Jennifer Strong; Sam Charrington; Conviction; Elad Gil; Robyn Phelps/Insider
最近のAI(人工知能)について興味を持っている人たちには朗報だ。近年AIに特化したポッドキャストが数多く登場しており、朝の通勤時間にポッドキャストを聞きながら、この高度な専門分野について手軽に学べるようになっている。
これらのポッドキャストでは、著名な学術研究から新進気鋭のスタートアップ企業、技術の日常的な応用まで、あらゆる分野が取り上げられている。そこで本記事では、AIと機械学習に興味のある人なら必ずチェックしておくべきおすすめのポッドキャスト11番組を紹介しよう。
『Eye on A.I.』
『Eye on A.I.』のホスト、クレイグ・スミス。
Craig Smith
『Eye on A.I.』のホストであるクレイグ・スミス(Craig Smith)は、ニューヨーク・タイムズ(The New York Times)の記事執筆のために“ディープラーニングのゴッドファーザー”と呼ばれるジェフリー・ヒントン(Geoffrey Hinton)にインタビューしたことがきっかけでこの分野に興味を持ち、現在に至る。
スミスはここ何年もの間AIについて執筆しているが、『Eye on A.I.』のインタビューは毎回「初心者として」臨み、この分野の初心者が興味を持ちそうな質問をするようにしているという。
ポッドキャストでは、ヒントン、ヤン・ルカン(Yann LeCun)、ヨシュア・ベンジオ(Yoshua Bengio)など、この分野で最もエキサイティングな進歩を間近で見ている著名なAI研究者を数多く取り上げてきた。
今後は、AI活用をめぐる法的問題なども取り上げる予定だという。
『In Machines We Trust』
『In Machines We Trust』のホスト、ジェニファー・ストロング。
Jennifer Strong
『In Machines We Trust』は、学校でのプライバシー問題から「デジタルツイン」の活用まで、AIが人々の日常生活に及ぼす影響を検証する『MITテクノロジーレビュー』のポッドキャストだ。
ホストのジェニファー・ストロング(Jennifer Strong)はInsiderの取材に対し、このポッドキャストは「実際に体験」的な要素と流動的なフォーマットで差別化を図っていると語る。
あるエピソードでは、AIが人間のパイロットの訓練にどのように使われているかを知るために、ストロング自身が太平洋上を飛ぶ戦闘機の中から空中戦を直に体験している。
「あれは今までの経験の中でもとびきりワイルドな体験でした。それに、ポッドキャストを制作するうえではありえないくらい挑戦的なやり方でしたね。こうしたプロジェクトは、何よりも愛の賜物なんです」
『Machine Learning Street Talk』
『Machine Learning Street Talk』共同ホストを務めるティム・スカーフとキース・ダガー。
Machine Learning Street Talk
拡張現実のスタートアップ「XRAI Glass」の共同創業者であるティム・スカーフ(Tim Scarfe)とキース・ダガー(Keith Duggar)がホストを務める『Machine Learning Street Talk』は、トップAIサイエンティストへのインタビューを通して、この分野の最先端の学術研究について詳しく解説する番組だ。
学術的なバックグラウンドを持つスカーフとダガーだからこそ、「文献を読み、深い分析を行い、異なる研究ラインの間に深いつながりを見出す」ことができ、ひいては強化学習や意識についての哲学、そしてAIなどのトピックを扱っているのだとスカーフは話す。
“現代言語学の父”ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)や、アルファベット(Alphabet)のAI研究所ディープマインド(DeepMind)のスタッフ研究員ペタル・ベリーチコビッチ(Petar Veličković)など、著名なAI研究者も取り上げられている。
『Me, Myself, and AI』
『Me, Myself, and AI』共同ホストのサム・ランスボサムとシェルビン・ホダバンデル。
Me, Myself, and AI
『Me, Myself, and AI』の共同ホストを務めるサム・ランスボサム(Sam Ransbotham)は、この番組ではテクノロジーにおける共通の問題を取り上げていると言い、次のように説明する。
