Luupの電動キックボード。都内を中心に目にする機会が増えている。
撮影:三ツ村崇志
都内を中心に利用が広がっている「電動キックボード」。
7月に控える改正道路交通法の施行を前に、東京都と電動キックボード事業社などがつくる業界団体のマイクロモビリティ推進協議会は、4月11日、連携協定を結ぶことを発表した。
マイクロモビリティ推進協議会との連携協定の締結は、全国の自治体で初だという。
マイクロモビリティ推進協議会の会⻑で、都内を中心に電動キックボードのシェアリングサービスを提供しているLuup(ループ)の岡井大輝代表は、
「この7月の改正道路交通法が施行するタイミングが世の中の人から興味を持ってもらえるタイミングです。そこでしっかりと自治体と連携を取りながら安全面についての周知を徹底していきたい」
と、Business Insider Japanの取材に応えた。
7月から電動キックボードは新車両区分に
東京都との連携協定の締結式。
撮影:三ツ村崇志
連携の狙いは、改正道路交通法の施行のタイミングに合わせた安全性の周知・徹底のためだ。
これまで、一般的な電動キックボードの車両区分は「原動機付自転車」(いわゆる原付)相当だった。今回の道路交通法の改正に伴い、7月から新区分「特定小型原動機付自転車」が新設され、電動キックボードはここに当てはまることになる。
Luupは、2021年春から渋谷区を中心に新事業特例制度を利用して電動キックボードのシェアリング事業を拡大してきた。
ただ、新事業特例制度上では、ヘルメットの着用が任意で、原付で求められていた道路の二段階右折も原則禁止。最高速度も時速15kmと、道路交通法上では「小型特殊自動車」相当だった。
今回の道路交通法の改正によって車両区分が新しくなることで、このルールはマイナーチェンジされ、統一的なものになる。
例えば、これまで必要だった運転免許は不要になり、16歳以上であれば電動キックボードを運転できるようになる。
加えて、最高速度は時速20kmに改訂。従来は禁止だった歩道での走行も、最高速度表示灯を点滅させている間「時速6km以下」で認められる(最高速度の設定変更が必要)。
ヘルメットの着用は「努力義務」となり、右折する際には原動機付自転車と同じく二段階右折が必要となる。この点は一般的な電動キックボード(原付相当)から変わらないものの、首都圏での利用が拡大しているLuupなどの新事業特例制度を利用したサービスでは二段階右折は禁止されていたため、利用者側も注意が必要なポイントだろう。
東京都生活文化スポーツ局の竹迫宜哉生活安全担当局長によると、今回の連携協定は東京都側から声をかけたものだとしていう。
「我々も(安全面の周知を)やっていたのですが、動画などを作っても再生回数が…ということがありました。利用者の方にきちんと伝えていくには、事業者側からの話の方が伝わります。
利用者の方は『自分は(ルールを)知っている』と思って、行政からの話がなかなか届かないことがあります。その弱いところを補っていただければと」(竹迫局長)
東京都とマイクロモビリティ推進協議会では、今後連携した取り組みとして
- 事業者の知見を踏まえ、守るべきルール等を周知するリーフレットや動画を作成
- 作成した広報物を活用し、事業者が利用者等へ安全啓発活動を実施
- 交通安全イベントを協力して開催
などを進めていくとしている。
Luupの岡井代表は、これまでルールが非常に複雑であった背景から、自動車のドライバーや、歩行者といった電動キックボードの利用者「以外」に正しく利用ルールを伝えきれていなかった側面があったと話す。
「地元警察や自治体と一緒に啓発活動を行うと、世論全体に届くのですが、事業者だけだと利用者にしか届きません。
世論全体にルールを周知できていると、違法な走行をしたときに世間の目(が抑止力になります)があります。(現状では)そこが曖昧になってしまっている点が課題として残っていると思っています。この7月の道路交通法の改正を通して、正しいルールを啓発していくことが重要だと思います」(Luup・岡井代表)