2021年に「そろそろ、No.1を入れ替えよう」という広告を出したファミマ。
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ファミリーマートが2023年2月期(2022年3月1日〜2023年2月28日)の通期決算を発表した。
売上高にあたる営業収益は4615億円(前年比2.2%増)、事業利益は640億円(同2%減)、当期利益344億円(同61.9%減)。
細見研介社長は決算説明会のなかで、値上げの影響に加えて、「売れる商品の二極化が進んできている」という興味深いコメントもしている。一体どういう意味なのか。
電気代の高騰コストを堅調な日商がカバーした
電気料金の高騰を始めとするコストの急上昇に対しては、節減節電プロジェクトやデジタルの活用による業務の効率化などのコスト低減に努めた。
出典:ファミリーマート2022年度決算・2023年度計画
2022年9月に実施した値上げの影響について、細見社長は「もともと商品力のあるファミチキやカウンターコーヒー類がお客様の支持を得続けている」としたうえで、「値上げ、価格改定というものに対する消費者の方のご理解が日を追うごとに進んでいった」と総括した。
「売れる商品の二極化が徐々に進んできているという印象」 (細見社長)があるとしたのは、コンビニの柱の1つでもある中食商品。弁当やおむすびについてだ。
質疑応答のなかで、
「お弁当類より、低単価のおむすびの方が売れる。(さらに)おむすびの中でも高価格帯、コストパフォーマンスの良い高価格帯のおむすびが売れる。一方で買いやすい、お求めやすい価格のおむすび、この上下が売れていくと。
真ん中のゾーンは比較的スローになっているような傾向が強い」(細見社長)
と記者からの質問に答えた。
ファミマの商品棚に並ぶおにぎり。
出典:ファミリーマート
二極化の理由についての言及はなかったが、こうした傾向が競合他社も同様なのかは気になるところだ。
なお、ファミマの弁当は、およそ300円台〜500円台の価格帯がメインで、値上げ影響だけで顕著に減少するのかは微妙な印象もある。
あくまで推測だが、消費者の生活防衛意識の高まりから、ファミマで売れる中食の傾向に影響が出てきている可能性はある。
2023年度はポストコロナとインフレに対応する
営業収益は前期差335億円増益の4950億円、親会社所有者帰属利益は前期差16億円増益の360億円と増収増益を計画している。
出典:ファミリーマート2022年度決算・2023年度計画
通期決算では、2023年度の計画も公表している(上図)。
「2023年度は改めてポストコロナとインフレという急激な環境変化が見込まれる中で、 正念場とも言える中期経営計画の2年目を迎えます」(細見社長)と、環境変化への認識を示した一方、「人流の回復は予想以上」(細見社長)だとした。
なお、セブンイレブンを展開するセブン&アイHDは先週の通期決算で、2023年度の業績予想を「厳しい経営環境になる」として、5%程度の減収予想を公表している。一転して増収を見込むファミマとのコントラストは興味深い。
店舗をメディア化する
デジタルサイネージを1万店舗に拡大する。
出典:ファミリーマート2022年度決算・2023年度計画
細見社長はこのほか、店舗のデジタルサイネージを念頭に「リテール広告、メディア領域での日本のリーディングカンパニーとなることを目指します」とも語った。
今後の展望については、ファミマルを含むプライベートブランドの比率を2024年度に35パーセントにすることを目指すほか、2023年度中に現在3000店舗に導入済みのデジタルサイネージを1万店舗に拡大することも明言している。