合計27億円を資金調達。「AI音声」スタートアップElevenLabsが14枚のピッチデックを公開

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ElebenLabsのピョートル・ダブコウスキーCTO(左)と、マティ・スタニシェフスキCEO。

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いま注目のElevenLabs(イレブンラボ)は、ロンドン拠点のAIスタートアップだ。

元グーグル(Google)のピョートル・ダブコウスキー(Piotr Dabkowski、最高技術責任者)と、パランティア(Palantir)出身のマティ・スタニシェフスキ(Mati Staniszewski、CEO)が共同で創業した同社は、さまざまな言語の音声合成ボイスオーバーや音声吹き替えを作成できるプラットフォームを開発している。

2023年1月にサービスをリリースして数日後、4chanの荒らしがその技術を使ってジョー・ローガン(Joe Rogan)やエマ・ワトソン(Emma Watson)などの有名人の声を真似たことから、このスタートアップは大きな話題となった

ElevenLabsは同じ月に200万ドル(約2億7000万円、1ドル=135円換算)のプレシードの資金調達を発表。そこからわずか数カ月での今回の資金調達では、1億ドル(約135億円)のバリュエーションで1800万ドル(約24億円)を調達する予定だ。

この資金調達は、アンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen Horowitz)とGitHubの元CEOであるナット・フリードマン(Nat Friedman)が主導しており、ChatGPTが世界的に話題をさらったことで注目が高まったAIにベンチャーキャピタル(VC)が殺到していることの証左だ。

ElevenLabsは「文脈を考慮し、それに応じて音声を合成する」のだと、スタニシェフスキは今年1月にプレシードの資金調達時を発表した際にInsiderの取材に答えて語っている。

「この研究領域で分かったのは、テキストを理解することで、これまで不可能だったことを生み出せるということです」

ElevenLabsはさらに研究を進め、スピーチ時に文脈を考慮できる音声合成モデルの開発に注力することにした。「人間のイントネーションや抑揚」を生成し、可能な限りリアルな音声出力を実現するツールを開発することを目指している。現在は特許取得に向けて手続きを進めている。

幅広い活用例

活用事例としては、例えばYouTubeのクリエイターが自分の声を多言語に吹き替えたり、出版社がオーディオブックのナレーションに利用したりと、さまざまなケースが考えられる。

「ストーリーを伝えるために長尺モノに頼っている独立系出版社、著者、ニュースレターのライターにとっては、素晴らしいツールになると確信しています」(スタニシェフスキ)

現在でも短い音声クリップを作成できるサービスは多数あるが、ElevenLabsは「文脈に沿って」「膨大な量のテキスト」をレンダリングできるのが特徴だ。

研究主導型の企業として、同社はボイスクローニングにますます力を入れている。開発しているのは、「非常に迅速に声を作成し、複製する」ことができるツールだ。ユーザーは自分で発声することなく、オリジナルの声で長尺の録音を作成することができる。

ElevenLabsのサービスはサブスクリプションモデルを採用しており、サービスを試用できる無料版とクリエイター向けのスタンダード版がある。

1月の資金調達に先立ち、創業者2人はスタートアップ・アクセラレーターを利用することも検討したものの、あるプログラムに参加することが決まったため最終的には利用を見合わせた。

「研究面ですべきことは分かっていたので、アクセラレーターの道は選ばないことに決めた」とスタニシェフスキは語る。

同社が資金調達に漕ぎつけたのは、AI音声ツールというヨーロッパでは比較的新しくニッチな分野に特化している点が決め手となった。

今回のプレシードでの資金調達を主導したのは、これまでにもUiPathやApiaryを支援してきたチェコのアーリーステージVC、クレド・ベンチャーズ(Credo Ventures)だ。また、ロンドンを拠点とするプレシードファンド、コンセプト・ベンチャーズ(Concept Ventures)や、ペーター・ツァバン(Peter Czaban)、タイタス・シトフスキー(Tytus Cytowski)などのエンジェル投資家も追加資金を提供している。

ElevenLabsの長期目標は、あらゆる言語に対応すること。今回の資金調達の一部は、自動吹き替えのさらなる研究に使われる予定だ。

以降では、ElevenLabsがシードラウンドの資金調達の際に用いた14枚のピッチデックを公開する。


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