多くの親が、子どものために貯蓄を切り崩しているようだ。
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- ベビーブーマー世代とZ世代では、経済的自立の年齢に関して意見が分かれている。
- アメリカでは18歳以上の子どもを持つ親の68%が、子どもを経済的に支援するために貯蓄を切り崩していることが、バンクレートの調査で明らかになった。
- だが子どもを支援することで、親は退職時期や、目標としていた貯蓄額の達成、借金の返済を先送りにしている可能性がある。
アメリカのベビーブーマー(1946年から1964年頃生まれ)とZ世代(1990年代後半から2010年代生まれ)は、経済的自立の年齢に関して意見が食い違っていることが、最近の調査で明らかになった。
個人向け金融サイトのバンクレート(Bankrate)は、アメリカの成人2346人(うち18歳以上の子どもを持つ親773人)を対象に、経済的自立と子どもが親の経済状況に与える影響について調査を行った(実施主体は市場調査会社のYouGov)。
その結果、ベビーブーマーは携帯電話やクレジットカード、自動車保険などの支払いを19歳から始めるべきだと考えているのに対し、Z世代は21歳か22歳になるまで自分で支払いをすべきではないと考えていることが明らかになった。
親が成人した子どもを経済的に支えるために、自分たちが稼いだお金を犠牲にすることにうんざりしていることが、その理由のひとつとして考えられる。
調査によると、成人した子どもをサポートするために「経済的犠牲」を払ったと回答した親は68%、そのうち31%が「かなりの経済的犠牲」を払ったと回答している。
そのため、親は退職時期を遅らせ、緊急時の貯蓄を切り崩しており、目標としていた貯蓄額の達成や借金の返済も困難になっている。
この結果は所得階層によって異なり、年収5万ドル(約670万円)以下の世帯の58%が、成人した子どものために経済的犠牲を払っていると回答しているのに対し、年収10万ドル(約1330万円)以上の世帯では46%にとどまっている。
また居住地も関係している可能性がある。イリノイ州やミシガン州といった中西部の州に住む親は、アメリカの他の地域に住む親に比べて、子どものために自分の老後資金を犠牲にしているとはあまり感じていないようだ。
現在は不確かな雇用市場、インフレ、金利の上昇、家賃の高騰といった状況にあることから、親は成人した子どもをサポートしたくなるようだと、バンクレートの調査報告は指摘している。だが、そのために子どもは経済的自立を達成することが難しくなる傾向にある。
アメリカ国勢調査局が行った2022年の調査によると、COVID-19のパンデミック以来、25歳から34歳の男性の18%、女性の12%が親と同居しており、これは1972年以来、最も高い数値だった。
親は子どもを経済的に安心させたいと思うかもしれないが、彼らの支援は「行き過ぎ」になることもあると、バンクレートのシニア・インダストリーアナリストであるテッド・ロスマン(Ted Rossman)は述べている。
「成人した子どもの請求書を肩代わりすると、それが悪い習慣になってしまったり、彼らの成長を妨げたりすることもある。また、自分の退職時期を遅らせないといけなくなったり、目標としていた貯蓄額の達成ができなくなったりするかもしれない。ローンはさまざまなものに対して組むことができるが、老後資金となるとそうはいかない」
実際、2022年のNerdWalletの調査では、子どものために学生ローンを肩代わりした親の26%が「予想通り退職しない」ことが分かった。中にはインフレ率の上昇を考慮して退職を何年も先延ばしにする人さえいる。
親はお金について子どもと話し合い、どれだけの支援をいつまで提供できるのかについて明確な見通しを立てることで、子どもの経済的自立を助けることができると、ロスマンは述べている。また、子どもが自ら家計を管理する心構えができるように、できるだけ早いうちから子どもと家計の話をしておくことも提案している。