借金返済のために… パキスタンで「現代の奴隷制」に追い込まれた、れんが窯で働く人々のリアル

パキスタン

Bilawal Bhatti and Maqbool Ahmed

  • パキスタンにはれんが窯の経営者からの借金を返済するため、1日1500個以上のれんがを作るよう強いられている人々がいる。
  • ただ、こうした人々はどのくらいの借金があるのか、どのくらいの期間働かなければならないのか、どのくらいの利息がついているのか、聞かされていない。
  • こうした形の"借金による拘束"は世界各地で見られ、NGOなどが"現代の奴隷"を解放すべく取り組んでいる。

パキスタンのタール砂漠では人々が"借金による拘束"を受け、その返済のためにれんが窯で何年も強制的に働かされている

れんが窯

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Source: Insider


気温が48度を上回ることもあるなど、厳しい労働環境の下で約150世帯が毎日1500個以上のれんがを作っている

れんが窯

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こうした人々の多くは"借金による拘束"を受けていて、返済のために働いている。彼らは1日に1.50ドル(約200円)を稼ぎ、もう1.50ドルは返済にあてると聞かされている。ただ、そこには何の契約書も合意書もなく、自分たちにどのくらいの借金があって、どのくらいの利息がついているのか、借金の完済まであとどのくらい働き続けなければならないのか分からないという人が多い。

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賃金が少ないため、生きていくためには裕福な経営者から借金を続けるしかない

働く人

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れんが窯で働くPoonjo Meghwarさんは数年前、医療費を支払うために借りた約560ドルの借金がまだ残っていると思っている

働く人

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妻、70歳になる母親、12歳の息子も皆、この借金を返済するために同じれんが窯で働いている。

窯の経営者はMeghwarさん一家が作るれんがを売るだけで、1週間でこれと同じ金額を手にすることができる。

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れんが作りは骨の折れる仕事だ —— まずは十分な土を集めて水と混ぜなければならない

働く人

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そして、その泥を粘土になるまで練り上げる

働く人

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ロバを使って毎日5000個近いれんがを窯に運ぶ

働く人

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作業員がれんがを地下の窯に積み上げ、何日も(通常は1カ月以上)かけて焼き上げる —— 窯の温度は1000度を超えると言われている

働く人

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Source: Al Jazeera, Insider


窯は砂で覆われ、隙間は木で埋められている —— 崩落の危険もあり、作業は命がけだ

働く人

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2022年7月には、作業員3人が燃えさかる窯に落ちて死亡した

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完成したれんがは家を建てたり、橋や用水路を支えたり、さまざまな建設現場で使用される

働く人

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こうしたれんが窯はパキスタンに2万カ所近くあり、南アジア全体では10万カ所以上ある。世界銀行によると、都市によっては公害の91%をこうしたれんが窯が占めているという。2022年11月の時点で、パキスタンの環境保護庁は約70の窯を閉鎖した

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猛暑に加え、粉塵を吸い込んだり、一酸化炭素や硫黄にさらされたりするため、死に至ることもある —— 子どもは特に危険だ

働く人

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児童労働はパキスタンでも違法だが、れんが窯では横行している

働く子ども

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れんが窯で働く人の3人に1人は未成年だと見られている。窯によっては、半数以上が10歳以下だという。

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れんが窯で起きていることは、1992年にパキスタンの憲法で禁止された「借金による拘束」の定義に該当する

れんが窯

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残念ながら、このような現代の奴隷制は特殊なものではない。Global Slavery Indexによると、アジア・太平洋地域だけで2500万人近い人々が"借金による拘束"を受けていると推定されている。農作業やれんが生産は"借金による拘束"が最も多い産業だ。

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メディアの報道などがあるにもかかわらず、シンド州の労働局は家族や子どもたちがそこで働いているという公式記録がないため、"借金による拘束"は証明できないと主張している

れんが窯

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専門家によると、れんが窯の経営者たちは政府とつながりがあるため、どんな処罰も免れることができるという。

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Society for the Protection of the Rights of the Child(SPARC)で働くZahid Theboさんは、れんが窯での児童労働を監視している —— このNGOは"借金による拘束"から逃れられない家族のために裁判を起こす活動をしていて、これまでに1万7000人以上の労働者の解放を支援してきた

SPARCの活動

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「人々が解放されてその顔に笑顔や喜びが見られた時や、幼い子どもたちの明るい顔を見られた時にわたしたちは他では得られないような精神的、感情的満足感を得ることができます」とZahid Theboさんは話している。

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解放後は「自由都市」を意味する「Azad Nagar」という施設に移動することもできる —— そこでは誰かに借金をすることなく、窯で働くことで賃金が得られる

窯

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Azad Nagarの住民の多くが"借金による拘束"の連鎖から抜け出せて良かったと話している —— ただ、このキャンプには水道や子どもたちが通える学校もないため、SPARCは政府に資金協力を求めている

れんが窯

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Azad Nagarの住民で、20年以上にわたって"借金による拘束"を受けていたPannu Faqeerさんは「ずっと抑圧されていました。彼らは賃金も払おうとしない。窯の経営者の事務所に監禁され、殴られたりもしました」と当時を振り返った

支援活動

Bilawal Bhatti and Maqbool Ahmed

Source: Insider


Pannu Faqeerさんは現在、SPARCの活動に協力していて、公判日には他の作業員の付き添いをしている —— 2013年には、労働者の権利に関するデモに参加していたところを襲撃された

支援活動

Bilawal Bhatti and Maqbool Ahmed

Source: Insider


「ここにいるから、わたしたちは自由なんです。もし窯にいたら、制約を受けたでしょう」とPannu Faqeerさんは話している

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