各社の業績比較。事業領域が広いセブン&アイは、国内コンビニ事業単体の営業収益も掲載している。
各社決算資料をもとに編集部作成。
コンビニ3社の2022年度決算と2023年度業績予想が出揃った。各社を比較して見えてきたのは、ポストコロナ時代のコンビニ市況に対する見方の違いだ。
まず、2023年度の業績予想について、最大手のセブンイレブン(セブン&アイ・ホールディングス)は「2023年度は厳しい経営環境になる」(丸山好道 セブン&アイHD CFO)と想定し、営業収益については減収の予想をしている(後述)。
一方、ファミリーマート、ローソンの2社はともに2023年度の増収を見込む。最大手のセブンは海外事業も巨大であることがこの差に結びついているが、追う立場のファミマ、ローソン2社との事業ポートフォリオの違いが、業績予想に現れたといえる。
では、2022年度の各社の実績を見ていこう。
「小売り初の売上高10兆円超え」セブンイレブン(セブン&アイHD)
コンビニ業界で圧倒的な強さを誇るセブンイレブン。
撮影:今村拓馬
営業収益11兆8113億円(前年比35%増)と小売り初の10兆円超えとなり、各社が大きく報じた。なお、国内コンビニエンスストア事業単体では8902億円(同2%増)。営業利益は5065億円(同30.7%増)、当期純利益は2809億円(同33.3%増)。
コロナ禍でも好調な業績をあげたセブン&アイだが、丸山好道CFOは2023年度の業績予想について、「エネルギーコストや人件費の増加に加え、実質可処分所得の減少による将来不安からくる消費マインドの低下を懸念」しているとし、5%程度の減収予想とシビアな見方をしている。
ただし、内訳を見ると、減少要因のほとんどは、8兆円超を売り上げる「海外コンビニ事業」(7.5%の減収予想)であり、国内コンビニ事業についてはセグメント売上高で3.6%増を見込む。海外事業が巨大なセブン&アイならではの「減収予想」であることがわかる。
セブンは2021年にFrancfrancの一部株式を売却、2022年にオシュマンズ・ジャパン の全株式売却を完了し、2022年にはそごう・西武の売却を公表するなど、事業ポートフォリオの見直しを進めている。通期決算当日には、セブンカードサービスをセブン銀行傘下にする金融事業の再編とバーニーズジャパンの売却も公表した。
質疑応答では2度延期している、そごう・西武の売却に関する質問が相次いだが、「交渉中の事項」(井阪隆一社長)であることを理由に具体的な明言は避けた。
「人流の回復は予想以上」ファミリーマート
ファミリーマート店頭写真。
撮影:今村拓馬
ファミマは営業収益4615億円(前年比2.2%増)、事業利益640億円(同2%減)、当期純利益344億円(同61.9%減)と営業利益に相当する事業利益、そして当期純利益が落ち込んだ。
ファミマの細見研介社長は2022年9月に実施した値上げの影響について問われた質問に対して、「値上げ、価格改定というものに対する消費者の方のご理解が日を追うごとに進んでいった」と総括したうえで、「売れる商品の二極化が徐々に進んできている」と発言した。
「お弁当類より、低単価のおむすびの方が売れる。(さらに)おむすびの中でも高価格帯、コストパフォーマンスの良い高価格帯のおむすびが売れる」という興味深い現象が起きているという。
2023年度の業績予想(通期計画)については、「人流の回復は予想以上」(細見社長)であり、営業収益4950億、事業利益650億円、純利益360億円と、いずれも増収増益という見通しを公表している。
「メリハリとタイパ」ローソン
ローソン店頭写真。
撮影:今村拓馬
ローソンは営業総収入9886億円(前年比41.6%増)、営業利益551億円(同16.9%増)、当期純利益247億円(同37.9%増)と好調だった。
物価上昇の影響について記者から問われたローソンの竹増貞信社長は「(価格と価値の)メリハリ」という言葉を使い、「お客様が価格と(商品の)価値を見比べて、これは価値があるなと思っていただければ(中略)しっかり買っていただける」と語った。
また、コロナ禍直前の2019年度売り上げを100とした場合、「おにぎりやお弁当は87」と、売り上げが2019年水準に戻っておらず、その要因として「生活様式が変わったこと」と「人流減少」を挙げた。一方「デザートは105まで伸ばすことができた」とし、背景に「巣ごもりのストレス」があるのではないかとの見解を示した。
さらに、時間効率の良さを重視する価値観「タイパ(タイムパフォーマンス)」についても言及。「近くでササッと効率的に買い物をしたい。そういう日常生活需要にどういうふうに応えていけるのかということを試行錯誤しながらやってきた」と「近くにあるローソン」をアピールした。
ローソンは2023年度の業績予想(通期計画)について、国内コンビニ事業の営業利益は減益を見込む一方、純利益を290億円とする増益見通しを公表している。