志摩スペイン村のエントランス付近。コラボグッズのクリアファイルと共に。
撮影:吉川慧
2月から4月にかけて、三重・志摩市にあるテーマパーク「志摩スペイン村」と人気VTuber「周央サンゴさん」のコラボイベントが大きな話題を呼びました。
志摩スペイン村によると、イベント期間のうち2月〜3月の来場者数は23万6000人(前年比約1.9倍)。サンゴさんが「世界一うまい」と紹介したチュロスは一日平均で1000本(例年の約33倍)という驚異の売り上げを記録しました。
Business Insider Japanでは志摩スペイン村を取材。サンゴさんとのコラボに至った背景やイベントのPR戦略など詳しい話を聞きました。
背景を追うと、もっぱら「人気VTuberとのコラボがうまく働いた」といった話にとどまらず、双方の丁寧なコミュニケーションから生まれた企画だったことがうかがえます。サンゴさんと志摩スペイン村、互いが抱いていた「愛」と「リスペクト」がイベントを成功に導いたといえる構造が見えてきました。
目次
- 「周央サンゴ」と「志摩スペイン村」とは?
- 「好き」が詰まった45分間、サンゴさんが情熱的に語った「初めての志摩スペイン村」
- サンゴさん、再び「志摩スペイン村」へ。愛を込めて語った90分→トレンド入り
- 「来て!」と呼びかけて、23万6000人超が「来た!」。チュロス売上は33倍に
- 本気のコラボ、志摩スペイン村「サンゴさんとファンの愛に応えたい」
- これまでの「文脈」を丁寧に意識、志摩スペイン村の「世界観」も大切に
- 再認識された、志摩スペイン村の“ポテンシャルの高さ”
- 「志摩スペイン村に客殺到」NHK、民法キー局、全国紙も報道
- 周央サンゴ、志摩スペイン村、そしてファン…互いの愛とリスペクトが相乗効果を生んだ
- サンゴさん「コラボ期間外でも足を運んで」志摩スペイン村「交流続けていきたい」
「周央サンゴ」と「志摩スペイン村」とは?
ここで、簡単に周央サンゴさんと志摩スペイン村について説明しておきましょう。
周央サンゴ
周央サンゴさん(通称:ンゴ、ンゴちゃん)は、国内最大規模のVTuberプロジェクト「にじさんじ」に所属するVTuber。世怜音(せれいね)女学院演劇同好会(通称「セレ女」)というユニットの一員でもあります。
テーマパークやサンリオ(特に「ポチャッコ」)が好きで、中学生とは思えないインターネットの知識や語彙力から繰り出されるエピソード豊かな雑談、独特のセンスが垣間見えるゲーム実況が魅力。朗読劇やTRPG、演劇、ミュージカルへの造詣も深く、「にじさんじ」がYouTubeで配信する公式番組でナレーターを務めるなど多才なVTuberです。
にじさんじ運営元の「ANYCOLOR」は2022年6月、東証グロースに上場。上場初日は買い気配のまま初値がつかず、同年9月に一時は時価総額が民放キー局を上回る3000億円超となったことでも話題になりました。
志摩スペイン村
志摩スペイン村の「シベレス広場」
撮影:吉川慧
「志摩スペイン村」は、1994年4月に開業した近鉄グループの複合リゾート施設。スペインの町並みを再現したテーマパーク「パルケエスパーニャ」、ホテル、温泉施設からなり、関西圏では伊勢神宮や鳥羽水族館と並ぶ三重県の観光地として知られています。
ただ、交通アクセスの厳しさ(最短で東京から約3時間50分、大阪から約2時間30分)もあり、かつて「並ばないから乗り放題」「空いてるから映え放題」といった自虐的とも思えるPRを展開し、話題になりました。
「好き」が詰まった45分間、サンゴさんが情熱的に語った「初めての志摩スペイン村」
そんなサンゴさんと志摩スペイン村が、なぜコラボレーションしたのか。きっかけは2021年12月11日、サンゴさんがYouTubeで配信した雑談にさかのぼります。
