セールスフォースのマーク・ベニオフCEO。
NICHOLAS KAMM/AFP via Getty Images
セールスフォース(Salesforce)は社員に対し、シニアマネジャーが時間外労働を厳しくチェックして、日常的に時間外労働をしている社員がいれば注意するよう伝達する模様だ。Insiderが確認した内部文書から明らかになった。
今月、一部のセールス部門社員に周知されたこの文書によると、週3時間以上の時間外労働を行う予定のある社員は、事前にマネジャーの許可を得る必要があるとしている。
また、社員は時間外労働をする可能性について毎週マネジャーと話し合うようにとも記している。 時間外労働をした社員は、他の社員とマネジャーが「記録を追跡し傾向を把握」できるように、時間外労働が必要だった理由を説明した文章と週ごとのタイムシートを提出するよう促されている。
さらに、週10時間以上の時間外労働を継続して行っている社員に対しては、「仕事量を評価し、繰り返される時間外労働に対処する」ためにシニアマネジャーが直接注意を与えるという。
セールスフォースのあるアカウントエグゼクティブと最近同社を退職した元社員は、時間外労働に関するこれらの方針はこの文書を見て初めて知ったとし、少なくとも一部は新たに導入されたものだと思うと話す。
しかし、セールスフォース側はこれを否定する。同社の広報担当者は、「これらのガイドラインは新しいものではなく、3年以上前から導入されています」という。
セールスフォースに時間外給与の対象となる社員がどれだけいるかは不明だが、大手テック企業にはたいていそのような社員が一定割合存在する。
“オハナ”文化は風前の灯火
今回Insiderが確認した文書は、特にセールス部門の社員に向けて書かれたものだ。セールスフォースの本社があるカリフォルニア州では、セールス部門の社員を含む免税資格を持たないさまざまな従業員に対しては、時間外給与を支払わなければならないことが法律で義務付けられている。
時間外労働をする社員には許可と制限が必要だとするこの文書の内容は、セールスフォースの大幅なコスト削減策の一環だ。Insiderの既報の通り、セールスフォースはベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)の支援のもと、レイオフやオフィススペース削減といったリストラ計画に取り組んでいる。
セールスフォースのマーク・ベニオフ(Marc Benioff)CEOは今年1月、約8万人いる社員のうち10%をレイオフすると発表した。この人員整理は段階を踏んで行われており、少なくとも2024年1月末まで続くとされている。ブルームバーグ(Bloomberg)のインタビューに答えたブライアン・ミルハム(Brian Milham)COOも、追加の人員削減を行う可能性を示唆している。
過去20年間、ベニオフ率いるセールスフォースはコストを顧みず成長を追求してきた。しかし現在はエリオット・マネジメント(Elliott Management)やスターボード・バリュー(Starboard Value)といった物言う投資家の出資を受けており、利益率を大幅に改善せよとの圧力をかけられている。
Insiderの取材に応じたセールスフォースの社員らは、レイオフやコスト削減のせいで社員の士気は下がっていると語る。
セールスフォースはこれまで、テック業界の中でも社員に対して寛容なアプローチをとる経営で知られていた。ベニオフは長年、社員のことを「オハナ」(ハワイの言葉で「家族」の意)と呼んできた。このブランディングはいつしかセールスフォースの代名詞となっていた経緯がある。
時間外労働の方針に引っかかったある社員は、次のように話す。
「セールスフォースのエコシステムは風前の灯火。物言う投資家ばかりが稼いでいる状態です」