大手コンビニのパンコーナーにBASE BREADが並ぶ光景をよく見るようになった。
撮影:三ツ村崇志
完全栄養食をうたうパンやパスタなどを販売するベースフードが、東証グロース市場への上場後はじめてとなる2023年2月期(2022年3月〜2023年2月)の通期決算を4月14日に迎えた。
当初の業績予想である売上高102億円は下回ったものの、主力商品のパン「BASE BREAD」の販売数が自社ECを中心に伸びたことで、売上高は前年比約8割増の98.5億円、営業損益は、販管費の一時的な増加や原料価格の高騰などの影響を受けて9.7億円の営業赤字で着地した。赤字幅は前年の4.7億円から拡大。当期純損益は10億800万円の赤字となった。
決算会見の画面をキャプチャ
ベースフードの橋本舜代表は、
「非常に高成長を継続することができました。一方、営業利益率に関しては(マイナス幅が)やや拡大しています。2023年2月期は、上場後の成長戦略の『仕込み』をする、投資の拡大フェーズだったと考えています」
とこの1年を振り返った。
サブスクとコンビニ販売の「相乗効果」に期待
四半期別の売上高の推移。
BASE FOOD2023年度2月期通期決算説明資料
ベースフードの四半期別の売上高は、右肩上がりに伸び続けている。
直近の2023年2月期第4四半期では成長が鈍化しているように見えるが、橋本代表は「営業利益率と売り上げのバランスを見て調整をかけた影響であり、成長の鈍化を意味しているものではない」とする。
約100億円となった売上高を販売チャネルごとに切り分けると、自社ECが63億円(前年は38.3億円)、他社ECが12.8億円(10.2億円)、リテールチャネルが22.5億円(6.8億円)と、主力となる自社ECチャネルを着実に成長させながらリテール(小売り)での売り上げに力を入れてきたことが伺える。
自社ECチャネルは、ほとんど(2022年2月期段階で約7割)が「定期購入」(サブスク)にあたる。サブスク会員数は2023年2月期末の段階で前年初期から約3倍となる16万3000人へと増加した。解約率も6.7%と改善を続けており、成長を牽引している。
ECチャネルの売り上げ。
BASE FOOD2023年度2月期通期決算説明資料
この1年で3倍以上の成長をみせたリテールチャネルでは、セブンイレブンやファミリーマートなどのコンビニ大手への展開を中心に販売先となる店舗の開拓を進めている。2023年2月期末時点で、販売店舗数は約3万5000店舗にのぼる。ベースフードの販売比率の約9割を占めている完全栄養食のパン「BASE BREAD」がコンビニのパンコーナーに並ぶ光景は、都心部でよく見かけるようになった。
リテールチャネルでの売り上げ推移。
BASE FOOD2023年度2月期通期決算説明資料
ただ、コンビニやドラッグストア、スーパーなどの店舗が日本全国に約10万店舗あると考えると、この領域の伸びしろはまだまだある。この3月にも、これまで一部エリアにとどまっていたローソンでの販売について全国展開を発表したばかりだ。
今後予定されている商品ラインナップの拡充に伴い、現状で1カ月あたり約8100円という1店舗あたりの売り上げも改善が見込めると、橋本代表は自信をみせる。
また、コンビニなどへの展開は、販路が増えること以上の効果もある。
ベースフードでは、SNSやCMなどを通じたマーケティングを進めているが、いきなり定期購入するのはハードルが高い。コンビニなど、生活に身近な場所に展開することでまず1食分手に取ってもらい、定期購入へのハードルを下げることにつながることを期待する。
また、橋本代表は
「定期購入している方がちょっと追加したいときにコンビニで買い足したり、一度解約した人がリピート買いしたり、そこで新商品を知って定期購入に戻ってきてくださったり、そういうシナジーがあると思います」
とも語る。
成長への「仕込み」終えて、2年で黒字化目指す
ベースフードは、通期決算説明会で、2024年2月期の売り上げ予想を2023年2月期の1.6倍となる160億円と発表している。自社EC単体で売り上げで100億円、リテールの売り上げも今の倍となる45億円を目指す。
「これまで約50億、100億という形で成長してきたので、急成長ではありますが弊社としては無理のある数字ではないと思ってます」(橋本代表)
1.6倍成長の自信の背景にあるのは、新商品ラインナップの拡充と、営業利益率の改善策への手応えだ。
BASE FOOD2023年度2月期通期決算説明資料
ベースフードのこれまでの実績上、新商品を展開する際には、マーケティングコストや解約率が低下する傾向が分かってきているという。ただ、この1年で展開されたのは新商品が2点のみだった。
実は、ベースフードでは上場前後で研究開発(R&D)人材を大幅に拡充しており、新商品の「仕込み」を積み重ねてきた。橋本代表は「その成果が今期出てくる」と語る。現状、今期予定している新商品の数は、前期の4倍以上になるとしている。
「(前期に)仕込んだものが2024年2月期に出てきます。新商品や商品改善をすると各種KPIが伸びるという実績と、仕込んでいたものが今期出てくるという蓋然性の組み合わせで、売り上げ160億円は無理のない数字だと考えています」(橋本代表)
ベースフードが販売するBASE BREAD。全6種類展開している。
撮影:三ツ村崇志
また、9.7億円の営業損益の要因となった営業利益率の低さも、今期中にマイナス5%にまで改善。さらに、「2025年2月期での黒字化を目指しています」(橋本代表)という。
既に一部商品では、原材料の配合置き換えに伴う原価率の改善を進めている。加えて、5月には約10%の値上げを実施するほか、新商品の展開に伴う継続率の維持や解約者の復帰などの効果を見込む。
ベースフードの橋本舜代表。(撮影日:2022年11月)
撮影:竹下郁子
また、2023年2月期には上場後の成長戦略を仕込むために拡大していた採用についても、限定的にしていく方針だ。
なお、ベースフードでは、2022年から香港での販売を開始している。
2023年2月末時点で既に販売数は3.7万袋を突破。そのうち1.5万袋は2月単月での売り上げだ。
「プロダクトマーケットフィットが完了しつつあり、指数関数的に売り上げが増えていく状態になってきました。販売価格も日本より大幅に上げているのですが、売り上げ減少はありません。販売数を増やしたとしても、営業利益率は大幅な赤字にはならない状況だと考えています」(橋本代表)
香港での販売を通して感じているのは、中国市場のポテンシャルの高さだと語る。中国展開を進める上で一定のハードル、リスクはあるとしながらも、2024年2月期中の販売開始を目指して準備を進めている。
また、コロナ禍で撤退したアメリカ市場についても、
「アメリカはやはりポテンシャルのある市場なので、コストやリスクを考慮しながら、しっかりチャレンジしてしていきたいと考えています」
と、今後の海外展開に対する期待感を語った。