怒涛の志摩スペイン村体験記は10:26頃から。
「今日はこの話がしたかった」と切り出したサンゴさんは、友人たちと一緒に「ずっと(×8)行きたかった」という志摩スペイン村を訪れたエピソードを語り始めました。
話は最寄りの鵜方駅(近鉄線)の描写からはじまりますが、「めちゃめちゃ派手な駅ってわけではない」「ぶっちゃけ盛り上がりには欠ける」「志摩スペイン村行きのバスが普通のローカルなバス」などなど、冒頭から率直すぎる感想を披露しました。
近鉄志摩線の鵜方駅。名古屋から特急で2時間ほど。志摩スペイン村の玄関口だ。
撮影:吉川慧
ところが、鵜方駅から乗ったバスが動き出した瞬間、車内に志摩スペイン村のテーマソング「きっとパルケエスパーニャ」が流れると世界は一変。サンゴさんのテンションは爆上がり。配信でも歌を口ずさみながら、大興奮した思い出を回想しました。
周央サンゴさんがカバーした「きっとパルケエスパーニャ」。原曲はiTunesなど各種ストリーミングサービスでも配信中。ロックバンド「ヤバイTシャツ屋さん」がカバーしたことでも知られる。
そこからのサンゴさんは止まりません。「楽しいアトラクションがいっぱい。良すぎて3周ぐらいした」「キャストさんが優しく、接しやすい」「キャラクターグリーティングがめっちゃ丁寧。対応エグすぎ」「パレードはすごい凝った山車が何台も出て豪華」「現地のスペイン村オタクの皆さんが本当に素敵な人たち」など、感銘を受けた点を矢継ぎ早に紹介していきます。
また、テーマパークに深い愛を持つサンゴさんらしく、志摩スペイン村のキャラクター達への分析にも独自の視点を交えて、こう語っています。
「メインキャラクターのほとんどが、おそらく成人済み」
「一番メインを張っているであろうドンキホーテさんは、一人称が“吾輩”。結構、攻めてんねぇと思ったんだけど。濃いめのキャラ設定だよね、イケメンとかでもなく、おじさんの感じ」
「志摩スペイン村というテーマパークを考えたとき、スペインの景色や景観を楽しめる文化的側面、アトラクションを楽しめる大衆娯楽的な側面があって。キャラクターは、やっぱり子供たちに馴染んでもらうみたいなところも結構デカいのかなと思ったところで、そのメインキャラクターのうち6分の5が成人済み。しかも結構おじさんだっていうのは、なかなかおもろいなと思って、結構大ウケしたところです」
志摩スペイン村のキャラクターたちの相関図。
撮影:吉川慧
さらに「目玉のジェットコースター『ピレネー』の待ち時間が10分」「人がいなさすぎてインスタ映えするって言ってたのは伊達じゃない」など、素直すぎる感想も挟みつつ、約45分にわたって志摩スペイン村の魅力を喋り倒しました。
この志摩スペイン村への「好き」が詰まったサンゴさんのトークは、志摩スペイン村側もキャッチ。ここから両者の交流が始まりました。
「2021年12月に、周央サンゴさんが、来園されたエピソードをYouTubeのチャンネルにて配信されました。かなり詳しく志摩スペイン村の魅力を率直に、また愛をたっぷり込めて紹介してくださいました。その時はじめて、当社の公式Twitterからコミュニケーションをとりました」
(志摩スペイン村広報)
サンゴさん、再び「志摩スペイン村」へ。愛を込めて語った90分→トレンド入り
その後も志摩スペイン村は、「(サンゴさんの)配信をチェックしたりTwitter上でサンゴさんとコミュニケーションをとったりして仲を深め」(志摩スペイン村広報)ていきます。
サンゴさんも志摩スペイン村にすっかりハマった様子で、2022年5月7日の雑談配信でも「わかちあいたいこと」として志摩スペイン村、パルケエスパーニャを再び訪問したことを明かします。
