Z世代をステレオタイプで語ることは、上の世代が彼らを誤解することにつながる。
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- 年配の世代の中には、Z世代は甘やかされ、キャリアアップに興味がないと考える人もいる。
- しかし、起業したスタートアップや所属する企業で残業するZ世代は、「怠け者」というステレオタイプを覆している。
- ステレオタイプでは本質を捉えることはできない。Z世代の仕事に対する考えを理解すべき時が来ている。
Z世代(1990年代後半から2010年代に生まれた世代)は、2つの側面から語られることが多い。1つは、ワークライフバランスを新たな次元に引き上げている人がいるという側面で、彼らは好きな旅行先で仕事をしたり、「男性社会」で働くのを避けるためにフリーランスになったりしている。またもう1つは、「若くて野心的」な人がいるという側面で、彼らは最近のウォール・ストリート・ジャーナルでも紹介されているように、「怠け者」というステレオタイプを覆し、起業したスタートアップや所属する企業でかなりの残業をしながら懸命に働いている。
だがこれは極端な例であり、彼らがZ世代を代表しているわけではない。
筆者を含むほとんどのZ世代は、これらの両極の中間に落ち着く。つまりワークライフバランスを大切にしながら、会社での昇進などプロフェッショナルとしての成長も目指しているのだ。だが、Z世代の社会進出が語られるとき、このような(普通の)Z世代のことが話題に上ることはなく、そのため、この世代の本質について大きな誤解が生まれている。
我々の世代を本当に理解するには、ステレオタイプにとらわれるのをやめなければならない。その代わりに、我々の多くが仕事と人生についてどう感じており、その2つをどのように組み合わせようとしているのかについて説明する。
仕事だけがアイデンティティではない
私は日常的にZ世代と話をしているが、仕事が話題になることはほとんどない。「(仕事は)何をしているの?」といった質問は、あまりにもビジネス的だと非難を浴びるようになり、Z世代の多くにとって避けるべきこととなっている(Z世代は『本質を追求する』と言われていたことを覚えているだろうか)。
若い世代、特にミレニアル世代(1980年代序盤から1990年代中盤に生まれた世代)にとって、仕事はアイデンティティの重要な部分であることはよく知られている。しかし、このつながりを断ち切ろうとしているZ世代もいる。
マルチメディア企業で働くZ世代のアナ・カールソン(Anna Carlson)は、「Z世代の大きな特徴は、自分のアイデンティティや人生には仕事以上のものがあると理解していること」と述べている。彼女は自分の人生において、仕事以外の面を充実させるために、ワークライフバランスを大切にしているという。
仕事の肩書きで会話ををするわけではないものの、Z世代の多くはやはり自分の仕事に関心を持っており、それに変化をもたらしたいと考えている。そのため公平性、ダイバーシティ(多様性)、気候危機に関する自分の価値観と一致する企業に就職する傾向がある。
Z世代は、景気後退の警告が何度も発せられ、レイオフで何万人もの人々が職を失い、インフレで基本的な生活を送ることも難しくなっている中で社会に出た。そのような状況で、自分が何者かということと、自分が何をしているかということを混同するのは危険だ。
Z世代が仕事に不安を感じる理由
多くのZ世代にとって、労働に対する不満は中学生時代にまでさかのぼる。世帯年収の中央値は2007年に5万4489ドルだったが、2011年のグレート・リセッションの際には5万54ドルにまで下がり、そのような状況下で親が働くのを見てきた。全米産業審議会の調査によると、2010年の労働者満足度は1987年以来最低を記録した。
大学を卒業して就職する頃にはCOVID-19が発生し、Z世代の多くにとって初めての仕事は、実家のリビングや子ども部屋からビデオ会議に参加することだった。
このような環境でキャリアをスタートさせるのは、多くの人が考える以上に困難なことだ。
マッキンゼー(McKinsey)が2022年春にアメリカ人2万5062人(うち1763人がZ世代)を対象に行ったオンライン調査によると、「Z世代は、パンデミックによる感情的ストレスや悲しみなど、特有の重荷を背負っている」と指摘されている。そのストレスが不安を高めているようだ。また、18歳から24歳の回答者の55%が、精神疾患の診断を受けたり、治療を受けたりしたことがあると回答している。
これまでにないような職場での体験によって、働くことの意味、同僚との向き合い方、生活の中で仕事を優先させるかどうかなどについて、深刻な迷いや戸惑いが生まれている。それについてZ世代を責めることはできないだろう。
Z世代は未来を優先する
Z世代はキャリアを成功させることに興味がないとするステレオタイプに反して、我々はキャリア開発に関心を持っている。メンター制度やキャリアアップ機会の存在は、若い求職者が職務に就くか留まるかを決める際に特に重要となる。デロイト(Deloitte)が2021年11月から2022年4月にかけてZ世代とミレニアル世代の2万3220人を対象に行った調査によると、キャリアアップに必要なスキルを学んでいると感じるZ世代は、現在所属する組織に留まる可能性が2.5倍高い。
しかし逼迫した経済状況では、Z世代の多くが家を買えるようになることはないかもしれないと不安に感じており、昇給が優先事項になってしまうのも当然のことだ。年上の同僚たちと同じように、Z世代も自分の仕事を給与水準に反映させ、それに見合った報酬を得たいと考えている。
Z世代は怠け者だとか甘やかされているとかいうわけではない。また、未来は準備すべき価値のあるものではないと考えているわけでもない。ただ、我々のゴールは、上の世代のように週50時間労働や最高幹部への昇進といった道筋とは違うものに見えているだけだ。
その代わりにZ世代の多くは、生活と仕事、起業への挑戦と自由な時間、成長と快適さといったことを視野に入れて未来を描いている。これこそ、上の世代に尊重してほしい中間地点なのだ。