーカンソー州のサラ・ハッカビー・サンダース知事は「これがこの国のさまざまな問題の原因」とツイートした。

ウォール・ストリート・ジャーナルとシカゴ大学の全国世論調査センター(NORC)が実施し、アメリカの1019人の成人が回答した3月のこの調査では、回答者の67%が自分にとって勤勉であることは「とても重要」だと答えた。回答者の83%が勤勉さはアメリカ人の気質のとても重要な一面だと答えた1998年から16ポイント低下した。

ウォール・ストリート・ジャーナルの編集者アーロン・ジトナー(Aaron Zitner)氏は、アメリカ人はかつて「一生懸命働けば、アメリカでは成功できる」と信じていたが、「今回の調査で、わたしたちの子ども世代はわたしたちの世代よりも良い暮らしができないかもしれないという悲観主義がこれまでになく高まっていることが分かった」とポッドキャスト『What's New』で指摘した。子ども世代は自分たちよりも良い暮らしができると「自信がある」と答えたのは21%だった。1998年の調査では64%だった。

勤勉さや愛国心、宗教、子どもを持つことといった価値観は「何世代にもわたって、アメリカ人の気質を定義付けてきた」とジトナー氏は『What's New』で語ったが、最新のデータはこうした価値観がもはや"国"としてアメリカ人を1つにまとめていないことを示している。

勤勉さに対する悲観論に拍車がかかっているのは、アメリカ人が「この20年、一生懸命働くことしかしてこなかった」からかもしれないとInsiderに語ったのは、イエール大学の教授で労働史を研究しているジェニファー・クライン(Jennifer Klein)氏だ。

アメリカ人が一生懸命働きたがらないことが問題なのではないと、クライン氏は話している。中でもギグエコノミーの台頭によって、労働者はどんなに頑張ろうと安定、収入、福利厚生、社会的地位を失ってきたのだ。

問題は「頑張って働いた見返りが"不安定"であること」だとクライン氏は指摘している。

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