90分にわたる「志摩スペイン村再訪期」は10:07頃から。
今回は母親(通称「お母さンゴ」)と訪れたサンゴさんは、一緒に食べたチュロスに感動。その美味しさを「世界一うまい。今まで食べていたのはチュロスじゃない」「tasty……(*サンゴさんが「美味しい」を表す言葉の一つ)」と表現します。
周央サンゴさんが「世界一うまい」「tasty……」と評したチュロス。チョコとシナモン(各460円)。外はカリッと、中はモチモチ。
撮影:吉川慧
さらに園内のカンブロン劇場で公開されているアニメ作品『空飛ぶドンキホーテ』の面白さを独特の視点で解説したり、隣接する志摩スペイン村ホテルの夕食が豪華すぎることもハイテンションで紹介しました。
カンブロン劇場。
撮影:吉川慧
また、この時も「人と交通の便だけが全く足りていないテーマパーク」「舐めていました。ピレネーに1分も並ばなかった。本当に人がいない」など率直すぎる感想を語りつつ、「本当にいいテーマパーク。スペインの文化を大切にしつつ、遊園地的な側面も大事にし、その調和を図っている」と、アミューズメント施設としての魅力を高く評価しています。
サンゴさんは「とにかく足を運んでほしい」「近鉄グループのホテルに宿泊すると、パルケエスパーニャのパスポートが2日分で3500円。価格がバグっている」「交通の便と人がないのはあまりに惜しい。どうしても志摩スペイン村に行ってほしい」と、約90分にわたって語り尽くしました。
志摩スペイン村の園内ではスペインの町並みを再現している。フランシスコ・ザビエルの生家をモチーフにした「ハビエル城博物館」ではスペインの歴史を紹介。旧石器時代の洞窟「アルタミラ洞窟」の壁画の実物大レプリカは必見。
撮影:吉川慧
この配信後、視聴者の切り抜き動画がきっかけで「志摩スペイン村」がTwitterトレンド入り。志摩スペイン村の影山豊村長(社長)は、深夜に「志摩スペイン村」がトレンド入りしたことを見つけ、何が起こったのかと自ら調べたそうです。
ホテルでは「【お一人様限定】シングルユース 素泊まりプラン」を導入するなど、高まる需要に対応する体制を急遽整えました。
「社長は、夜中の2時〜3時頃、トイレに目が覚め、スマホを見たところ、志摩スペイン村がトレンド1位になっていたそう。びっくりするも状況がわからず、管理職のグループLINEに尋ねるも、深夜なので返信がありません。結局、社長が自ら一生懸命に調べました。『VTuberとは何か』から、周央サンゴが人の名前かも分からないような状態から調べていったそうです。
悶々とし数時間、6時半頃にようやく管理職LINEに既読が1つ付き、教えてくれるかなと待っていたものの…たぶんその管理職の人も調べていたのでしょう。と、当時を振り返り、その後も周央さんのおかげで何度もトレンド入りし、正式に広報大使に就任してもらうことになったそうです」
(2023年2月11日・あとなびマガジン「地方パークとVTuber 異色コラボが見る未来 志摩スペイン村×周央サンゴの経緯と展望」より)
こうした経緯を経て、志摩スペイン村は「ANYCOLOR株式会社からコンタクトがあり、正式に協議することとなりました」(志摩スペイン村広報)と、コラボを検討した経緯を明かします。
その後も、サンゴさんの「3Dモデルお披露目配信」では「きっとパルケエスパーニャ」がED曲で用いられたり、志摩スペイン村からサンゴさんにプレゼントが送られたり、交流が続きました。
志摩スペイン村との交流を見守ってきた周央サンゴさんファンにとって、3Dお披露目配信のエンディングで「もっとパルケエスパーニャ」が流れたことは、感慨深いものだった。
2022年7月、サンゴさんが公式に志摩スペイン村を訪問。同年8月にはサンゴさんがスペイン村を堪能する様子を紹介するコラボ動画が配信されました。
