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Shopify(ショッピファイ)は、組織のフラット化と効率化に取り組む一環で、ターゲットを絞った「異例」の採用手法をとる計画だ。Insiderが入手した同社の内部文書から明らかになった。
Shopifyの人材採用部門で共有されたこの文書は、同部門の2023年上半期における戦略をまとめたものだ。Shopifyは年内の採用数を意図的に制限する判断を下したとしている。また、採用担当者は要求すべき基準を引き上げる必要があるという。そして、人材採用部門は採用手法を見直すことで「各ポストがそれぞれの分野において最高の人材によって満たされる」ことを目指すべきだとしている。
文書は「そのために我々は、地球上のあらゆる場所から世界トップクラスの人材を徹底的に探し求める」と続けている。
また、新しい採用プロセスの効果を測るために、採用担当者による人材獲得の早さや、離職率、新入社員のパフォーマンスレビューなどのデータを活用するとしている。
さらに文書はこう続けている。
「すべての評価ポイントで入社へのハードルを上げよ。人材採用を厳格化し、採用担当者に『及第点(good enough)』と評価された候補者は不採用にする。及第点は落第点だ」
文書は他にも、同社は「求めている人材が応募してくれるように『募集して祈る(posting and praying)』ことを減らし、より積極的な探索、優秀な人材の発見と獲得に関する大胆な実験」を実施するとしている。また、「ユニークかつ未開拓の領域でステルスな『スピアフィッシング』を行う」としている。
Shopifyの広報担当者は、この文書についてのコメントを拒否した。
Shopifyは、テック業界の他の多くの企業と同様に、経済的不確実性の中で、より少ないリソースでより多くのことをする方法を模索してきた。このカナダのEC企業は、2022年7月に従業員の約10%をレイオフした。この大規模なレイオフが発表される前後にも、同社は比較的少数の従業員を目立たない形でレイオフしている。2023年3月には、正社員として入社する予定だった多くの元インターン生の採用通知を取り消した。
Shopifyは2023年、組織構造のフラット化に向けた方策を進めてきた。2023年3月には、従業員をマネージャーと「クラフター(crafter:「職人」「巧みな技を持つ者」の意)」に二分する新たな枠組みを発表した。より多くの従業員にIC(Individual Contributor:部下を持たない社員)として主体的な貢献を促すインセンティブを与えることが狙いだ。マネジャーはリソース計画や戦略を練るなどの業務に時間を費やし、クラフターは製品開発に専念する。新しい枠組みでは、マネジャーであることは報酬には影響しない。
メタ(Meta)もまた、レイオフを進める中で会社全体の効率化を図るため、多くの中間管理職に個人貢献者としての新たな役割を求めていると言われている。Shopifyもメタと同様に、厳しい経済情勢の中で効率性に新たな重点を置いたのである。
Shopifyのトビアス・リュトケCEO。
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Shopifyから流出した内部文書には、CEOのトビアス・リュトケ(Tobias Lütke)が1月に発言した内容が引用されており、そこでは、管理職の採用を減らし、深い技術的知識の持ち主の採用を増やすことの必要性が強調されている。
「騎兵隊の将校は馬に乗れなくてはならない」(リュトケ)
また、文書によれば、リュトケは社内の各リーダーに「ドラマチックでネガティブな人材は避けるように」と指示している。
「尖った人材は良いが、分断をもたらす人材は駄目だ」