投資の分野にも、今後さらにAIの導入が見込まれる。
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ChatGPTのような人工知能モデルがAIの革命的な力を示すように、その潜在的なユースケースは無限にあるように思われる。自動化が簡単な分野とそうでない分野があるにせよ、投資を含め、AIによる破壊的な影響から完全に無関係でいられる分野はないだろう。
実際に一部の投資家は、5年以内に金融業界にAIモデルが普及し、トレーダーがリアルタイムで市場環境の変化に対応できるようになると考えている。フィンテック企業、エクボット(Equbot)の共同創業者兼最高投資責任者(CIO)のクリス・ナティヴィダッド(Chris Natividad)によると、2040年までにすべての金融商品の約90%が、取引や銘柄選定など何らかの形でAIを導入するはずだという。
ナティヴィダッドは、ニューヨーク証券取引所に初めて上場した、投資判断をAIに任せる上場投資信託(ETF)「AIEQ」のCIOも務めており、その運用資産は1億1000万ドル(約145億円、1ドル=132円換算)を超えている。
投資にAIを活用する
AIEQは、IBMの自然言語処理および機械学習技術であるワトソン(Watson)を活用し、数百万件のマクロ経済データを瞬時に分析することで保有資産のバランスを取っている。
例えば、ワトソンは膨大な記事の中からトピックやキーワードを探し、ナレッジグラフ、クラスター、ワードクラウドを構築して市場トレンドを分析することができる。
ナティヴィダッドによると、この技術によって5万社以上のグローバル企業を調査し、12種類の言語で展開することができる。またその能力が、取引の頻度や市場のセンチメントを拾い上げるだけにとどまらないことも明かす。
「変化の大きさも重要です。経済指標、財務諸表、ニュースデータなど、さまざまな動向が、さまざまな時間軸で異なる証券の価格にどのような影響を与えるかを見ています。これらのパターンを認識することにフォーカスしています」(ナティヴィダッド)
リアルタイムのデータをチェックするだけでなく、このプラットフォームでは、異なる動きが異なる資産の市場価格に与える過去の影響も測定している。同ファンドは週に平均2~3回リバランスを行う。AIEQはできるだけAIによるデータ分析を目指しているが、データの整合性や信頼性を確認するなど、人間の監視も時折必要だ。
AI領域への投資
AI技術を投資戦略に役立てるだけでなく、AIの未来に投資することについてもナティヴィダッドは非常に前向きだ。
「当社のビジネスやAIEQのポートフォリオで引き続き注目しているテーマは、AIや機械学習ビジネスの拡大です。当社はまだAI投資分野の初期段階にいると考えています」
最近のポートフォリオのリバランスで、エクボットのアルゴリズムは、アドバンスト・マイクロ・デバイス(AMD)、エヌビディア(Nvidia)、グーグル(Google)、マイクロソフト(Microsoft)など、いくつかの厳選したテクノロジー銘柄に比重を置くように保有銘柄を調整した。
ナティヴィダッドは、ハイテク企業は通常、価格の回復力と強力なファンダメンタルズにより、ボラティリティが高い時期に優れたパフォーマンスを出すという。今回は、これらの銘柄がAI投資のテーマに積極的に取り組んでいることから追加された、と彼は言う。
「最近、クラウドコンピューティング、AI、Eコマースなど産業の成長を支える非構造化データの動きの中でデジタル技術の重要性が高まっています。そのため、テクノロジー銘柄は引き続き好調です。テクノロジー企業は、AIの発展と技術的成長を支えている構造化された金融データ、そして非構造化されたニュースデータの両方がポジティブであったことから、ポートフォリオに追加されました」
さらにナティヴィダッドは、まだAI分野に手を出してはいないが投資をしたいと考えている個人投資家は、AI投資ファンドやそれらの募集に注目すべきだと言う。ただし、特定のファンドのメソッドや投資基準についてよく精査すべきだとも忠告する。
「AIを使ったと主張するETFは数多くありますが、AIはすべて同じように作られているわけではありません。我々は株式の個別ポートフォリオにフォーカスしていますが、他のファンドはよりマクロ的です」