その後、ANYCOLORと志摩スペイン村は協議を重ね、「8月のコラボ動画からさらに新たな試みを進められればということで、インターネットの世界を飛び越え、リアル(園内)でのコラボイベントを実施するに至った」(志摩スペイン村広報)そうです。
こうして実現したのがサンゴさんの志摩スペイン村バーチャルアンバサダー(広報大使)就任(2022年12月27日)と、2023年2月11日〜4月2日のコラボイベントでした。
ここからは志摩スペイン村がコラボイベントの実施に際して、どんな工夫をし、それがどんな成果につながったのか。志摩スペイン村への取材とともに、詳しく見ていきましょう。
「来て!」と呼びかけて、23万6000人超が「来た!」。チュロス売上は33倍に
実際コラボイベントでは、どのような成果があったのでしょうか。
以下は、志摩スペイン村から回答があったコラボ期間中の入園者数などの数値のまとめです。
コラボ期間の入園者数(2023年2月〜3月)
- イベント初日(2/11[土]):7000人(前年同曜日3000人、対前年比約2.3倍)
- 2月計:7万2000人(前年3万人、対前年比約2.4倍)
- 3月計:16万4000人(前年9万2000人、対前年比約1.8倍)
- 2〜3月計:23万6000人(前年12万2000人、対前年比約1.9倍)
チュロスの売上本数(ピザ ラ ロハ店)
- イベント初日:約1000本(例年の2月休日は平均40本、例年比約25倍)
- 期間中(2/11〜4/2):1日平均 約1000本(例年の1日平均は約30本、例年比約33倍)
カンブロン劇場の入場者数(コラボイベントの上映作品の観覧者)
- 対前年比10倍(*定員374名)
Twitterフォロワー数の推移(およそ1年間で約6倍に)
- 2022年2月:約1万人
- 2022年5月のトレンド入り後:約5万人
- 現在:7万1000人
(*コラボグッズ・メニュー等の販売数量や売上は非公表)
志摩スペイン村によると、コラボイベント初日(2月11日)は対前年比で約2.3倍となる7000人が来園する好評ぶり。2〜3月には合計23万6000人(前年比約1.9倍)が訪れました。
また、サンゴさんが「世界一うまい」と評したチュロスは1日平均で約1000本を販売。例年比で約33倍に売り上げが急増しました。
コラボイベント最終日の志摩スペイン村。大いに賑わっていた。
撮影:吉川慧
サンゴさん自身もコラボイベント期間中、同じ「にじさんじ」所属のVTuberである壱百満天原サロメさんとお忍びで志摩スペイン村を訪れたことをコラボイベント最終日に配信した雑談で明かしました。
サンゴさんも、訪れた日の来場者の多さに驚きを隠せない様子でした。
「入って早々、人が多くて!」
「もちろん、ンゴだけのパワーじゃない、正直。春休みパワーもデカい。信じらんないくらい人が多い!」
「人がいすぎて、『え!??!?!??!』になって」
「スペイン“市”だった可能性がある。村どころじゃなかった」
志摩スペイン村によると、イベント開催中は入園者の年齢層・客層にも変化が見られたそうです。
「イベント開催前は小学生以下のお子様連れのファミリーが多かったですが、イベント開催中は、若年層(10代~20代)の男性グループや女性グループ、お一人様の方も多くご来園いただきました」
「コラボイベントの実施をきっかけに初めてお越しくださったお客様、特に、若年層の男性グループや女性グループにたくさんお越し頂きました。中には、小学校の修学旅行で来てくださったというお客様もいらっしゃり、懐かしく、子供の頃と違う楽しさがあるというお声も頂きました。
お客様のお声に、全国よりお越しいただいていることがうかがえ、中には、かなり遠方よりお越しいただいたというお客さまも見え、感謝の気持ちでいっぱいです」
