アメリカの平均労働時間は、高収入で仕事熱心な男性が最も低下している。
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- 最近の研究で、アメリカの平均労働時間が2020年以降に30分以上減少していることがわかった。
- 若い男性が仕事との関係を変えたことが大きく影響しているという。
- かつて最も働いていた男性たちは2020年以降、平均で週3時間、労働時間を短縮している。
ここ数年、多くのアメリカ人は、どれだけ働くのかを含めて、仕事との付き合い方を変えている。
実際、最近発表されたブルッキングス研究所の調査によると、アメリカの平均労働時間は過去3年間で30分以上減少している。30分と聞くと大した時間ではないように思えるが、同研究所によると、職場全体の生産性を考慮すれば、240万人近くの労働者が「不足」していることになるという。
全米経済研究所 (NBER)で最近同様の調査を行った研究者によると、特に3つのグループが仕事を縮小しているという。この研究に携わったワシントン大学セントルイスのシン・ヨンソク(Yongseok Shin)教授は、そのグループは、高学歴の若い男性、高収入の男性、以前は最も長時間働いていた男性だと2023年3月30日の学会で述べている。NBERの研究では、2007年から2022年までのアメリカ合衆国労働省労働統計局(BLS)の調査データを使用している。
ブルッキングス研究所の研究者によると、これはほぼ白人労働者に限って言えることで、ヒスパニック系や黒人の労働者は、2019年と同程度かそれ以上の割合で仕事に「参加」している。それにもかかわらず、有色人種の労働者は白人の労働者よりも職場で新型コロナウイルスにさらされることを恐れていると言及されている。
「実際のところ、新型コロナウイルスへの懸念は、そのために労働力を失っている人の割合が高いグループの方が一般的に大きい。しかし健康上の懸念があるにもかかわらず、働く必要性があり、非常に厳しい労働市場でしかその機会を得られない人、平均的に資産が限られる一部のグループの人々を労働市場に押し戻したのかもしれない」と2019年から2022年までのBLSのデータを調査したこの研究についてブルッキングスの研究者は語っている。
アメリカ法曹協会(ABA)のデータによると、新型コロナウイルスは特に有色人種労働者の格差を拡大させており、その主な原因は彼らが働く産業にあるという。ブルッキングスの研究者が示唆しているように、白人の労働者は高い賃金の仕事に就くことができるため、ワークライフバランスの観点から週の労働時間を短縮する可能性が高くなる。
また、ワークライフバランスが見直されていることも関係していると思われる。ここ数年の「大退職(Great Resignation)」や「静かな退職(Quiet Quitting)」といった現象が、労働力を大きく変化させているのではないかと研究者は推測している。 そして、このような退職や人員削減の中で、経済全体の労働生産性は過去40年間で最も速いスピードで低下している。
高学歴の若い男性は職場の柔軟性を利用して仕事を減らしている
NBERのエコノミストらは、学位を持つ高収入の男性が労働時間の短縮を先導していることを発見した。
「高学歴で勤勉な高年収の人が、より良いワークライフバランスのために労働時間を短くしている。これが『静かな退職』現象の核心だと我々は考えている」と、シン教授は2023年1月にInsiderに語っている。
これは、若い男性の労働力に関するもうひとつの重要な傾向とは対照的だ。高学歴で高給取りの男性は、労働時間を減らしているにもかかわらず、それでもまだ働いている。しかし、学位を持たない彼らの同年代は次々と退職し、男性の労働力不足に拍車をかけている。ある程度の学位があり、職業訓練を受けている同世代の人たちであれば手に入れられるような賃金上昇の機会が限られている場合、このような人たちは一生懸命働きたくはないのだ。
「学べば学ぶほど収入は増える」と、経済予測会社のプレステージ・エコノミクス(Prestige Economics)のジェイソン・シェンカー(Jason Schenker)社長は2022年12月にInsiderに語っている。
高所得者は労働時間を減らしている
2023年3月、シン教授は、高所得者層は平均して1.5時間労働時間を減らしていると述べた。「高所得者」とは年収10万ドル以上(約1317万円)の人だ。
リモートワークやハイブリッドワークの機会を得たことで、年収の高い男性たちは、それほど一生懸命働く必要がないことを確信したのだろうとシン教授は話している。
2022年、データ共有・分析会社に勤務する年収11万9000ドル(約1567万円)の39歳のリモートワーカーは、リモートワークの柔軟性を好むため、さらに高給の仕事を探すことをやめたとInsiderに語っている。具体的には、例えば母親を医者に連れて行くなど、必要に応じて週の労働時間を短縮できるのがいいと彼は話している。
「このような柔軟性は、正直なところ、人生を変えるほどのものだ」
以前は週55時間働いていた男性が労働時間を短縮している
NBERの研究では、労働時間の長さで上位10%の男性は、2019年の週55時間から2022年には52時間に労働時間を短縮しているとシン教授は言う。
残りの労働者の労働時間は約30分しか減少しておらず、ワーカホリックの人の方が他の労働者よりも劇的に変化したことがわかる。
これは多くの『大退職』に共通するテーマであり、そのストーリーは特に男性の心に響くものだという。
「『負担が大きすぎる、抱えすぎている』と言いたくない男性が多過ぎると思う」と、労働時間の短縮を雇用主に求めたオーストラリアのエンジニアはInsiderに話す。匿名を希望したそのエンジニアは、職場に何の変化もなかったため、結局退職してしまったという。
「男性はプライドが高く、弱く見られたくないのだと思う。残念なことに会社はこれを利用している」