人によっては家を買わないほうがいい場合もある。
takayuki/Shutterstock
- 富を築く第一歩として、家の購入が挙げられることが多い。
- だが、家の購入が最善の選択肢とはならない6つのタイプの人がいると、ファイナンシャルプランナーのニコール・モロン氏は主張する。
- 大都市で暮らすつもりで、生活防衛資金がまだ構築できていない場合は、家を借りるほうが有利なこともある。
家を所有することは、最も確実に富を築く方法だとよく言われる。しかし、家の購入は必ずしも最善の資産形成方法ではない。
家を買うことにプレッシャーを感じる人は、ほとんどの場合で実際にはまだ家を購入できるほどの経済的余裕がないのだと、ピーターキン・ファイナンシャル(Peterkin Financial)でファイナンシャルプランナーとして働くニコール・モロン氏は指摘する。
「経済的余裕とは、住宅ローンを毎月きちんと返済できるかどうかだけの問題ではない」とモロン氏は言う。
モロン氏の話によると、初めて家を買う人は、「税金が上がっても大丈夫?」「保険が値上がりしたら?」「屋根が雨漏りしたり、給湯器が壊れたりしたときにどう対処する?」などといった点について、前もってよく検討することがほとんどないそうだ。
フレディマック(連邦住宅金融抵当公庫)が2022年に行った調査によると、アメリカにおけるZ世代の成人の27%が、経済的な理由から家を所有できないと答え、回答者の39%が頭金を貯めることが高い障壁になっていると指摘した。
家を買うべきかどうかで悩んでいる人は、自分が次の6つのカテゴリーに属するかどうか、考えてみよう。どれかに当てはまる人は、家を買うのではなく借りたほうがいいと、モロン氏は言う。
1. クレジットカードの借金がたまっている
「もちろん、クレジットカードの借金が残っているのに家を買う人は存在する」としたうえで、モロン氏は指摘する。「だが、支払いが多く残っているということは、浪費癖がある証拠だ。さらに、お金を計画的に使うのが下手であることを意味している」
モロン氏の考えでは、休暇旅行の費用や車の修理代を工面するのに苦労するようなら、家を買う準備がまだできていないということだ。
「家を買えば、それらの問題が悪化するだけだ。家を買ったあとで何か大きな出費が必要になった場合、そのお金を工面できるのだろうか?」
2. 毎月の出費を予測したい
モロン氏は、家を所有した場合、借りていたときよりも頻繁に思いがけない出費が生じると指摘する。
たとえば、屋根が雨漏りして、その修理に1万ドル(約130万円)が必要になった場合、あなたにはそのお金を工面するあてがあるだろうか。「1万ドルを借金でまかなった場合、毎月200ドル(約2万6000円)から400ドル(約5万2000円)を返済することになるだろう」とモロン氏は言う。
対照的に、家を借りている場合は、借りている期間ずっと毎月の固定費を支払うだけで済む。緊急時の修理費用、団体信用生命保険、火災・地震保険、固定資産税など、所有者に課せられる費用を確保する必要はない。
3. 生活防衛資金がない
だいたい3カ月から6カ月分の生活費に相当する額を、高利回りの預金口座に蓄えて、必要なときにはいつでも使えるようにしておけば、生活防衛資金ができていると言える。
モロン氏の考えでは、生活防衛資金がないのは、住宅を買う準備が整っていないことの証拠で、特に上記のような予定外の出費が生じたときには対処が難しくなるだろう。
4. 大都市で暮らしたい
大都市で暮らすという夢があるのなら、その夢を犠牲にしてまで好きになれない郊外に家を買うべきではない。モロン氏はこう言う。
「ここで指摘しているのは、市街地から30分か45分ほど離れた郊外に住みたいと願っている人のことではない。都会のライフスタイルに憧れ、電車・バスを使い、徒歩で移動し、いつでもどこでもUberを利用したいけれども、そのために100万ドル(約1億3000万円)を支払うつもりはない人たちのことだ」
モロン氏は、そのような都会では、ほとんどの場合で「100万ドルの住宅ローン」を組んで家を買うよりも家賃を払い続けるほうが安上がりで済むと言う。
5. 買えば、自宅を思い通りに使えると考えている
多くの人は借家には面倒なルールがあるから自分の家がほしいと考えると、モロン氏は指摘する。借家では、たとえば壁の色を塗り替えたり、絵を飾るために壁に穴を開けたり、新しい何かを増築したりするのが禁止されることが多い。この意味では、自分のやりたいようにできる持ち家のほうが魅力的だろう。
しかし、モロン氏はこう指摘する。「持ち家でも、増築したり改築したりするには許可が必要だ。住んでいる町や市の承認を得なければならない。管理規約がある場合、無許可でドアを赤く塗ったり、通りに車を停めたりすることすらできない。ルールがあるのだ」
6. 純資産を増やすために家を買う
多くの人は富を築き、純資産を増やす目的で家を買おうとする。しかしそんな人々に対して、モロン氏は住宅ローン返済スケジュールについて、よく考えるよう警告する。
住宅ローンの返済表を見れば、住宅ローンの返済額のうち、ローンの元本残高に入る額と、貸し手に支払われる利息の比率がわかる。
「最初の1年、毎月3000ドル(約39万円)を返済した場合、だいたい300ドル(約3万9000円)ほどが元本に充てられて、資産になる」とモロン氏は説明する。「残りの2700ドル(約3万5000円)は銀行の利息だ。要するに、あなたよりも銀行のほうが、その家を多く所有しているのだ」
モロン氏のクライアントには、本当は住みたくない場所に家を買うプレッシャーを感じているクライアントがたくさんいる。彼らのために計算したところ、多くの場合で、実際に住みたい場所で家を借りるほうが、毎月の住宅ローンを返済するよりも明らかに安上がりで済むことがわかった。そのような人々に対して、モロン氏は家を買う代わりに賃貸し、そこで浮かせたお金を投資に回して、資産形成の旅を始めるよう勧める。
「私は家の所有に反対しているわけではない。ただ、ほとんどの人が正しい数字を理解していないと感じている」