(志摩スペイン村広報)
本気のコラボ、志摩スペイン村「サンゴさんとファンの愛に応えたい」
充実のコラボグッズ。
撮影:吉川慧
今回のコラボイベントでは、志摩スペイン村側の“本気度の高さ”も話題になりました。
VTuberと企業のコラボは「案件」とも呼ばれ、VTuber事務所にとって収益の柱の一つにもなっています。
過去には、同じ事務所のVTuber複数がテーマパークとコラボする事例(いわゆる「箱コラボ」)はいくつかありましたが、今回のようにテーマパークが一人のVTuberに焦点をあて、しかも2カ月にわたってイベントを実施するのは珍しい事例です。
描き下ろされた周央サンゴさんのパネル。スタンプラリーのチェックポイントに設けられた
撮影:吉川慧
コラボイベントで用いられるイラストにも、志摩スペイン村の本気度がうかがえました。
今回のサンゴさんとのコラボでは、パルケエスパーニャにゆかりのあるイラストをはじめ、グッズ・コラボフードやスタンプラリーでも複数枚の描き下ろしイラストが用いられるなど、費用と工数をかけたことが垣間見えた点も話題になりました。
ここまで本気のコラボに踏み切った背景・理由について、志摩スペイン村はこう説明します。
「サンゴさんの深い志摩スペイン村愛や、志摩スペイン村とサンゴさんの関係を温かく見守ってくださったり応援してくださっていたファンの方々の愛に応えたいと思いました。
『志摩スペインゴ村に来た!』という特別な思い出を作っていただければと思い、志摩スペイン村のキャラクター“ダルシネア”の衣裳をまとったサンゴさんや、フラメンコ衣装のサンゴさん、配信でサンゴさんが触れてくれていたパレードに登場するブドウの衣裳を着たサンゴさんなど、独自のイラストを描き下ろしました」
(志摩スペイン村広報)
これまでの「文脈」を丁寧に意識、志摩スペイン村の「世界観」も大切に
チュロスを手に笑顔の周央サンゴさんのイラストパネル。
撮影:吉川慧
コラボイベントでは、期間限定で実施されたアトラクションなどにも工夫が見られました。
実際にサンゴさんが好きだと言及したアトラクションをコラボに取り入れるなど、丁寧に「文脈」を意識していたことも特徴でした。
例えば、期間中に人気を集めたカンブロン劇場では、サンゴさんが気に入った『空飛ぶドンキホーテ』をサンゴさんの副音声付きで上映。サンゴさんが「世界一うまい」と評したチュロスを手にしたイラストも用意しました。
コラボをきっかけに訪れた人に向け志摩スペイン村の魅力を伝える上で気を配った点について、広報担当者はこう説明します。
「サンゴさんが配信で話してくれていた『楽しかった体験』をみなさんにも実際に味わっていただけるのがリアルイベントならではの醍醐味だと思い、配信で熱く語ってくれていたサンゴさんお気に入りの場所や食べ物などに焦点を当てました」
(志摩スペイン村広報)
カンブロン劇場でのアニメ「空飛ぶドンキホーテ」の案内。周央サンゴさんの副音声が付くバージョンと通常バージョンが上映されていた。
撮影:吉川慧
一方、志摩スペイン村を初めて訪れる人と既存のファン、いずれの人々にも楽しんでもらえるよう配慮。そのために志摩スペイン村・サンゴさん・ANYCOLORが協力してアイディアを考えたことも明かしました。
「また、サンゴさんご自身や事務所のANYCOLOR様が大切にしてくださったのが志摩スペイン村の世界観です。
サンゴさんのファンが楽しめるのはもちろん、元々の志摩スペイン村のファンや家族連れの方々など、みんなが楽しめるように、施設全体をサンゴさん一色で染めるというよりは、志摩スペイン村の魅力をそのままに楽しんでもらえるようにと、一緒にアイデアを考えてくれました。
