こんなオフィスなら出社したい? レストラン・病院・ホテルを併設、郊外のミニタウンのようなオフィスが人気

ベル研究所の歴史あるビルを再開発したベル・ワークス・ニュージャージー(Bell Works New Jersey)

ベル研究所の歴史あるビルを再開発したベル・ワークス・ニュージャージー(Bell Works New Jersey)。

Somerset Development

電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベル(Alexander Graham Bell)の名前を受け継ぐベル研究所(Bell Labs)は2007年、ニューヨークから車で1時間、ニュージャージー州の郊外ホルムデルにある200万平方メートルのビルを閉鎖した。

それから16年、かつては時代をリードするR&D施設だった巨大ビルは「メトロバーブ」(都市圏を表す「メトロ」と郊外を表す「サバーブ」を組み合わせた造語)に生まれ変わったと、古いビルをリノベーションして誕生した「ベル・ワークス・ニュージャージー(Bell Works New Jersey)」のオーナー、サマセット・デベロップメント(Somerset Development)のラルフ・ザッカー(Ralph Zucker)社長は語った。

1940年代に科学者たちがトランジスタを発見した時と同じような賑わいを見せているが、今は数十のさまざまなオフィス、多数のレストラン、モンテッソーリ教育を行う学校、そして誰でも利用できる屋内バスケットボールコートもある。

高い入居率

さらに注目すべきは、リモートワークの進展で多くのオフィスビルがテナント集めに苦戦している傾向に反して、ベル・ワークス・ニュージャージーではテナントが増え続けていることだ。入居率はパンデミック前の75%から95%に上昇し、未来の働き方、暮らし方、遊び方のモデルになるかもしれないとザッカー氏は考えている。

同社はニュージャージーでの成功を受けて、シカゴ郊外、150エーカー(約60万平方メートル)に広がる旧AT&Tビルでも「ベル・ワークス・シカゴランド(Bell Works Chicagoland)」を展開している。

またフロリダ州ボカラトンにある170万平方メートルの広大な旧IBMオフィスではデベロッパーのCPグループ(CP Group)が「ボカラトン・イノベーション・キャンパス(Boca Raton Innovation Campus:BRiC)」を手がけている。同社によるとアメリカ南部で最大規模という。

オフィスビル市場を取り巻く環境が厳しくなるなかで、住居と仕事場、そして広々として緑豊かな郊外の魅力を兼ね備えたこうした巨大プロジェクトは、新しい需要を捉えようとするデベロッパーの注目を集めている。

複合施設というアイデアは以前からあるが、こうしたプロジェクトが解決しようとしている問題、すなわちオフィスビルの空室とリモートワークの定着は大規模物件のオーナーにとっては新しい課題であり、不安は大きくなっている。

サマセット・デベロップメントのラルフ・ザッカー社長

サマセット・デベロップメントのラルフ・ザッカー社長。

Somerset Development

だが不安を感じる必要はないと、不動産開発に長く携わってきたザッカー氏はInsiderに次のように語る。

「パンデミック中、あるいはパンデミック後に分かったことは、オフィスは死んでいないということ。退屈なオフィスが死んだのです」

「究極のアメニティは生活」

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