「テクノロジーは、『AIがXをする』という役者として描かれることがあまりにも多い。私たちの番組では、人々がツール(例えばAI)を使用するとき、その使用にはかなりの選択、そして裁量が伴うという理解に立っています」
このポッドキャストは、スターバックス(Starbucks)、ウォルマート(Walmart)、ポルシェ(Porsche)といった大手企業の関係者と、ホストたちのAIに関する個人的な体験に焦点を当てている。また、技術分野に進むことに関心のあるリスナーに向けて、彼らの経歴やキャリアパスにも触れている。
共同ホストであるランスボサムとシェルビン・ホダバンデル(Shervin Khodabandeh)は、ボストン・カレッジ(Boston College)とボストン・コンサルティング・グループ(BCG)の出身だ。こうしたビジネス指向のバックグラウンドを持つがゆえに、彼らのポッドキャストは過度に技術に寄りすぎず、「組織がAIから真の価値を引き出すのをサポートする」というスタンスをとっている。
『No Priors』
『No Priors』共同ホストのサラ・グォとエラッド・ギル。
Conviction; Elad Gil
『No Priors』の共同ホストのサラ・グォ(Sarah Guo)とエラッド・ギル(Elad Gil)は、この分野における実績ある投資家。外部のオブザーバーではなく市場参加者ならではの独自視点が番組の特徴だとグォは語る。
投資の手腕に加え、ギルは以前、ツイッター(Twitter)の検索、グーグル(Google)の広告ターゲティング製品、カラーゲノミクス(Color Genomics)の機械学習など、AIを中心としたプロダクトに関連する組織の経営経験があるため、スタートアップの立場もよく分かるという。
番組の各エピソードでは、AI分野の注目の人物たちに共同ホストの2人がインタビューしている。これまでに登場したのは、ハギング・フェイス(Hugging Face)のクレム・ドゥランジュ(Clem Delangue)CEO、トランスフォーマー(Transformer)に関する論文を執筆したノーム・シャイザー(Noam Shazeer)、AI医薬品開発企業「Insitro」の創業者兼CEOダフネ・コラー(Daphne Koller)などだ。
今後のエピソードでは、「AIの安全性から注目のスタートアップ、重要な研究、業界の原動力である半導体まで」あらゆるものを取り上げる予定だとギルは意気込みを見せる。
『Practical AI』
『Practical AI』共同ホストを務めるダニエル・ホワイトナックとクリス・ベンソン。
Practical AI
『Practical AI』の共同ホストであるクリス・ベンソン(Chris Benson)とダニエル・ホワイトナック(Daniel Whitenack)は、AI分野における長年の経験をポッドキャストで活かしている。
ベンソンは以前、航空宇宙・防衛産業のロッキード・マーティン(Lockheed Martin)に5年在籍し、同社のAI戦略を策定した。ホワイトナックはパデュー大学で数学と計算物理学の博士号を取得した後、データサイエンスの専門知識を多くのスタートアップに提供するようになった。
「私たちの主眼は、AIを実用的で生産的なものにして、誰もがアクセスできるようにすることです。ポッドキャストの中には、ハイプサイクルに乗っかったり、AIに関するクリックベイト、つまり誇大なタイトルで視聴者の興味を引こうとする傾向があるものも見かけますが、私たちは本当の実践者や、現実世界でAIを応用しようとしている人たちに役立つコンテンツをつくりたいんです」(ホワイトナック)
最近のエピソードでは、You.com、コヒア(Cohere)、バナナ(Banana)といった新進気鋭のAIスタートアップにインタビューし、AI搭載の検索や同分野における訴訟といったトピックを取り上げている。
『NVIDIA’s AI Podcast』
『NVIDIA’s AI Podcast』ホストのノア・クラビッツ。
Noah Kravitz
NvidiaはAI分野のブームの恩恵を受けた半導体メーカーとして最近特に注目されている。そのNvidiaの『The AI Podcast』には、ベンチャーキャピタル、スタートアップ、アカデミアにまたがる多くのゲストが登場している。ポッドキャスト全体に通底するのは「人を第一に考えること」だと、Nvidiaチーフブロガーのブライアン・コールフィールド(Brian Caulfield)は語る。
過去1年間、番組ホストのノア・クラビッツ(Noah Kravitz)は、セコイア・キャピタル(Sequoia Capital)のパット・グレイディ(Pat Grady)やソーニャ・ホアン(Sonya Huang)などの著名投資家、絶滅危惧種クロサイの保護にAI搭載ドローンを活用する研究者、イスラム教徒とコーランの関係強化にAIを活用するアプリのファウンダーなどにインタビューしている。