たとえばアニメーションの上映についても、オリジナル版の『空とぶドンキホーテ』とサンゴさんの副音声バージョンの両方を上映したことで既存の志摩スペイン村ファンやファミリーのお客様にも楽しんでもらえるようにしました」
(志摩スペイン村広報)
再認識された、志摩スペイン村の“ポテンシャルの高さ”
コラボイベント最終日に。カルメンホールのフラメンコショー「Legado」は大人気。2回公演が満席、追加公演も設けられていた。
撮影:吉川慧
「志摩スペイン村の世界観や魅力をそのままに楽しんでもらえる」という方針は、コラボイベントをきっかけに初めて志摩スペイン村を訪れた人の心にも響いたようでした。
来園者からは、志摩スペイン村が元来持つ“ポテンシャルの高さ”に感心する投稿がTwitterに寄せられていました。
実際にパルケエスパーニャを訪れると、サンゴさんをはじめとする「にじさんじ」ライバーのぬいぐるみやアクリルスタンドを手に写真を撮る人をよく見かけました。
また、フラメンコのステージに感動したり、パレードでキャストやキャラクターと一緒に楽しそうに踊っていた来園者の姿も印象的でした。
Twitter上では、パレードで明るく楽しそうに踊るキャスト・キャラクターからのウインクや投げキッスなどの「ファンサがすごい」ことも話題になりました。
「サンゴさんのコラボイベントに限らず、志摩スペイン村のフラメンコショーやストリートミュージカルなども大変好評いただいておりました。
ご来園された方のツイート等を拝見していると、周央サンゴさんのコラボイベントをきっかけに志摩スペイン村を訪れたが、ショーやピレネー、料理など志摩スペイン村のそのものの魅力に惹かれたといった温かいコメントがございました」
(志摩スペイン村広報)
「ファンサがすごい」と好評のパレード「エスパーニャカーニバル "アデランテ"」。「ドンキー」と「サンチョ」などのキャラクターやキャストたちが明るく踊る。
撮影:吉川慧
サンゴさんとのコラボアトラクションの一つ「スタンプラリー」では、ゴールで景品を受け渡す際にスタッフが「おつかれさんご」の言葉で労ってくれました。
また、園内に設置されたサンゴさんのイラストパネルがイベント最終日まできれいな状態で維持されていたことなど、ホスピタリティの高さも好評を博しました。
スタンプラリーを完走すると「おつかれさんご」の労いの言葉とともに特製シールをもらえた。
撮影:吉川慧
キャスト・スタッフのサービスやホスピタリティの高さが評価されたことについて、志摩スペイン村広報はこう語ります。
「コラボ期間だから特別に接客に力を入れたというわけではなく、いつも通りの対応だったのですが、そのように言っていただけて大変嬉しく思います。
不慣れなこともあり、ご迷惑をおかけすることも多々あったかとは思いますが、来ていただいた方に少しでも楽しんでいただければと、現場のキャストも各々サンゴさんの配信を見て勉強したり、いろんな工夫をしてくれていたように思います。
また、エンターテイメントについても、演者とお客さまの距離が近いところが志摩スペイン村の魅力のひとつですので、そういったところを今回みなさんに楽しんでいただけて嬉しいです」
(志摩スペイン村広報)
「志摩スペイン村に客殺到」NHK、民法キー局、全国紙も報道
今回のコラボイベントは、これまで志摩スペイン村の存在を知らなかった地域の人々や、馴染みのなかった世代にリーチすることができたことも、大きな成果だったようです。
インターネットを起点に来場者が増加したことで、日本テレビ系「news every.」は「志摩スペイン村に客殺到」と伝えたほどでした。
NHKや民放キー局、全国紙をはじめマスメディアに報道されたことも、来場者のさらなる増加に寄与したと、志摩スペイン村では分析しています。
