写真左からBASE代表取締役 CEOの鶴岡裕太氏、上級執行役員の髙橋直氏。
撮影:小林優多郎
ECサイト作成サービスを提供する「BASE」は4月11日、同サービスで使える決済機能「Pay ID」において、自社開発のBNPL(Buy Now Pay Later:あと払い)機能「あと払い(Pay ID)」の提供を開始した。
BNPL機能はBASEを利用する原則すべてのショップで有効化され(ショップ側の判断でオフにする場合や利用している機能や配送先次第で使えない場合もある)、Pay IDに登録しているユーザーであれば誰でも利用できる。
BASEを採用したECサイトでは既に、AGミライバライ社と連携したあと払いサービスが利用できたが、今回の新機能はBASE自身が開発。債権の管理や請求書の発行をGMOペイメントサービスと連携することで実現した。
限度額は最大5万5000円、今後口座振替や分割払いも提供へ
リリース時点での「あと払い(Pay ID)」の特徴。
撮影:小林優多郎
あと払い(Pay ID)自体は非常にシンプル仕様で、サービス開始時点では以下の仕様になっている。
- 利用限度額は最大5万5000円。
- Webサイト版でのみ対応(アプリ版では年内に対応)。
- 精算方法は翌月一括払いのみ。
- 精算方法はコンビニ支払いのみ(セブンイレブン、ファミリマート、ローソン、ミニストップ、セイコーマート、デイリーヤマザキ)。
- 購入者には精算時に350円のコンビニ使用手数料が発生する。
「あと払い(Pay ID)」の利用の流れ。
出典:BASE
全体的に「ユーザーの購買体験の良さ」が特徴的で、例えば与信審査は、Pay IDの購買履歴やBASEのショップ側のデータなどをもとに行われ、基本的には携帯電話番号での本人確認後、即時利用できる。
また、翌月の精算時はコンビニに行く必要があるが、支払いに必要な二次元コードは「Pay ID」アプリで表示される簡便な仕組みになっている。
今後、年内にはPay IDアプリ内でもあと払い機能が使えるようになるほか、将来的には「口座振替での精算」「複数回の分割支払い」にも対応していく方針だ。
「あと払い」でECでの商体験の自由に近づく
BNPLについて説明する髙橋直氏。
撮影:小林優多郎
BASEは、2022年2月に「あと払い」機能の検討開始を発表。今回、発表から1年以上経ってようやく提供がスタートした形だ。
日本で「BNPL」というキーワードは、2021年9月に米・ペイパルが日本の決済スタートアップ・ペイディを3000億円で買収した際に大きく盛り上がった。
PayPayやファミペイなど、普段使いもする決済プレイヤーもさまざまな形式でBNPL機能を実装してきており、ニュースの数としても、やや落ち着いた印象がある。
BASEはなぜこの時期に独自のBNPL機能を提供するのか。
単純な収益としては、現在の「翌月一括払い」で新たな手数料を加盟店や購入者から取らないため、あと払い(Pay ID)機能単体で儲かる要素はほぼない。
BASEは店の個性が出るストアフロント型ながらショッピング体験において「モール型のような利便性」を実現するという。
撮影:小林優多郎
あえてプラスの要素としてあげるなら2つのメリットがある。
1つはスムーズな決済体験を提供することで「カゴ落ち」(支払い完了までの手続きの途中で購入者が離脱すること)のリスクを減らせること。
2つ目は、BASEが現在対応しているクレジットカードやキャリア決済、Amazon Pay、PayPalなどの外部に支払う手数料を節約できることだ。
ただ、催促・回収などを含めた債権の管理はGMOペイメントが担うものの、貸倒れのリスクも新たに発生するため、どちらかといえばBASE側の負担になる部分が大きいようにも見える。
実際、4月11日に開催された記者向け説明会で、BASE上級執行役員の髙橋直氏は、「あと払い(Pay ID)を新たな収益の柱と考えるのか」との質問に対して「(現状で)確たるところはない。(サービスの提供形態や料金などは)日本の商慣習に合わせていく」と回答している。
今後、分割払いなどを提供する際であっても「適切に見極めながらも、(加盟店と購入者の)過度な負担にはならないようにしたい」と、単純な手数料ビジネスにしていく方針にはしない方向性を示していた。
「あと払いは(創業以来)ずっとやりたかった事業」と語る鶴岡裕太氏。
撮影:小林優多郎
BASEのBNPL提供の意図は、創業者でありCEOの鶴岡裕太氏がその一片について語っていた。
「例えば我々はリスペクトはしているが、VisaやMastercardなどの事業者が、シンプルにNGとした商品はBASEでも売ることができない。
加盟店のみなさまのビジネスが、それ以外の企業によって相当制限されている事実は実際にある。
少しでも自由な商売を、将来ご提供していきたいと考えている。そういうことを今後実現できるポテンシャルが増えていく、という意味で(BNPL機能の提供は)かなりメリットだと思っている」(鶴岡氏)
鶴岡氏の話す「制限」というのは、商品そのものの内容だけではなく、例えば予約販売時のクレジットカードの決済枠の確保の期間なども含まれる。
決して「クレジットカード事業者が認めない商品を売れるようにするため」が第一目的ではないが、そういったことを含めた事業者のECでの商売の「本当の自由」を実現するビジョンがBASEの構想の中にはあるようだ。