『The Cognitive Revolution』
『The Cognitive Revolution』共同ホストのエリック・トレンバーグとネイサン・ラベンズ。
The Cognitive Revolution
急速に発展しているAI分野について、深みと味のある知識をもっと得たいと考えているなら、ネイサン・ラベンズ(Nathan Labenz)とエリック・トレンバーグ(Erik Torenberg)の『The Cognitive Revolution』はうってつけかもしれない。
ラベンズは、エピソードに先立ち広範な調査を行うという。ある時などはOpenAI(オープンAI)のGPT-4にいち早くアクセスし、数カ月間テストしてリスナーにその結果を共有したこともあるとのこと。共同ホストの2人は「傍観者の立場で分析する」のではなく、「この瞬間を形づくっているビルダー、研究者、そして起業家」をポッドキャストで取り上げるのが主眼だと話す。
今後は、AIの主導権を握るのは既存企業か新興企業かという疑問や、この先どの企業が競争力を持つのかといったトピックも取り上げたいとホストの2人は話す。
『The Radical AI Podcast』
『The Radical AI Podcast』共同ホストのジェス・スミスとディラン・ドイルバーク。
The Radical AI Podcast
『The Radical AI Podcast』のホストであるディラン・ドイルバーク(Dylan Doyle-Burke)とジェス・スミス(Jess Smith)は、AIと機械学習の進歩を「評価し、尊敬している」一方で、この技術に対して慎重かつ批判的な見方もしている点が他のポッドキャストとの違いだ、と彼らは話す。
「これらの技術の進歩がどのように制限されうるのか、また、AIが(意図したものであるか否かを問わず)歴史的な不平等、差別、抑圧といった力の不均衡を永続させるおそれがあるのかを問いかけています」(スミス)
と同時に、このポッドキャストではエキサイティングな最先端のAI研究や、テクノロジーをデザインするための「希望に満ちたオルタナティブな未来」にも注目しているとスミスは付け加える。
今後は、テック企業のレイオフでAI倫理チームが真っ先になくなることが多い理由、ChatGPTが労働力に与える影響、テック大手や研究所におけるAIの進歩といったトピックを取り上げたいとスミスは話す。
『The Robot Brains Podcast』
『The Robot Brains Podcast』ホストのピーター・アビール。
Pieter Abbeel
AI界隈で『The Robot Brains Podcast』のピーター・アビール(Pieter Abbeel)を知らぬ者はいないだろう。アビールはこのポッドキャストのホスト以外にも、自身のAIスタートアップ、コバリアント(Covariant)を率い、カリフォルニア大学バークレー校でAIとロボット工学の教授として教壇に立ち、AIXベンチャーズ(AIX Ventures)で投資活動も行っている。
このポッドキャストでアビールは、教授、起業家、投資家としての自身のユニークな経験を存分に活かし、研究者、起業家、教育者へのインタビューを通して、AIのブレイクスルーやトレンド、ゲストの個人的なキャリアパスなどを中心にトークを展開している。
今後は、汎用人工知能(AGI)、大規模言語モデル、AIの未来といったトピックを取り上げる予定だという。
『The TWIML AI Podcast』
『The TWIML AI Podcast』ホストのサム・カリントン。
Sam Charrington
『』は、AI分野のポッドキャストの中では特に息の長い番組だ。ホストのサム・カリントン(Sam Charrington)いわく、この番組の自慢はさまざまな背景を持つAI関係者を取り上げ、研究、応用、テクノロジーといった視点からAI分野をカバーする幅広さにあるとのこと。「機械学習・AIのトレンドが主流になる前に」リスナーに教えるのがこの番組の目標だという。
AI界隈の関係者のご多分に漏れず、カリントンもここのところ生成AIの新しい技術に魅了されており、このトピックを番組で取り上げることも多い。
ポッドキャストでは、中核となる大規模言語モデル技術に触れるだけでなく、パインコーン(Pinecone)のようなベクトルデータベースやAWS、グーグル(Google)といったITベンダーなど、大規模モデルの活用や、それらを構築するために必要なツールや技術についても取り上げていく予定だという。