コラボイベントのPRについて、志摩スペイン村はこう総括します。
「今回のコラボイベントでは、周央サンゴさんのおかげで、10・20代の若年層の方や東海・関西以外のエリアの方にも志摩スペイン村を認知していただく良い機会となりました。
コラボイベントのPRでは、インターネットの世界に影響力のあるサンゴさんなので、リアルな媒体を中心に展開しました。名古屋・大阪に加え、東京(渋谷・秋葉原・新宿・浅草)でも屋外ビジョン広告を実施。近鉄駅でのポスターや近鉄駅でのビジョンの他、電車の中を広告ジャックしたADトレインも実施いたしました。
多くのテレビ番組でも今回のコラボを取り上げていただいたので、幅広い方に周知することができました」
(志摩スペイン村広報)
志摩スペイン村にとっても、ここまで大きなコラボイベントは初めての事例。「サンゴさんやお客様が見つけてくれた魅力ポイントがたくさんありました」とふりかえります。
「ここまで大きなコラボイベントを実施するのは初めてのことだった(ANYCOLOR様側としても初めてだそうです)ので、たくさんの発見や学びがありました。
また、配信やSNSの投稿などを拝見していると、我々従業員目線では当たり前だと思っていて気づかなかった、サンゴさんやお客様が見つけてくれた志摩スペイン村の魅力ポイントがたくさんありました。
そういったみなさんが見つけてくれた志摩スペイン村の良さや、より楽しんでいただくための改善点などを今後の運営や企画などに活かしていきたいと思います」
(志摩スペイン村広報)
周央サンゴ、志摩スペイン村、そしてファン…互いの愛とリスペクトが相乗効果を生んだ
カンブロン劇場のロビーに「来て!」ポスター。気合いの10枚掲示。
撮影:吉川慧
ここまでふり返ったように、全ての始まりはテーマパーク好きのサンゴさんがプライベートで訪れた志摩スペイン村での体験を愛を込めて、率直に語った雑談配信でした。
それを有志の視聴者が切り抜き動画として編集・ネット上に投稿。これが話題になり、志摩スペイン村公式が把握。ANYCOLORとの協議を重ね、やがて大規模なコラボイベントに至った……というのがおおよその流れになります。
取材を通じて見えたのは、ネットで話題になったりTwitterでバズった後も、サンゴさんと志摩スペイン村が交流を深め続け、やがて「案件」というビジネスになっても、互いに愛とリスペクトを忘れず、相手のファンや世界観を重んじていたことでした。
- サンゴさんが本気で志摩スペイン村を愛し、その魅力を熱量たっぷりに語り、それがファンにも伝わったこと。
- 志摩スペイン村側としても、サンゴさんの“志摩スペイン村愛”と、サンゴさんとの関係を見守って応援してきたファンの愛に応えようとコラボに本気で臨んだこと。
これらが相乗効果を生み、交通の便の悪さも厭わず多くの人が現地を訪れ、コラボイベントを成功に導くことができたと言えそうです。
周央サンゴさんは近鉄ともコラボ。特急車内や鵜方駅でのアナウンスも担った。
撮影:吉川慧
4月2日をもってサンゴさんとのコラボは終わりましたが、志摩スペイン村ではコラボをきっかけに訪れた人にもリピーターになってもらえる施策を検討しています。
「春夏秋冬の季節ごとのイベントや、花火やナイトパレードを上演するゴールデンウィークや夏休みのナイター営業など、コラボイベント期間とはまた違った志摩スペイン村の魅力を楽しみに、またご来園いただけたら幸いです。
今回ありがたいことに、コラボイベントだけでなく、志摩スペイン村のキャラクターたちや、エンターテイメント、料理、景観など、志摩スペイン村の元からあったコンテンツについても好評をいただいておりますので、そういったコンテンツを、まだ志摩スペイン村に訪れたことがない方々に興味を持っていただけるようPRしていきたいと思います」
