養豚DXの「エコポーク」がEC事業の開始を発表した。
撮影:土屋咲花
AIを活用した養豚の効率化を手掛ける創業6年目のスタートアップのEco-Pork(エコポーク)が、「豚肉のD2C事業」に乗り出す。
目標は、2024年までに年商1億円以上、豚肉の定期便利用者数1000人。参加農家数は3~5件に拡大する計画だ。
微細藻類のユーグレナ(和名:ミドリムシ)を飼料として育てた豚肉や、同社の養豚DXサービスを利用した農場の豚肉を加工し、専用のECサイトで直接消費者に販売していく。
4月12日、都内で新規事業発表会を開いて「D2C豚肉市場」の狙いを語った。
「エコで持続可能な豚肉」をお届け
エコポークが始めた豚肉のECサイト。
webサイトより編集部キャプチャ
「食べる喜びや美味しさを伝えることによって、食肉文化を次世代に繋げていくということを直接的に行っていこうと考えております」
エコポークの神林隆代表は新事業の目的をこう説明した。
エコポークは養豚農家の労働環境改善や養豚による環境負荷の低減を目的に、AIやIoTを活用した養豚の経営管理システムを提供している。今回、この養豚DXによって生産した「環境に優しい」豚肉を一般消費者に届ける。4月12日にサイトをオープンした。
商品一覧。加工品や精肉、定期便などもそろえている。
webサイトより編集部キャプチャ
まずは同社のサービスを利用する新潟県魚沼の農家「鬼や福ふく」の豚肉を使い、精肉やソーセージなどの加工品を提供する。
消費者にとっては環境負荷を低減した環境で育ち、かつ味にもこだわった豚肉の選択肢が増えることに。養豚農家にとっては、育てた豚肉がブランド化されることで付加価値がつき、価格競争力の向上が見込めるという。
「環境と豚に優しい」ユーグレナエコポーク
ユーグレナを飼料に育てられた「ユーグレナエコポーク」。
撮影:土屋咲花
養豚の持続可能性を追求した商品として発表したのが、ユーグレナを飼料とした「ユーグレナエコポーク」だ。
「豚特有の匂いが少なく、非常に香りのいい上品な豚肉ができた」(神林代表)
といい、食肉科学研究所の検査で、「柔らかくジューシー」「好ましい香り」などの結果が出ているという。
ユーグレナには豚の腸内環境の改善や、繁殖期の母豚への健康に寄与する研究も進められている。
豚肉の価値向上にも尽力
新事業を発表するエコポークの神林代表。
撮影:土屋咲花
EC事業では、「豚肉の美味しさ」も訴求していく。「Mr. CHEESECAKE」の田村浩二シェフをフードディレクターに迎えた。ECサイトで販売する豚肉や加工品、ミールキットの監修だけでなく、養豚場での生産メソッド研究にも関わるという。
神林代表によると、豚は米の生産量の1.3倍の穀物を消費するなど、養豚の環境負荷は高い。こうした中、代替肉や培養肉への置き換えが進むことによって、2040年には畜肉の割合は4割になるとの予測もある。
「これまではBtoBで豚肉生産者にICTサービスなどを提供してきましたが、我々だけでは食肉文化を次世代につなげられない。消費者にもこの豚肉を食べてもらい、2050年も肉が食べられる未来を作っていきたい」(神林代表)