(志摩スペイン村広報)
サンゴさん「コラボ期間外でも足を運んで」志摩スペイン村「交流続けていきたい」
撮影:吉川慧
盛況かつ無事にコラボイベントを終えた志摩スペイン村は、「改めて、周央サンゴさんの影響力に驚くとともに、心から感謝しております。また、期間中にご来園いただいたお客様、話題にしていただいたお客様に本当に感謝しております」と感想を語ります。
イベント終了後には感謝の気持ちを伝えるため、志摩スペイン村は公式Twitterで以下のようにツイート。ここにも、サンゴさんのファンに伝わるよう“文脈”が意識されていました。
「サンゴさんが配信でいつもやっていらっしゃる『楽しかったのコーナー』(「今日の配信はどうだった~?楽しかった~?」とサンゴさんが視聴者に問いかけるコーナー)を真似させていただき『ンゴちゃんとのコラボイベントはどうだった~?楽しかった~?』と志摩スペイン村の公式ツイッターに投稿したところ、たくさんの『楽しかった!』や『また行きたい!』などのメッセージをいただけて、大変嬉しく思いました」
(志摩スペイン村広報)
サンゴさんも「志摩スペイン村のステキなところが1人でも多くの人の心に残って、また足を運びたいねと思ってもらえることができたらなによりです」「コラボが終わっても、ずっと大好きなテーマパークです」「また会おう、エスパーニャ!」とツイート。
橋爪政吉・志摩市長も「期間中は、サンゴさんのパワーで、志摩市にたくさんの笑顔があふれていました」「志摩スペイン村と志摩市の魅力を多くの人に知っていただけたと思います。本当にお疲れ様でした!これからも志摩市はサンゴさんを応援しています」とツイート。サンゴさんも「ンゴも全力で志摩市を応援しつづけます!」と応じました。
志摩スペイン村は、「また行きたい!」と思ってもらえる体験を届けるとともに、今後もサンゴさんと交流を続けていきたいと語ります。
「今回のコラボを分析し、今後の展開を検討していきたいです。来年にはおかげさまで30周年を迎えますし、引き続き、みなさんに『行ってみたい!』『来てよかった!』そして『また行きたい!』と思っていただけるような、楽しいイベントや体験をお届けしていければと思います。引き続き、周央サンゴさんと交流を続けていきたいです」
(志摩スペイン村広報)
サンゴさんも、コラボイベントの最終日に配信した雑談で、「コラボ期間外でも足を運んでほしい」と語っています。
「志摩スペイン村って本当に素敵なところ……」
「決してね、行ったら絶対……というわけではないかもしれないけど、素敵なところなのは間違いないから。志摩スペイン村が素敵なところだと沢山の人に伝わったら……。それはンゴの影響じゃなくてもね」
「今回の思い出が残るのも嬉しいことだし、例えば何年か経った時に、『スペイン村ってあったよね』『そういえばあるね』『行ってみたくない?』ってなったりとか、『行った時楽しかったよね!』みたいな。みんなの中で志摩スペイン村という場所と、そこの記憶が素敵なものとして残ることが、本当に大事なことだとンゴは思っていて」
「スペイン村コラボは今日でおしまいになったわけですけど、スペイン村が素敵な所というのは変わらなくて。爆発的な人の入りが、もし無いくなったとしても、みんなの中でスペイン村が素敵な所だっていうのは頭に残っていると思うから、ンゴのコラボ期間外でも足を運んでほしいなと思います。
それで、ンゴのことを思い出してもいいし、そうじゃなくても、今回の思い出とか、ンゴは関係なくでもいいから、『楽しかったね』って言える思い出をたくさん作ってほしいなって思うにょ」
「これからも、スペイン村を推していきます!ありがとさーんご!」
(了)